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【CAST@NET vol. 008】暑さに負けない!ものを冷やすしくみ

こんにちは!
私たち東大CASTは、「科学の面白さを、多くの人に伝えたい。」をモットーに、実験教室やサイエンスショーなどのイベントを実施している東京大学の学生サークルです。
こちら科学コラムでは身の回りの不思議から数学まで、科学にまつわる幅広いテーマを楽しんでいただけるよう、様々な記事を投稿しています。
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今回のテーマは、「ものを冷やす仕組み」です。


 8月といえばやはり夏休み・お盆休みの季節ですね。海水浴や夏祭り、花火大会など、楽しいイベントが目白押しです。その一方で、8月は一年で最も暑さの厳しい月でもあります。消防庁のデータによると、昨年8月には熱中症によって3万人以上の方が救急搬送されたそうです。エアコンや扇風機などを活用して、熱中症に気をつけてお過ごしください。

ものを冷やすには…?

 ところで、身の回りには、エアコンや冷蔵庫など、様々な「冷やす」道具がありますが、これらの道具がものを冷やす仕組みについて考えたことはあるでしょうか? 実は科学の視点から見てみると、これらの道具には共通して「気化熱」が関係しています。

気化熱とは

気化熱のようす

液体の物質は、物質を構成する粒が互いに近くで動き回っていて、比較的おとなしい状態にありますが、一方、気体の物質は、粒が四方八方に激しく飛び回っています。この「おとなしい」から「激しい」への状態の変化には、大きなエネルギーを必要とします。そのエネルギーをまかなうために、周囲からは熱が奪われます。これを、気化熱と言います。

 つまり、気化熱とは、「物質が気体に変化するときに、周囲から奪われる熱」であると言えます。それでは、身の回りで、どのように気化熱が使われているのか、具体例を見てみましょう。

エアコン・冷蔵庫の場合

エアコンや冷蔵庫は、冷媒と呼ばれる、とても気体になりやすい物質を使って、部屋や食べ物を冷やしています。気化熱によってものを冷やして気体になった冷媒は、圧縮することで無理やり液体に戻し、再利用します。この気体から液体への変化の際には、気化熱とは逆に周囲に熱が放出されますが、その熱は室外機などから放出されます。夏場に室外機から熱風が噴き出ていたり、冷蔵庫の外壁を触ると温かかったりするのは、この放出される熱のためです。

冷却スプレー

 肉離れなどの応急処置には、とにかく患部を冷やすことが重要です。スポーツの試合中に、選手が足などにスプレーをかけて、冷やすことがありますが、この冷却スプレーにも、気化熱が使われています。スプレー缶の中には気体になりやすい液体が詰まっており、缶から飛び出した瞬間、すぐに気体に変化するため、気化熱で患部を急速に冷やすことができます。

 気化熱を利用しているのは道具だけではありません。夏になれば誰もがかく汗も、私たちの体に備わる、気化熱を利用する仕組みです。体温が上がると汗が分泌され、その汗が皮膚の表面で液体から気体へと変化することで、気化熱によって体を冷やしています。
 実は、私たち人間のように大量にかつ全身から汗をかく生き物は、人間の他には馬など少数のみで、その他の生物は犬や猫など汗をかく部位が限られていたり、あるいは汗を全くかかないものも少なくありません。

まとめ

 ここまで、様々な場面で、気化熱がものを冷やしている、というのを見てきましたが、身の回り、特に夏場には、他にも「冷やす」道具があちこちで見られます。まだまだ厳しい暑さが続きますが、そんな中で「あれも気化熱かも…」「それとも何か他の工夫が…?」など、周囲の「冷やす」仕組みに思いを馳せてみると、猛暑も楽しく乗り切れるのではないでしょうか。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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