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東大英語解法概論ー宮崎流に基づいてー

ぜんこうです。自分が宮崎先生の授業を受けていた関係で、それに関する質問が多いですから、自分が東大英語の各大問をどのように解いていたかお伝えすることで流派(?)選択の参考になればと思います。ポジハメのもの(太先生)と見比べていただくのが、こちらの想定している使い方です。

注意事項
・宮崎先生の『東大英語総講義』であるとか、東大特進のテキストを適宜参照しながら書きますが、どうしても純粋な宮崎先生の方法論と言うより、「宮崎先生をベースにし、さらに自分で考えてアレンジしたもの」になってしまいますがご了承ください。ここに書いてある解き方を宮崎先生が教えてくれる、というわけでは必ずしもありません。
・判断基準にしてもらうためのものなので、あくまで「さわり」だけです。詳しい内容は東大特進の講義や『東大英語総講義』で確認してください。特徴を伝えつつ、有料部分に侵入することのないよう慎重に書きました。

そもそも

そもそも、宮崎先生はどういう先生なの?ということですが、

まずはこの動画を見ていただければいいと思います。

溢れる教養、渋い声、かっこいいですね。

はい、まあ自分が思う宮崎先生の特徴としては、

①単語のcore meaning
→第4問B、第5問
②英文のstructureへの着目
→第4問AB
③段落のstructureへの着目
→第1問AB、第3問
④英語らしい発想
→第2問、第5問

です。

①と④については上の動画を見ていただければだいたいわかると思いますので、②と③を説明します。

「英文のstructure」といえばwritingで言えば構文。readingで言えば、並列構造・修飾などを見抜く英文解釈もこれにあたります。なお、基本的な文法知識は知っている上で講義されます。センター第2問がろくに取れないようなら、『東大英語総講義』第1章なりネクステなりで入れてから講義に参加してください。

「段落のstructure」は、「主張と具体例」「原因と影響」など宮崎先生は主に5つを挙げていますが、段落はそのような「論述の型」のいずれかをとって展開するとし、その前提で第1問など段落問題の解説が進みます。長い自由英作文を書くときも、その考えは応用できます。

段落のstructureは、大学に入って英語で論文を書く授業をやるときに(東大にはALESS、ALESAというものがありますが)基本となる考え方です。
少し話はずれますが、英語中級という授業の先生は、「学生には、英語で論文を書き、読めるくらいの能力を持って入ってきて欲しい」とおっしゃっていました。大学教育についていくためにはreading,writingも依然として重要です。これは大学教育が旧態依然とかそう言う意味ではなく、英語で論文を書けたり読めたりしないと肝心なことが何もできないからです。もちろんプレゼンでspeakingの機会もあるし、随所でlisteningの機会もありますが、まずはreading,writingの技能が重要です。

まず、先生は英文解釈はしない「完全感覚派」と一部で言われていますが、それは誤解です。テキストを見ると文章満遍なく赤ペンや蛍光ペンがありました。

しかし、それは「その文章を読めなかった人が読めるようになる」というようなものではなく、「読めている前提で、イディオムの解説をする、段落の構造をつかむ、キーセンテンスに着目する」というようなものです。太先生のように、M1,M2みたいな記号を使って一語一語やっていくようなものではありません。

また、宮崎先生は、「早く内容を読もうとする意識」とか「文章の終盤に差し掛かったときでも、前半の内容は覚えておいてください」とかおっしゃるので、一語一語を丁寧に分析する、という授業とは考え方が違います。ちゃんと読むことは読みますが、パッと内容を捉えて次に進む、段落内の読み方に緩急をつけると言った感じです。

つまり、文章の構造を見抜き、どういう「論述の型」をとって展開していくかが主で、「英語らしい英語」の部分、単語の言い換えの部分など説明が必要な部分は補足する、と言った形です。

→おそらくこの辺りが、「感覚派」と呼ばれるゆえんです。個人的には修飾の名前なんてどうでもよかったので、文章の構造(一語一語では必ずしもない)を取って段落につなげる、宮崎先生の考え方は合いました。

しかし並列構造の指摘、省略の指摘はみっちりやります。これも、「型」に深く関わるものであるためでしょう。

つまり、全体的に方法論ではない。論述のカタ、文のカタ、知識を使ってカンを磨くetc...英語という言語の学習者として大事なことを伝え、それができるようになれば東大の問題も解けるようになる、という感じです。ガチガチの方法論ではないゆえ遊びがあるので、過去問や類題をやりこんでいくと、ある時に、いろいろとリンクして「あ、そういうことか!」となるのが宮崎先生の授業です。こうなれば、東大英語が求めている力がスッと見えるようになり、得点も飛躍的に伸びるでしょう。(これが下の「東大実戦②」にあたります。ここから何かに気づき始めました。)

基本データ

東大同日64点
東大本レ①61点
東大実戦①58点
東大本レ②52点
東大本レ③65点
オープン②61点
東大実戦②73点
東大プレ②83点
東大本レ④90点
開示得点84点

※高3 9月が宮崎先生の受講開始時期です。東大本レ②〜③の間。
※第1問B、第3問、第4問A、第5問など、一部又は全部が解答が一意に決まる問題の場合、本番の正解率を載せています。

第1問A

これに関しては、自分は「1 paragraph, 1 idea」という原則を大事にして、各段落のideaを素早く掴み、段落間の関係に留意しながらまとめる、という作業をやっていました。2,3段落なので、ちょうどいい感じです。

正直こんなもの、ちゃんと読んで、過不足なく要約しようと思ったらいくらでも時間が消えます。ちゃっとideaを掴んで、書く。10分くらいで十分です。

なお、英文の要旨を日本語にする方法論については、あまり聞いた覚えはありません。まあ、先生の「論述の型」を応用すれば書くことはだいたい一意に決まるのでそれはあってもなくても大丈夫だと思ってます。

第1問B

正解率:2問/6問
適語補充問題不正解

これも段落のstructureの考え方をもとにします。段落の構造を取れば、欠落しているはずのところがどこかわかる、という考えです。

しかし1Bは時間制約が厳しいこともありそこまで段落を意識して読むことができず、正直自分は最後までよくわからない大問でしたね...苦手でした。本番大失敗です。

第2問

宮崎先生は、writingを教わるには素晴らしい先生です。『宮崎の今から書ける英作文』という本を出されていますし、「英語的発想」「カタ」という宮崎先生の考えと親和性が高いです(尤も、英作文と宮崎先生の考えの親和性が高いと言うよりも、そもそも宮崎先生の考えが英語を読むにも書くにも使えるものだということでもありますが)。

単語レベルで訳すのではなく、ideaを介在させて訳すようにとおっしゃいます。例えば"good morning!"を「いい朝!」と訳す人もいないでしょう。

"good morning!"→朝の挨拶→「おはようございます」

ですね。(これと同じ内容がセンター国語大問1に出てきてぶったまげましたが。)これと同じことです。和文英訳も自由英作文も同じです。採点者に「英語うまい。」と思わせる英語を書くための話をしてくださいます。

少し長い自由英作文では、先述した「論述のカタ」を使う側に回ることも大事。『東大英語総講義』では、英作文のカタ別に英文を載せ、覚えるように促します。自分はよく「例文暗記は覚えるのではなく、構文理解」と言いますが、それは誤解を生まないための強めの言い切りで、実際にはいい英語を暗記することも必要です。

第3問

正解率:12問/15問

第3問は「リスニング」というだけかもしれませんが、段落の問題です。

東大のリスニングは段落(話の流れ)を掴む力を見ています。ですから、設問も段落の流れに沿って設置されています。それゆえに、問題文を見れば大体の流れ(主張→反対意見→エビデンス→主張のように)がわかるということです。こういうことで、自分は下読みに時間をかけました(だいたい10分)

下読みで具体的に何をするかと言うと↓

画像1

これは実際の入試問題です。書き込みは全て、試験時間中に行ったものです。

問題文の左を見ると、「⑴批判→⑵意見→⑶反論→⑷⑸DeBoerの意見」と書いてありますが、これは下読みの時間に書いたものです。問題文を見れば、誰が誰に対して反対意見を述べているのか、などがわかるので、下読み時間にこのようなものを書くことができ、大まかな流れの推定ができます。すると、流れてくる英文をただ聞くわけではなく、段落で区切って聞くことができるのです。

これをやってから自分は点数が上がりました。

しかし特殊なやり方なので、まあ、慎重に。

第4問A

正解率:5問/5問

本番は全問正解しましたが、これは強運でしたね。10分以上かけないようなペースで読んでいって、気持ち悪いところにマークしていったらそれが全部あっていたという感じです。

強運とは言ったものの、やはり先述したような構造をとる徹底的な訓練の積み重ねにより感覚が研ぎ澄まされていたのだと思います。第4問Aに時間はかけられないので、「ここ、気持ち悪いからここが正解だろう」というくらいでないと実力で高得点は取れず、そのためには宮崎先生の考えに触れたのは大正解だったと思います。

宮崎先生が(おそらく宮崎先生だったと思うのですが)「積み重ねのある人の『勘』は、無い人のそれより当たりやすい」とおっしゃっていました。なるほどこういうことか、と思った一件でしたね。

第4問B

やはり宮崎先生は翻訳の仕事もされている先生なので、これに関してはかなり多くのテクニック(というと語弊がありますので「自然な日本語に訳すための技術」とでもしておきますか)を教えていただきました。

第5問

記号部分正解率:6問/8問
並べ替え問題正解

宮崎先生の強みが如実に出る大問だと思います。第5問は「英語らしい英語」「英語的なものの見方」の問題だと自分は思っていて、「論理的な英文解釈」onlyだとどうしても限界があると考えています。

場面展開に気を付けろ!とか、発話者に注目しろ!とかは多くの先生が言っているわけですが、英語特有の言い回し、物の見方が問われる設問・比喩的な言い回し/逆説的な言い回しが問われる設問についてはどうしても方法論にするには限界があります。あと一歩届きません。ここが、「第5問はよくわからない」「第5問は帰国子女のための問題」という考えにつながっているのだと思います。

こういう設問を自分のような日本語母語話者が解くためには、畢竟、「カンを磨く」という作業しかないと思います。「どうしてこの単語からこの訳が来るのか?」ではなく、「この部分はこういう発想から来ている表現だ」といった感じです。東大特進の授業と、大量につけてくださっている補充問題でエッセイ風の文章に触れたことで、そうした「カン」が磨かれたのだと思います。東大本番レベル模試第5問の点数もどんどん伸びていった覚えもあります(時間が楽になったからだと言うのもありますが)。

最後に少々のまとめ

さて、東大英語の解法についていろいろ書いてきましたが、宮崎先生の「感覚派」と呼ばれる手法は、(少なくとも自分にとっては)東大英語を解く上で役立つものであるということがだいたい分かったかと思います。時間制約の面、問題形式の面で東大英語にちゃんと対応する(時間内で、全部解けるようになる)ためには、「即座の構造把握」「英語らしい英語・カンを磨く」ことの両方が必要です。ガチガチの構文解釈ルートで進むにはどうしても限界があります(特に5)。

しかし全部解けないと合格点は取れないと言うわけではありません。第5問が苦手だったら、そこに時間をかけるよりも取れる問題に時間を割いて手堅く取る方がよいでしょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。英語の読み方・解き方については、様々な考え方があり人により向き不向きがあるようです。実際受けてみるなり、このようなレビューを見るなり、色々情報を集めて決めてもらえるといいと思います。


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