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【CAST@NET vol. 006】ポン菓子の美味しさを支える科学

こんにちは!
私たち東大CASTは、「科学の面白さを、多くの人に伝えたい。」をモットーに、実験教室やサイエンスショーなどのイベントを実施している東京大学の学生サークルです。
この科学コラムでは身の回りの不思議から数学まで、科学にまつわる幅広いテーマを楽しんでもらえるように書いています。
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今回のテーマは、「ポン菓子の科学」です。


4月といえば…

さて、4月といえば年度の始まり、学校や職場など、新生活を始める方も多いのではないでしょうか。慣れない環境で新たなことに挑戦する、「新米」の方々にちなんで、お米を使ったお菓子である「ポン菓子」にまつわる科学についてお話ししたいと思います。

新生活の始まり。期待と不安が半々です

ポン菓子はどうやって作られる?

そもそもポン菓子とは?

 駄菓子屋さんが年々減っている昨今、ポン菓子と聞いてピンとこない方もいるかと思います。まずはポン菓子自体の説明から始めましょう。
 ポン菓子は、専用の釜に米と水、砂糖などを入れて加熱し、膨らませて作る甘くてサクサクしたお菓子です。密閉した釜を解放する際に出る「ポン」という大きな音が、名前の由来になっています。言葉にするとシンプルですが、一体釜の中ではどんな現象が起こっているのでしょうか?

ポン菓子。にんじん型の袋に入ったものをよく見かけます

水の沸点は100℃とは限らない? ~沸点上昇~

 釜の中での現象を説明するには、まず圧力と沸点の関係についての知識が必要となります。一般に、液体の周囲の圧力が大きいと、その液体の沸点は高く(=沸騰しにくく)なります。液体の粒子が、押さえつけられて空気中に出ていけない、と考えると想像しやすいかと思います。このように、圧力が高いと沸騰しにくくなる現象を沸点上昇と呼びます。
 水の沸点は100℃と小学校では教わりますが、山の頂上のように空気が薄く圧力が低い場所では100℃よりも低い温度で沸騰しますし、圧力鍋を使って高い圧力で調理する場合は100℃でも沸騰しません。

米粒を膨らませるのは水の力!

 さて、ポン菓子の場合を見てみましょう。釜に材料を入れて加熱すると、釜の中が水蒸気で満たされて、内部の圧力が上昇していき、最終的にはなんと大気圧の10倍まで高まります。この高い圧力によって沸点上昇が起こり、米に含まれる水分は沸点である100℃を超えても液体のままになります。いつでも沸騰できる温度なのに無理やり米粒の中に押し込められているわけですね。

 この状態で蓋を開けると、容器に詰まっていた水蒸気が逃げ、圧力が下がることで、米粒の中に押し込められていた水分が一気に外に飛び出そうとします。その結果、飛び出す水分が米粒を押し広げて膨らませ、その過程で米粒内部に空洞ができます。そして、表面の水分が飛んだ、空洞のある構造が、あのサクサクの食感を生むのです。

水の力が米粒を膨らませます

ちなみに…

 この「高い圧力をかけて加熱し、一気に開放して膨らませる」という調理法は、ポン菓子特有のものではありません。例えば、麦チョコやポップコーンも同じ方法で作られています。ポップコーンの場合は硬い皮が釜の代わりをしているので、密閉の必要がなく、フライパンなどを使って家庭でも作ることができるのです。

まとめ

 今回は、ポン菓子の美味しいサクサク食感を陰で支える科学についてのお話でした。
 お菓子に限らず、「どうしてこんな味・食感なんだろう?」「どうしてこんな形をしているんだろう?」など、身の回りの食べ物に興味を持っていただければ幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました。
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