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音咲うた
2023年12月16日 07:44
春を待つ胸が苦しいのだ僕は失った。それはとても大切な存在を。「愁くんまだー?」僕を呼ぶ彼女の声。その声に手は届かず、ぼくは彼女を探し続ける。またこの夢だ。どこか懐かしいような声。思い出せない。何かを忘れている。2月。スギ花粉が飛び始めて、春がすぐそばまで来ている……ともいかす、辺りはまた雪景色だ。この夢を見る度に、僕は苦しくなる。何かを待っているような、待たせているよ
2023年11月26日 15:05
君を照らすために咲く花さ「ふぅ。」私はそっと本を閉じる。ここは病院。生まれつき体が弱く、入退院を繰り返している。「ひーいーらーぎーーー」元気に私の名前を呼ぶ声がする。……厳密に言うと彼女も患者なので元気ではないけれど。「柊!私も戻ってきたよ。」「戻ってきてどうするのよ。また倒れちゃったの?そんなさけんじゃだめでしょ?」「あっははは……。まあでも柊がいる時でよかったわ。あん
2023年11月25日 15:29
水に映る花を 花を見ていたこれは、まだ暑い夏が来る、その前のお話。「何を見てるんですか?」女の人はそう話しかけてきた。僕は一瞬だけ声の方へ視線を移したが、また湖へと戻す。すると彼女はあろうことか、僕の隣へと腰掛ける。「私はあそこに浮かんでいる花を見てるんです。いつまでも枯れないなと思って。あなたは、よくここに来られてますよね。」内心驚きながらも、僕は答えない。いや、座る場所