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沖縄のサンゴと地球温暖化

お天気愛好会、記念すべき初投稿!
担当させて頂くのは、早稲田大学1年で気象予報士の遠藤です。

さて、サンゴは近年、急激に減少していて危機的な状況です。
何がサンゴを脅かしているのか、沖縄のサンゴを例に見ていきたいと思います。

では突然ですが、
沖縄のサンゴはここ20年でどのくらい減少したと思いますか?

・・・・・・・

答えはなんと 約10分の1です!
すでに沖縄のサンゴは、20年前の約10分の1しか生き残っていないのです。

果たして、何が沖縄のサンゴを減少させているのでしょうか。
実は、原因はたくさんあります。
ビーチやダイビングスポットの過度な観光利用による破壊、乱獲や密猟、米軍基地建設に伴う破壊、生活用水流出による海水の富栄養化、赤土という沖縄の土壌の流出による海洋酸性化、サンゴを食べる生物の大量発生による食害、サンゴの感染症、海洋プラスチック…
残念ながら、その多くは人為的なものです。
そして中でも、比較的影響力の強い要因として、
本記事が注目する地球温暖化が挙げられます。

前置きが長くなりましたが、
ここからは地球温暖化が引き起こす現象のうち、
サンゴ減少の要因となっているものを3つ挙げて、説明していきたいと思います。

① 海洋酸性化

海洋酸性化は、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込むことで、
海水のpHが下がる(酸性に近づく)現象です。

海洋酸性化はサンゴの石灰化を阻害します。
つまり、サンゴの骨格形成や成長を阻害するということです。
実際、2017年東京大学の研究(注)でも、
海水のpHの低下がサンゴの石灰化に不可欠な
石灰化母液のpHも低下させていることが分かっています。

② 海水温上昇

海水温上昇とは、地球温暖化によって増加した大気中の熱エネルギーを
海水が吸収することで、海水温が上がる現象です。
大気中に蓄積された熱エネルギーのうち9割以上が海水に吸収されており、
これによって気温上昇が軽減されている反面、
海面上昇や異常気象など多くの影響や被害の一因となる上、
地球温暖化自体の長期化にもつながっています。

海水温上昇はサンゴの白化の原因となっています。
白化とは、サンゴの体内を住み家としている褐虫藻の70~75%が体内からいなくなり、
サンゴが白く見えることをいいます。
褐虫藻は、光合成で得た養分をサンゴに分けることで、
サンゴと共生しています。
サンゴは高水温や低水温をはじめとした環境ストレスによって白化します。
白化は、季節的変動に対応するための防御策であるため、
白化したサンゴにも回復の余地があります。
しかし白化した状態が1ヶ月も続けば、
体内に蓄えていた非常時のエネルギーが底をつきます。
また、海水温上昇によって生息に適した環境そのものが北上するため、
そもそも沖縄から退散してしまいます。

③ 台風の強大化

海水温上昇によって、
台風へのエネルギー供給が活発になり、台風が強大化します。
台風のエネルギーは、
海面からの水蒸気が雲になるときの潜熱であるため、
海水温が上昇するとエネルギーは増大します。

台風は、かき混ぜ効果や気化熱、湧昇によって、
海水温を下げる働きをします。
つまり、もともとは白化の危機にあるサンゴを守るヒーローでした。
しかし、強大化することによって、
サンゴをはじめとした底生生物を剥離・転倒・破損するという
デメリットが大きくなってしまっているのです。
さらに、大きな台風は通り過ぎるのに時間がかかるため、
サンゴに日光が届かない時間が増えます。
これによって褐虫藻の光合成も邪魔されてしまいます。

以上のように、
地球温暖化はサンゴの減少の一因として影響力を持っています。

私は、「環境問題」「地球温暖化」といった漠然とした言葉ではなく、
現実的な被害や影響を知ること・伝えることが、
一人一人の行動につながると考えています。
またこれを機に、私自身の行動も見つめ直したいと思います。

この記事が、環境を意識した取り組みのきっかけとなり、
美しい沖縄の海の保全につながることを強く願っています。


(注)東京大学大気海洋研究所の窪田薫大学院生(当時、現:海洋研究開発機構高知コア研究所/日本学術振興会特別研究員PD)と横山祐典教授らの研究グループと海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、気象研究所らとの共同研究。「サンゴに迫る海洋酸性化の脅威 骨格中のホウ素同位体の高精度分析によって解明」(2017年)

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