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「アインが見た、碧い空」読書感想文

こんにちは!
ウタです。


当記事を読む前に

ウタの読書感想文では
ネタバレを含んでいます。
ネタバレを望まない人は絶対に読まないでください。

本の紹介よりもウタ自身の思考や気持ちの整理
意見収集(コメントくださればw)が目的です。
以上をご理解の上、読んでいただければ幸いです。

「アインが見た、碧い空」の概要

ベトナム人技能実習生のアインを中心に
外国人技能実習制度(以下、技能実習制度)に関わる人々
それぞれの視点から
物語と解説を織り交ぜながら展開される
小説っぽい本です。

技能実習制度において
「真の搾取者は誰か」という問いから
技能実習制度の現実的な問題と
その複雑な事情を
物語形式でとてもわかりやすく学べます。

「真の搾取者は誰か」
それは「私」であり「あなた」である

つまりサービスや商品の消費者という
当著の一つの結論を踏まえると
この本は技能実習制度に関わる人だけでなく
日本人全員への問いかけとして
多くの人に読んでほしいという意図を感じました。

「アインが見た、碧い空」の問題提起

技能実習制度、本来の目的である
「技術や知識の移転」は建前であることは
すでに周知の事実。

技能実習制度の現状は
中小企業の「人手不足の解消」と
新興国の若者の「出稼ぎ」によって
事実上、成り立っている。

一部では奴隷労働のような問題となる現場もあるが
多くは「出稼ぎ」によって
技能実習生は借金の返済と
150〜300万円を貯めることができている。

技能実習制度が
「人手不足」と「出稼ぎ」の関係で
成り立っているのであれば
建前は脇に置いて問題がないと言える

著者の訴える技能実習制度の問題は
「キャリアの搾取」である。

キャリアの搾取とは
主に18〜25歳という一番キャリアを築ける
大事な時期を無駄にしていることだ。

技能実習生は多くのキャリアを経験できる
この貴重な期間に
単純労働のみでキャリアを積めないことを
問題にしている。

日本の消費者(私やあなた)は
新興国の若者の「キャリア」を
「搾取」することで
「質の良い」サービスや商品を「安く」得られるという
矛盾が起きていると問題を提起。
(質が良ければ、高くなるのが普通ですね!)

技能実習制度は「キャリアの搾取」なのか?

ウタの疑問、その1。
技能実習制度は本当に技能実習生の「キャリアの搾取」なのだろうか。

本著の主人公アインは
ベトナム国立大学の日本語学専攻を卒業し
その真面目で勤勉な性格も相まって優秀な学生だと判断できる。

そのような学生が単純労働に従事する技能実習生として
日本に働きにきたことは
彼女のキャリアを形成する上で
たしかにマイナスであったことは疑いの余地はない。

まとまったお金を作ることができた
技能実習生の「成功組」だとしても
アインを技能実習生として日本が受け入れたことは
間違いなく「アインのキャリア」を搾取したと思う。

一方で、チュックの場合はどうか。

チュックはベトナムの農村部で生活しており
親の事情による貧困から
中学校も卒業していないと描かれている。

本著では、チュックを受け入れた企業の
パワハラやモラハラ、給与の未払いなど
問題が多かった。

それに耐えきれず、チュックは企業から逃げ出し
失踪として扱われている。

ではチュックが真面目な企業で受け入れられ
他の技能実習生と同じように
借金の返済とまとまったお金を貯めることができたら?

チュックが技能実習生の「成功組」だったら
チュックにとって「キャリアの搾取」は当てはまるだろうか?

ウタは、チュックの場合なら
「キャリアの搾取」は当てはまらないと思う。

もしチュックが技能実習生として日本に行かなかった場合
つまり、ベトナムの家でそのまま生活をし続けた場合

家庭事情による貧困から
ベトナムでも勉強する機会はなく
またまとまったお金を稼ぐこともできなかっただろう。

チュックの環境に限って言えば
チュックはベトナムにいても満足なキャリアを積めない。

それならば技能実習生として来日し
貴重な時期の時間と引き換えに
まとまったお金を貯めることで
チュックの生活環境を大きく変えるチャンスになる。

技能実習生が本国でそのまま生活を続けても
キャリアを積める環境になければ
技能実習制度が必ずしも「キャリアを搾取」しているとは
言えないだろう。

関係者が心がけることは、例えばアインのように
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を得られるような人を
技能実習生として受け入れることはしないことだ。

技能実習候補生のこれからのキャリアを踏まえて
技能実習の在留資格とミスマッチを起こさないことが
重要だと思う。

したがって、
本国にいてもキャリアを形成する可能性が極めて低い人にとって
技能実習制度「出稼ぎ」は有効な選択肢である
とウタは考える。

「真の搾取者=消費者」から見えなてこない課題

ウタのモヤっと。
本著では技能実習制度の「真の搾取者」は
「私」や「あなた」のような消費者だと
本著では提起されている。

技能実習関係者(送出機関や監理団体、受入企業)が
これを訴えたら、責任逃れと言われそうだ。

本著の指摘通り
技能実習制度の真の搾取者が消費者だと仮定すると
消費者には、品質の良いサービスや商品に安さを求めないようにしよう!
と訴えかけることになる。

しかし、これができないことは容易に想像がつく。
なぜなら日本は資本主義社会だからだ。

資本主義社会とは
自由競争を通じて経済を発展させていこうという社会制度である。

より良いサービスや商品を
より低価格(消費者に求められやすい)で届けるために
自由競争によって経済が発展するという社会だ。

つまり資本主義社会である限り
消費者が質の良いものをより安く求めようとするのは
当たり前のことである。

したがって「真の搾取者=消費者」と結論づけると
本著で提案された問題「キャリアの搾取」について
解決手段を見つけられないことになる。

真の搾取者を消費者と定義するだけでは
問題解決の糸口が見えてこない。
いくつかの事例を参考に
技能実習制度の課題を明確にしてきた本著にしては
最後の答えが曖昧な気がした。

本著は技能実習生に関わる人々だけでなく
社会問題の一つとして多くの人に知ってほしいという意図
(ウタの勝手な解釈)

本著でもよく登場した
社会学は現在進行形の社会問題に
「問い」を発するという学問なので
読者一人一人が考えてほしいという意図

この2点を踏まえて
「真の搾取者=消費者」という
あえて解決策を簡単に提示できないような答えを
本著の中では用意したのではないかと
ウタは愚考している。

この本を読んだ上で
一人一人が自分ごととして
問題解決について考えさせようと感じられる。

強調するが、ウタの勝手な解釈である。

まとめ

本著を一度だけ読み終わっところで
ウタの思考整理や引っかかった部分を取り上げて
記事にまとめてみました。

もしかしたら本著を正確に読みきれていない可能性もあります。
言葉の定義やストーリーなど
把握しきれていないところもあったかもしれません。

また読み返してみたときに
次はどう感じたのか
比較できたら面白いです。

最後に。
「アインが見た、碧い空」は
研究や調査をもとに
技能実習制度のあり方や問題点について
様々な視点から考察しています。

技能実習制度が良い、悪いではなく
今後の日本人がどう向き合っていくのか
考えさせられる良い本でした。

もし本著を読んだ方がいれば
ぜひ感想やご意見をコメントよりお聞かせください!

最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。

おしまい
ウタ


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