碓氷早矢手 ∣ おもしろくてためになる本の話

本の話が好きです。出版社の中の人ですが、どの社の本でも気にせず推します。 過去、総合格…

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本の話が好きです。出版社の中の人ですが、どの社の本でも気にせず推します。 過去、総合格闘技に選手として取り組んでいました。 いまは、仕事が総合格闘技です。 Twitterはたまに反応します。 @usuihayate

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  • おもしろくてためになる本の話

    記憶力がおよそありません。 だけれども、本に書いてあったことはわりと覚えています。 なぜかと考えると、読んだ後、まとめを書くことが多いから。

最近の記事

#ビリギャルがまたビリになった日

ビリ(最下位)という概念のない国での話。 人と比べる習慣がなければ、ビリは生まれない。 ビリになりたい人はいない。 でも、ビリはない方がよいかというと、必ずしもそうでもない。 ビリから這い上がるところにドラマがあるし、感動もできる。 1位もビリもない社会が幸せなのかはわからない。 『ビリギャル』は累計120万部売れたそうだ。 原題は長い→『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』。 2015年に公開された『映画 ビリギャル』(有村架純さん主演)

    • 『宇宙戦争』H.G.ウェルズ

      火星、東洋では「燃える火の星」、西洋ではギリシャ神話から「戦いの神・マルス」と呼ばれる、この惑星は古来から観察の対象として、物語の舞台として、人類の興味をひきつけて離さない星だった。 人類にとって、地球、月、太陽に次いで親しみのある星、火星。どこのどんな宇宙人よりも有名な火星人。 なぜ、火星人なのだろうか? 水星や木星、金星、土星ではなく、なぜ火星なのか? 当然、浮かぶであろう疑問を解くためには、火星と地球人類の歴史的関係を概観すればいい。文献に残っているはるか以前から

      • 『鉄球(ハンマー)は教えてくれた』室伏重信著

        オリンピック元日本代表、元日本記録保持者。 室伏重信氏の日本記録を破ったのは、息子である室伏広治氏。 幼い頃は、相撲に強くあこがれ、柔道に弱くあこがれていたそう。 瞬発的な力は小さい頃から強く、長距離はからきしダメだった。 「鉄球(ハンマー)は私の青春そのものである」という室伏重信氏は、コーチとして、息子である室伏広治氏をただただ見て、アドバイスはほとんどしなかったといいます。 ところが、この本では、幼児期からの感覚の磨き方、スランプの乗り越え方、トレーニング方法につい

        • 『すごい左利き』加藤俊徳著

          本が見つからず、写真なし。 15万部を超えて売れているという。 マイドオタも左利き。 左利きに限定しないことも書かれている。 たとえば、直感の精度を上げる行動は、「言葉以外の情報」を意識して増やすことだという。 植物に水をやるとき、土の渇き具合やひとつひとつの葉っぱの色や形に目を配る。 きれいなもの、かわいいものを見たり集めてみる。 歩きながら、色のついたものを見つけてみる。 ペットや動物をじっと見つめてみる。 そうしたことが、直感の精度を上げると。 きれいに言語化しに

        #ビリギャルがまたビリになった日

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        • おもしろくてためになる本の話
          15本

        記事

          『性差事変』小谷真理著

          たしかなことのひとつめは、この本を読み解く文学的教養が、自分には不足していること。 それなのに、おもしろく読ませてしまう不思議。 たしかなことのふたつめは、貴志祐介著『新世界より』を読み返そうと思ったこと。

          『古くてあたらしい仕事』島田潤一郎著

          「人生でもっとも必要なことは、人から必要とされることだ。」 元ロッテ監督、ボビー・バレンタイン氏の言葉が印象に残っているという著者。 この「人生」を「仕事」に置き換えて、20代の頃に読んでいたといいます。 書店の数が減る中で、新しい書店も生まれている。 出版社もまた。 「ひとり出版社」の夏葉社からはまたこの4月に新刊が出ました。

          『古くてあたらしい仕事』島田潤一郎著

          「秘祭」石原慎太郎著

          離島における「祭り」について。 初出は、1983年の「新潮」。 月刊総合誌や文芸誌がなくなってしまったら、こうした作品は読めなくなるのでしょう。 この本は、本読みの女性が、薦めてくれたもの。 なぜ、わたしに薦めた?

          『物価とは何か』渡辺努著

          「物価は蚊柱である」 これが、物価とは何かに対する答えと明快。 個別の商品価格は、一匹の蚊。 上がるものも下がるものもあり、速いものも遅いものもある。 これらが群れとなっているのが、蚊柱。 一匹の蚊の動きを完璧に理解したとしても、蚊柱を理解することにはならない。 蚊柱を群れとして理解したとしても、一匹の蚊の動きを予測することはできない。 この蚊柱の比喩を用いたのは、岩井克人著『ヴェニスの商品の資本論』とのこと。 名著という記憶はあるものの、中身を覚えていないので、また再

          『限りなく完璧に近い人々』マイケル・ブース著

          よきイメージで語られる北欧を、章ごとに国別に、英国人が語った一冊。 北欧諸国にも、当然、様々な課題も欠点もあるのは、世界の国々と変わりない。 雨が多くて、退屈で平坦で、税金の高い国々。 そうした場所がなぜ、「幸福」と語られるのか。 著者の主張は、「あとがき」にまとまっている。 「最高の幸福度と、教育において最高レベルの機会均等を実現しているということは、偶然でもなんでもない。 持続可能な本物の幸福を実現するためには、なによりもまず、自分の人生の主導権を握る必要がある。」

          『限りなく完璧に近い人々』マイケル・ブース著

          『テクノロジー思考』蛯原健著

          おもしろいビジネス書と、そうでないビジネス書がどう違うか。 流行が書いてあるだけの本は、サッと読んでおしまい。 書いてある「情報」をさらいたいだけなので、愛着は湧かない。 考え方や、思考そのものがあふれ出しているものは、読み返す。 読んでいるうちに、著者の考え方が身につくようで、自身の変化を感じさせてもらう。 前者は、著者のインタビューをもとに、誰か別の人が書いてもかまわないもの。 後者は、思考を言語化するためのプロセスを経ていて、著者自身でなければ書けないもの。 『テク

          『キラッキラの君になるために』小林さやか著

          「ビリギャル」で知られる、小林さやかさんがニューヨークへと飛び立った。 コロンビア大学教育大学院へ進学するために。 『ビリギャル』の本と映画で泣いた私としては、勝手に感慨深い。 「ビリギャルは、奇跡の話なんかじゃない」と、ご本人はいろんなところで語っています。 「もともと頭がよかったんでしょ」とよく言われるそう。 でも、そんなことはないと。 「人生は、自分次第で変えられる」 これが小林さやかさんの本から感じるメッセージ。 大学院卒業後、どんな姿を見せてくれるか。 ビリギ

          『キラッキラの君になるために』小林さやか著

          『コンテンツ・ボーダーレス』カン・ハンナ 著

          「最も韓国らしいものが最も世界的なものになる」 とは、韓国人なら誰もが知る有名な言葉だといいます。 「最も個人的なことは最もクリエイティブなことだ」 は、「パラサイト」のポン・ジュノ監督がアカデミーション受賞のスピーチで引用したマーティン・スコセッシ監督の言葉。 感動することって、個人的なことや、地域ならではのものですよね。 でも、実はそれこそが「ボーダレス」なのだという矛盾を抱えている。 矛盾を抱えているものの方が、おもしろいとか、心に引っかかる。 だいたい世の中、

          『コンテンツ・ボーダーレス』カン・ハンナ 著

          『「その日暮らし」の人類学』小川さやか著

          Living for Todayーその日その日を生きるー人々とそこに在る社会の仕組みを論じることを通じて、わたしたちの生き方と、わたしたちが在る社会を再考することを目的としたという本書。 「タンザニアのトングウェ人は、集落の住民が食べられるだけの食糧しか生産しないにもかかわらず、集落を訪れる客人をもてなすために、生産した食糧の40%近くも分け与えている。 この客の接待に要した食物量は、自分たちもほかの集落に旅に出かけ、もてなしを受けるため、通常は帳消しになる」 ミリオンセ

          『「その日暮らし」の人類学』小川さやか著

          『視点という教養』深井龍之介、野村高文著 

          『視点という教養』深井龍之介、野村高文著 

          『山手線で心肺停止』

          心肺停止する瞬間を鮮明にイメージできるという人は少ない。 そもそも想像したくないシチュエーションだし、自分の心肺が停止していれば、対応のしようもなさそうです。 それでも、心肺停止という危機を乗り越えて生きている人がいます。 周囲の人が助けたわけですね。 身の周りの人に、心肺停止という危機が訪れた時にどう対応すればよいか、わかる人は少ないでしょう。 私もわかりませんし、自信はありません。 自分ごとになかなかなりにくい話かもしれません。 それでも、心肺停止という、著者本人のエ

          『「感情」から書く脚本術』カール・イグレシアス著

          訳者あとがきによると、毎年5万本の脚本が全米脚本家協会に登録されるそうだ。 「UCLA課外脚本執筆講座」のようなものが成立する背景がよくわかる。 「観客のことを考えながら書くのではなく、脚本を読む人のことを考えて書かなければならない」というアドバイスが出てくる。 スクリーンに映し出される作品は、総勢200人にのぼる職人の共同作業の結果なのだ。 職人を動かすものが、最初の原稿だ。 職人の感情が動かせなければ、観客まで届かない。 「プロが書いたかどうかは、最初のページでいきな

          『「感情」から書く脚本術』カール・イグレシアス著