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わかる!野生動物のレース(Wild Animal Racing)対戦解説

▮はじめに


 野生動物のレース(Wild Animal Racing)(以下、本作)は、Steamにて販売されているレースゲームです(ストアページ
 本作の発売は、2016年。今日までに、その独創的な内容に魅せられたファン・コミュニティが形成され、娯楽として、あるいは競技として、もしくはコミュニケーションツールとして、あらゆる観点から楽しまれてきた作品です。
 "野生動物学会(Wild Animal Association)"とは、そうしたコミュニティの枝葉末節にいつしか現れるようになった、本作の攻略法について研究し、議論し、そして何よりも楽しむことを主体とした活動です。主な活動の場は、インターネットのライブストリームとSNSです。誰ともなく立ち上がった"学会員"は、みなさん実に研究熱心で、日夜を問わず様々な技術が生み出され続けてきました。
 結果的に、それらの活動によって得られた技術は、主にSpeedrunのタイム短縮に生かされました。Speedrun.comの当該ページには、最近に至るまで、熾烈な研究と激闘とがあったことを示す更新履歴が、まるで野生動物たちが縄張りを争った跡の、誇り高き残滓のように並んでいます。

 今回私がこの学会報を発刊するに至ったのは、先に触れた、界隈のメインストリームであるSpeedrunのそれと比較して、対人戦の攻略情報が、誰しもが、いつでも確認できる媒体に存在しないことを感じたためです。実際の所、Speedrunと対人戦とでは、必要とされるテクニックに、重複する面と、そうでない面とがあります。
 上記の通り、本作は競技であると同時に、娯楽であり、コミュニケーションの媒体でもあります。そうした特性が最も顕著に表れるのが対人戦です。生の、人と人との、血の通ったレース。その中には何十時間プレイしても飽きることのない、人と人ゆえの悲喜こもごもがあります。しかし我々は研究を進める中で、競技としての本作を掘り進めるあまり、娯楽として、あるいは人と人とがゲームで繋がる懸け橋としての本作について、新規参入のハードルを上げすぎてしまったきらいがあります。
 本学会報は、そうした観点から、本作の対人戦に関して、本作を初めて遊んだ方が対戦で勝てるようになるテクニックをまとめたものです。構成として、基本的には重要で活用のしやすいテクニックから順番に記載するよう心掛けました。「手っ取り早く勝ちたい!」という方は、上から順番に、一つひとつ習得していきましょう。もちろん、下の方に記載した事項も全て重要な情報なので、余裕があれば目を通してみてくださいね。
 なおこれらは、一度に全て読む必要はありません。全てを一気に身に着けるのは大変なので、例えば上から一日一項目だけ読んだり、あるいは覚えやすいと感じたところから読むなどして、実践して頂いても構いません。上手くなる道筋というのは十人十色だと思います。みなさんそれぞれのペースや方法で、上達すればいいのです。


▮もくじ


I.スピン(被弾した時)の対策をしよう
 ①順位を落とす最大の要因
 ②ギアチェンジを身に着けよう
 ③進行方向を全力で把握しよう
 ④攻撃を避けよう
II.アイテムの"いい使い方"を知ろう
 ①アイテムの基本を知ろう
 ②バナナのいい置き方を知ろう
 ③ロケットのいい飛ばし方を知ろう
 ④その他のアイテムのいい使い方も知ろう

III.スコアを意識しよう
 ①スコアを稼ごう
 ②ダイヤを大事にしよう
IV.コースごとの特性を知ろう
 ①早くゴールする走り方
 ②各コースの走り方
 ③対人戦で練習すべきステージは?
V.野生動物界の物理法則を知ろう
 ①鍔迫り合いの美学
 ②車体が斜めに!?
 ③倍ジャンプって何?

VI.その他
 ①対戦相手がいない!
 ②どの動物を選ぶべき?
 ③ホストとゲスト
 ④キーボード?コントローラ?


▮Ⅰ.スピン(被弾した時)の練習をしよう


①順位を落とす最大の要因
「被弾時に泥沼にはまってしまうこと」

 勝つためには、どうするのが手っ取り早いのでしょうか。色々とありますが、大雑把に言ってしまえば、安定して上位入賞することです。では、安定して上位入賞する為にはどうすればいいのでしょう。簡単ですね。順位を落とさないことです。本作における総合順位は、三回戦の総合得点で決定されます。各レースで平均して高い順位をキープし、5位や6位といった事故的な順位につかないようにできれば、自然と総合成績も上がってくるわけですね。
 本作には運の側面が大きくあり、上手い人でも毎回1位とはいかないのが面白い所です。しかし上手い人というのは、それでもいつも大体、上位3位以内には入っているものです。これは、そうでない人と比較して何が違うのでしょうか。
 順位が落ちる最大の要因は、バナナやロケットなどに被弾し、スピンしてしまうことです。逆を言えば、アイテムの被弾に関して対策を取ることができれば、順位は劇的に上がります。本作を少しでもプレイしたことがある方ならお分かりかと思いますが、一度バナナを踏むと画面が回転し、わけのわからないまま連続でバナナを踏み、ついにはいつの間にか逆走状態。あんなに調子が良かったのに、あっという間に6位転落……ということが、非常に高い頻度で発生します。
 本作の上級者は、まずあまり被弾しません。これは、最初は難しいですね。しかしそれよりすごいのが、もし被弾しても一瞬で体制を立て直し、再び上位集団に乗り込んでくることです。同じスピンをしているはずなのに、いったいどういった心がけで、そんな芸当を可能にしているのでしょうか。それは、

a.ギアチェンジを巧みに使い、
b.進行方向の把握力を鍛錬しているため

です。

②ギアチェンジを身に着けよう
「バナナを踏んだらギアをバックに入れる」

 みなさんには、本作にてバナナを連続で踏みつけてしまい、あっけにとられた経験があるはずです。ついでにその時の順位も、後続の野生動物に取られてしまったことでしょう。この現象は一瞬で、しかも連続的に発生するものなので、初めて遭遇した方々は不可避のものであると思い込んでしまうかもしれません。しかし、ちゃんと対策する方法があるのです。これを知っているのとそうでないのとでは、順位の安定性がまったく違ってきます。
 なぜ、バナナを連続で踏みつけてしまうのでしょうか。これは、スピンしている最中、微妙に車体が前進してしまうためです。バナナというアイテムはその性質上、大抵の場合コースに沿う形で等間隔に置かれているものなので、その微妙な前進運動で、次のバナナにたどり着いてしまうのです。
 対策は簡単です。スピンしている最中、ギアをバックに入れましょう。WASD操作ならSキー、コントローラ操作なら右スティックの下です。スピンが終わったくらいでW、もしくは右スティックの上を押すことで、再び前進モードになります。こうすることで、スピンしながらもその場にとどまり続けることができるため、次のバナナを踏む事案が、ぐっと減少するはずです。これは、バナナがばら撒かれている地帯で、ハンマーやロケットに被弾した際にも有効なテクニックです。
 本作のギアチェンジのシステムは、あらゆるレースゲームと比較しても、かなり特殊な操作性なので、最初のうちはうまくできないかもしれません。しかし上記したスピン対策のほか、壁に突っ込んでしまった時、厄介な地形に足を取られてしまった時など、とっさにバックギアが入るか入らないかの差が重要な場面は多々あります。だからこそ、このテクニックを、この位置に記載しました。本作特有のクセだからこそ、真っ先に身に着けてしまえば、他のプレイヤーと差を付けられるのです。

③進行方向を全力で把握しよう
「スピンした後に最速で前を向けるようにする」

 どんなに練習を積んでも、避けられない連続被弾というものがあります。それは単純な操作ミスの場合もありますが、バナナの配置が悪質だったり、後続からのロケット連打だったりと、どうしようもないことも多いです。野生動物の世界は厳しいのです。
 しかし上手い人をつぶさに観察していると、さきほど連続で被弾しているのをみかけ、しめしめと抜いて差をつけたというのに、ほんの一周くらいすると、けろっとした顔をしてすぐ後ろを走っていたりします。もし自分が同じ被弾をしたら、そのレースは6位か、よくても4位くらいになるのは確実だというのに……。
 このカラクリは、連続でスピンしながらも進行方向を確認し、スピン終了後にどの方向に射出されるかというのを、冷静に考える思考であり、あるいは、画面を注視し、どちらが進行方向かというのを必死で見失わないようにする観察です。多くの場合、一度の被弾によるスピンなら、そのあとの進行方向は、もともと向いていた方向からそうずれません。しかし二度、三度と連続で被弾してしまうと、スピンの後にまるで出鱈目な方向を向いてしまいます。こうなった際に如何に素早く立て直すかというのは、連続スピン中の思考と観察にかかっています。
 連続スピンが終わった際、そのコースの順路に対して、自分がどちらを向いているのか一瞬で判断できるようにしましょう。そのうえでハンドリング、バックギアなどを最大限、最速で活用し、できる限り早急に順路に復帰するのです。ゴールが近い場合や、そのコースのライン把握に自信があるのならば、バック走のままゴールへ向かうことも選択肢に入るでしょう。
 もちろん、全て実現するには、かなりの慣れが必要になります。かく言う私もこれは苦手な分野です。とくに操作面は練習あるのみです。しかし、進行方向を把握することについては、集中力をもって画面を注視すれば、初心者のみなさんでも、ある程度は判るのではないでしょうか。みなさんが次回、バナナを連続で踏みつけてしまった時、ここで読んだことを思い出してみてくださいね。

④攻撃を避けよう
「相手のアイテムごとに、できる対策がある」

 バナナが道をふさぐように配置されている!突然後ろからロケットが飛んできた!すぐ前の相手がスパイクを取得した、もう避けられない!……不可抗力だと思っていませんか?もちろん、どうしようもない場合もあるのは先に述べた通りです。しかしみなさんは、かならずしもその限りでないということも、これまでの文中から察し始めているのではないのでしょうか。絶対というのは、絶対にあり得ません。
 結論を言えば、アイテムの特性を知ってさえいれば、それぞれできる対策があります。被弾を完全に防ぐことはできずとも、確率を下げることはできます。アイテムごとの対策を、一つひとつ見ていきましょう。

a.バナナ
 ある意味で、本作を象徴するアイテムです。取得後一定時間、アイテムボタンを押した数だけ後方に、接触するとスピンするバナナを設置することができます。ジャンプ中に置けば空中に設置できます。複数個置けてしまうため、上手い人のいる部屋で走ると、道を塞ぐようなラインで設置されていることが多くあり、これは初心者のみなさんからすると、避けようがないと思われてしまうかもしれません。

 バナナは、ジャンプで避けることが可能です。ただ、たいていの場合、真っ直ぐに列を組むようにして配置されているので、その列に対して交差するように、やや角度を付けて、タイミングよくジャンプしましょう。このとき、無理なハンドリングにならない範囲でということが前提ですが、バナナの真上を飛ぼうとせずに、バナナとバナナの隙間を抜けるようなイメージでジャンプすると、成功率が上がります。初期状態だとかなりシビアな操作が必要になりますが、ダイヤを取得して最高速が上昇していると、簡単に飛び越せるようになります。ダイヤと最高速の増加については、この先の項で説明しますね。
 注意したいのは、ジャンプ狩りの為、空中にバナナが設置される場合があることです。一面がバナナに埋め尽くされるような場面では、どれが地上バナナで、どれが空中バナナなのか、一瞬での判別が容易でないこともあります。また、高めの空中バナナは下を通り抜けられるというのも重要な知識です。これらに必要なのは観察眼です。どのバナナがどういった高度に設置されているのか、だんだんと見分けがつくようになってくるはずです。実戦の中で少しずつ、鍛えていきましょう。
 いずれの場合も、シチュエーションにより迂回の選択をするのが無難な場合もあります。ジャンプによる回避はリスクも大きいのです。路肩の広いコースなら路面外へ退避する勇気も重要です。ただ、回避不能に見えて、バナナの切れ目があることもあります。ドッグファイトの局面では、攻めるか堅く行くか、その駆け引きが面白いですね。
 なお、上手い人が他のプレイヤーと差をつける技術の一つとして、アウトコースとインコースがバナナで分断されている際、貪欲にインコースへと飛び込いんでいく点があります。もしも自分が分断されているうちのアウト側にいた場合、あるいはバナナの切れ目を探し、あるいは卓越したジャンプ操作で、とにかくイン側に入ってベストなラインへと復帰するのです。本作において、細かなライン取りの差の重要度は、かなり高いものです。もしもみなさんが、初心者から一つ上のステップへ上がろうとした場合、そうした貪欲さを身につけなければならないでしょう。

 以上は、見えているバナナへの対策です。ここからは、やや高度なテクニックの解説をします。
 バナナの最も厄介なのは、コーナーの途中や障害物の陰などに設置される、ブラインドバナナです。いくら回避の腕を上げたところで、見えないのでは避けようがありません。これについての対策は、相手のライン取りを読み、それを外すことです。
 バナナを置く側の心理として、極端な遠回りをしてまで散りばめるよりは、自分のライン取りを優先し、その経路にバナナを置いていくことの方が多いかと思います。レースゲームの宿命として、突き詰めれば全員が同じようなライン取りになる為、最も早く駆け抜けられるラインにバナナを設置すれば、それが最も罠にかけやすい配置となるのです。なので、たとえばコーナーでバナナを警戒するのなら、あえてアウトコースを走るなどするのが得策です。*谷*の急カーブ前で、アイテムボックスを取得したプレイヤーがバナナを引き当てた様子なら、やや大げさにアウトコースを走るようにすれば、かなりの確率で被弾せずに済みます。もちろん、それを見越してアウトコースにバナナを仕掛ける戦法もあります。ここは完全に読み合いの世界なので、前方を走るプレイヤーの思考を常に推察できるようになりましょう。


b.ロケット
 一定時間、前方にアイテムボタンを押しただけロケットを発射するアイテムです。着弾もしくは一定時間で爆発し、この爆風に当たるとスピンします。上手い人にこれを引き当てられると、偏差射撃で道を塞ぐようにされて一発目を食らい、そのままスピンしているところに二発、三発と連続でぶちこまれます。本作には後方を確認する手段が無いため、引かれた瞬間から恐怖の時間が始まります。

 効果音をよく聞きましょう。「シュッ」という音が連続したら黄色信号です。後方にアイテムボックスがあり、走行中の道が直線的ならば、もうほとんど赤信号です。ロケットの弾速は、幸いそこまで速くありません。よほどの接近戦でもない限り、発射から着弾までにはラグがあります。コース上で誰かがロケットを発射すると、上のような効果音が鳴るため、それが聞こえたら警戒モードに入るのです。こちらを狙撃せんとする、すぐ後ろのプレイヤーによるものかどうかは、画面にロケットが映り込むまでは分りませんが、警戒しているのとそうでないのとでは、取れる行動が変わってきます。
 警戒して取れる行動と言っても、何をすればいいのでしょうか。確実なのは、縦軸をずらすことです。ロケットは水平に飛ぶので、例えば*湾岸道路*や*Iceland*の路肩など、高低差のある地形に避難すれば、とりあえずはしのげます。すぐさまライン取りをずらす、ジグザグに走るなどの悪あがきも、多少は有効ですね。

 また、ロケットには、先端に当たらなければ不発に終わるという特性があります。これがどういうことかというと、例えば側面や、もっと言えば先端からほんの少しずれた、円錐の面にかすったくらいなら爆発が起こらず、スピンしないということです。なので、狙って実行するのは難しいですが、ジャンプで後方からの射撃を飛び越し、先端の接触判定さえ避ければ、スピンはせずにすみます。ただいずれの場合も、ベクトルの力で進行方向が若干ずらされるので、無傷とはいかない場合がほとんどです。慣れましょう。

c.スパイク/ハンマー
 ともに接近戦用のアイテムです。取得後一定時間、スパイクは後輪の外側にスピンを伴う攻撃判定を付与し、ハンマーはアイテムボタンを押すと、大き目のスピン判定を持った木槌を、敵プレイヤーがいる方向へ振りかぶります。ハンマーに関しては、取得しているかどうかが見た目に分からないので、不意打ちを警戒する必要があります。もし前方のプレイヤーがアイテムを取得したのに、バナナもロケットも打つ様子がない時は、これを疑いましょう。不用意に近づくと、きつい一撃をお見舞いされてしまいます。

 これらの接触を前提とした攻撃アイテムは通常、プレイヤー同士の距離が開きやすい対人戦では、活躍しづらいアイテムです。しかし上手いプレイヤーは、これらを巧みに使います。自分がスパイクを手に入れたと分かるや否や、あえてギアを一瞬バックに入れ、後続と接触するほど距離を詰めます。そうしていたいけな野生動物を魔の手にかけるのです。対策としては、このアイテムに限ったことではありませんが、アイテムボックスを取りそうなプレイヤーが近くにいたら、できる限り近づかないことです。またこれはやや高度な戦術ですが、もし並走やドッグファイトの様相であれば、こちらから一瞬バックギアに入れ、安全な距離を取るのが無難です。


d.バブル
 取得すると車体を丸い泡が覆い、アイテムボタンを押すとそれが膨張、破裂します。バリアーのようにも見えますがそういった効果はなく、あらゆる攻撃手段の被害を真っ当に受けてしまいます。バリアが破裂した際に攻撃判定が……ということも、残念ながらありません。
 したがって、特に警戒することはないアイテムと思われがちで、それはおおむね間違っていません。しかし、相手プレイヤーとの密着状態から膨張を使用することでベクトルに干渉し、相手の車軸をずらして走行を妨害するといった希少な技も無いではありません。やはり、不用意に近づかない方がいいでしょう。

▮Ⅱ.アイテムの"いい使い方"をしよう

 前章でみなさんは、レース中、アイテムで攻撃されたときのことを学びました。バナナやロケットに被弾した際の対策や、各アイテムに対応した防御方法が、少しずつ分かってきましたね。
 しかし、ゲームプレイの花形といえば、やはり防戦一方よりも、攻め手に回った局面ではないでしょうか。いやいや守りこそが醍醐味だという方もいるかもしれませんが、それでも攻撃の機会というのは、否応なく回ってくるもの。攻防一体でないと勝ち進めないのが本作です。そこで、本項目では受ける側から一転して、攻める側のテクニックを解説します。

 ところで、本学会報を最初からここまで読み進めたみなさんは、すでにいくつかの、攻めのテクニックを知っているはずです。どこでそんなことを学んだのかというと、第Ⅰ章④で解説した、上手い人はこのアイテムを、こんなふうに使うから、こういった対策をしようという話です。あれらはそのまま、そのアイテムを使う側になった際、このように使えば相手を困らせることができるという情報だったのです。本項目では、それら前章の内容と重複する情報については、特別に重要な場合を除いてあまり深く掘り下げません。もしも本学会報をこの第Ⅱ章から読み始めて、情報の掘り下げが足りないと感じた場合は、前章④まで戻って読み進めると、理解の助けになるかもしれません。

①アイテムの基本を知ろう
「アイテムボックス取得時の駆け引きを知ろう」

 アイテムを使うことになるのは、どんな時でしょうか。アイテムを取得した時ですね。コース上の特定ヶ所に点在する"?"のオブジェクト(解説の便宜上、アイテムボックスと呼びます)に触れると、全5種類の中からランダムでひとつのアイテムを取得できます。取得されたアイテムはおよそ5秒間保持され、バブル以外のアイテムは、効果時間中であれば、無制限に使用し続けることができます。この仕様により、バナナでコースが埋め尽くされたり、ロケットの弾幕が飛んできたりするわけですね。

 アイテムボックスからアイテムを取得する際は、基本的にはアイテムボタンを連打しながら取るようにしましょう。混戦の時には、これが特に重要です。連打しながらアイテムを取得すると、例えばハンマーやバナナといったボタン発動系アイテムを取得した際に、最速で周囲へ攻撃することができます。上記した通りアイテムには時間制限があるので、バナナを一つでも多く設置することにも役立ちます。速度が低下してしまうバブルを引いた際には、最速で破裂させて、ロスを最小限に抑えることにも繋がるでしょう。本作のアイテムボックスは、一か所に複数個並べられているようなことはなく、一つひとつ、独立して設置されています。そのため混戦であればあるほど、その周囲には沢山のプレイヤーが集結することになります。そうした中で、見事アイテムを勝ち取ったその瞬間に、ハンマーを振り下ろすことができれば。バナナを設置することができれば……。周りのプレイヤーを一網打尽にして、見事トップを独走することだってできるかもしれません。スピードの世界では、ほんの一瞬の差が明暗を分けるのです。
 もちろん場合によっては、取得したアイテムをあえてすぐに使わない戦法もあります。一つの例を挙げると、キー入力により発動する系統のアイテム。つまり、ハンマーかバナナのことですね。これらを使わず抱えておくことで、アイテムボックス取得を目撃した後続に、それらを隠し持っているかもしれないというプレッシャーを与えることができます。そのほか、それぞれのアイテムを使わずに一旦抱え込む利点は、各アイテムの項目で解説します。

 また、先行するプレイヤーがアイテムボックスを取得しようとしている場合、距離感を意識しましょう。この理由は二つあります。
 一つは、攻撃アイテムの警戒です。もし先行するプレイヤーがバナナを引いた場合、あまり近くに陣取っていると避けようのないバナナを食らってしまうかもしれません。ハンマーやスパイクを取得された場合に関しても、急ブレーキからの直接攻撃が飛んでくることがあります。先行するプレイヤーが確実にアイテムを取れるような状況では、その真後ろを避け、急にバナナを出されても対応できる程度の車間距離を空けておくのが無難でしょう。やむを得ず接近してしまっている場合は、せめてアウトコースへ逃れるなどしましょう。
 さきほど、アイテムボックスの周りにプレイヤーが集まる現象を述べましたが、実はそういった集まりに参加するのは、本来好ましい事ではありません。上手い人同士の戦いでは、混戦状態でアイテムボックスの近くに差し掛かると、牽制のし合いが始まります。自分がアイテムボックスを取りに行くか、そもそも取りに行ける位置取りなのか、取るのはどのプレイヤーになるのかなどを推察し合い、あるものは一直線に取得へ向かい、またあるものは横へ後ろへと退避するのです。牽制勝負が混迷したあげく、結局全員がアイテムを取れないということすらあります。駆け引きの雰囲気が分かってくるまでは、確実に取得できる場合以外、大げさに退避しておくのが良いでしょう。 
 もう一つは、アイテムボックスの、取得判定復活の調整です。みなさんには、先行するプレイヤーがアイテムを取得した後すぐ、自分も同じアイテムボックスに突っ込んだのに、自分だけ取得ができなかったという経験はないでしょうか。実は、アイテムボックスとダイヤには、一度取得されてからもう一度取得できるようになるまで、およそ1秒程度のクールタイムがあります。具体的な指標としては、取得時のアニメーションを見てみましょう。これらのオブジェクトは、取得されると跳ね上がり、そして着地します。この着地が完了するまでのアニメーション中は、取得判定が発生しないのです。何としてでも前方のアイテムを取りたいものの、すぐ前を走るプレイヤーが、それを取得してしまいそうなとき、あえて少しブレーキを入れたり、ややアウトコースを攻めるなどして、このアニメーション分の車間距離を確保します。そうすることで、自分もアイテムを取得し、周りのプレイヤーへの攻撃を開始することができるのです。引いたのがロケットなら、憎き先行プレイヤーをそのまま撃墜することも可能です。もちろんこれは、リスクを伴う行動です。必然的に、先行するプレイヤーのライン取りをなぞる形になるため、バナナや、ブレーキからのスパイク(ハンマー)の一撃を食らいやすくなります。しかし、そのリスクを負ってでも、抜かしにかからなければならない局面というのがあります。例えば第三レース、三周目の終盤。大勢決するこの局面において、ここでロケットを引いて抜かさなければ、スコアが不足し優勝は不可能……。そんな場面に出くわした時、こうした小さなテクニックが、勝負の結果を変えてくれるかもしれません。


②バナナのいい置き方を知ろう
「状況に応じて、コンセプトを決めて設置する」

 バナナの強さに関しては、本作を少しでもプレイしたことのある方には、深く説明をする必要はないはずです。取得後約5秒に渡り、後方へと複数個、接触するとスピンするバナナの皮を設置することができるアイテムで、一度の取得でコース上をバナナまみれにすることが可能です。相手に踏ませてしまえばそのまま連続スピン状態へと誘い込むことができ、これにより、トップをひた走るプレイヤーが一気に6位転落するなどといった事案は、本作においてまったく珍しい事ではありません。
 やみくもに設置しても強いのがバナナです。適当にボタンを連打しているだけで、後続プレイヤーたちが勝手に大クラッシュを始めることもままあります。しかし、勝ちに行くなら状況に応じた置き方が必要になってきます。バナナを使用する際の注意点と、知っておくと便利な置き方の工夫を、できる限り把握しておきましょう。

a.自分が設置したバナナを踏まないようにする
 見えない位置に置いたバナナは、確実に覚えておきましょう。自分が設置したバナナを自分で踏んでしまうという現象は、決して珍しい事ではありません。そんなうっかりをするものかと思われるかもしれませんが、例えばブラインドカーブや障害物の陰などに設置した場合は、置いた本人からしても、そこにまだバナナがあるかどうか判別がしづらいものです。レースの局面というのは非常に忙しいものなので、見えていない物にまでは意識が向きづらく、ついうっかり踏んでしまうということがよく起こるのです。
 こうした見えづらい位置へ設置したバナナは、把握さえしていれば情報戦の観点において優位に立つことができます。自分以外の誰も、その位置にバナナがあるとは知りません。見えていれば避けられておしまいのバナナも、見えなければ避けようがないことは、前章でお話しした内容です。本作には、情報戦の側面が顕現する瞬間があります。ブラインドバナナの把握は、正にその一例です。もし自分が設置したものでなくとも、見えづらい位置にバナナを発見した場合、確実に記憶へと刻み込み、次の周回で踏むことが決してないようにしましょう。

b.置き方その1:自分の走行ライン上に置く
 あえて特別な動きはせず、いつも通りのライン取りで走りながらアイテムボタンを連打します。バナナ設置における、基本的な考え方の一つです。走行ラインというものは、最速を求めれば一本の線に収束するため、誰しもが同じようなラインを走ることになります。その経路にバナナを設置すれば、自然と他プレイヤーが踏みに来てくれるわけですね。コースごとのライン取りに熟練した、上位プレイヤーが多数を占める部屋で有効な置き方です。

c.置き方その2:道を塞ぐように置く
 コースを横断するような斜めのライン取りをして、バナナで道を塞ぐようにする置き方です。基本的にはこの置き方か、「b.置き方その1」でご紹介したとおり自分の走行ライン上に置くかのどちらかでいいでしょう。

画像1【図Ⅱ-A】

 分かりやすく嫌らしい置き方ですが、上手い人が相手だと、切れ目の部分を見極められ、避けられてしまいます。バナナにもまた、一度置いてからまた置けるようになるまで、若干のクールタイムが存在します。それによって生まれる隙間が丁度、車体の横幅分程度であるため、抜けられてしまうのです。ここで把握しておきたいのは、コースに対するバナナラインの角度がどの程度つけられているのかで、避けやすさが違ってくることです。図Ⅱ-Aの場合、およそ45度の角度でバナナを設置していますね。後続は、同様に45度の角度で、隙間へと必要に応じてジャンプするなどして侵入すれば、被弾せずに抜けることができるでしょう。この角度が、コースに対して垂直に近づくほど、避けるのは難しくなります。本作において、咄嗟におおよそ45度以上の角度に対して進む行為が、あまり容易ではないためです。本作では、細かい速度の調整が利きません。なぜかというと、前進と交代の二つのギアをスイッチするという、特殊な操作形態が採用されているためです。その関係で、垂直に近い形で並んだバナナをかわすためには、針の穴を通すような、繊細な操作が要求されるのです。したがって、バナナを置く側としては、そういった状況を意図して作り出してしまえばいいというわけです。では、どのように置けばいいのでしょうか。

図II-B【図Ⅱ-B】

 もしも後ろに、今回のゲームで得点を多く稼いでいるなど、どうにかして下位に落としたい他プレイヤーがいた場合、実行できそうならば図Ⅱ-Bのような形を狙うべきです。このコースは、左側が壁になっています。その壁に追い詰めるようにして、なるべく角度を付けずにバナナを置くのです。画像では直線で実行していますが、コーナーでこの配置をするのが非常に強力です。避ける為に必要とされる操作が更に複雑化するため、より的中確率が上がります。
 この置き方をする際の注意点として、徹底的に塞ぐことを心がけるべきです。実は、図Ⅱ-AおよびBにおいて、それが実行されています。路肩の赤白ラインにまで、バナナがきちんと置かれていますね。路肩は*湾岸道路*、*水中*、*谷*などに存在する地形であり、進入時の突っかかりを警戒するなどして、意外とここを手薄にしてしまいがちです。安定を取るのならば、それは決して間違った選択ではないのも事実ですが、ここへの設置があるのとないのとでは、的中率が大きく変わってくることは理解しておきましょう。

d.あえて使わずに抱え込む
 引いたバナナをあえて使わないことにも、きちんとメリットが存在します。一つはブラインドカーブ内からバナナを置き始めることで、バナナの気配を事前に察知させない奇襲攻撃ができる点ですが、他にもあります。これらのメリットを把握し、必要に応じて使う、使わないの選択ができれば、それは立派な戦術と言えるでしょう。やや高度な駆け引きの世界になってきますが、選択肢の一つとして把握しておきましょう。

 明らかにアイテムを取得したのに使わないことで、後続にハンマーもしくはロケットを取得したと思わせることができます。取得しても見た目が変わらないアイテムは、バナナ、ハンマー、ロケットの三種類ですが、このうちバナナは、引いたらすぐ使えばよいと考えるのが一般的です。なのに使わないということは、それ以外のどれかを引いたのだろうと、後続車は推測するはずです。では、ハンマーかロケットを引いたと錯覚させると、どういったメリットがあるのでしょうか。
 この戦術によって、後続プレイヤーの位置取りを、自分の真後ろへと誘導できる可能性があります。それはなぜでしょうか。後続プレイヤーの気持ちになって、この場合の対応を考えてみましょう。もし取得されたアイテムがロケットだったとしたら。下手に先行してしまうと、狙い撃ちされてしまうかもしれません。ではアイテムの使用可能時間が過ぎるまで後方で待機すればいいわけですが、取得されたのはハンマーかもしれないのです。ハンマーは横方向へ、比較的大きな攻撃判定をもつアイテムです。上手い人は、急ブレーキなども駆使して、当てられる横軸にいる相手なら、多少後ろにいても当ててきます。ではいったい、どこに位置取れば……。
 この時、後続プレイヤーが、自分の真後ろに逃げ込んできてくれる可能性があります。これは、実際にはベターな選択肢ではありませんが、抜いたらロケット、そうでなくとも下手な位置取りをすればハンマーとくれば、真後ろが安全なのでは?という心理が働くわけですね。
 さて、相手プレイヤーが真後ろに着きました。自分は抱えていたバナナを所持しています。やることは、もう一つしかありませんね。
 
e.覚えておきたいバナナの小技:空中バナナ
 ジャンプなどによる滞空中にアイテムボタンを押すことで、空中にバナナを設置することができます。地上に設置されたバナナは、ジャンプによって避けられてしまいますが、空中に設置されたバナナは、このジャンプを狩ることができます。ただ、設置に際して、ジャンプのもっとも高いところで設置されたバナナは、下を通り抜けることができてしまいます。したがって理想は、最高高度からやや下ぐらいを狙って設置することです。こうして設置された中空中バナナは、地上とジャンプの両方を仕留めることができます。しかし、これを狙うのに神経を尖らせるよりは、設置時のライン取りを気にした方がいいでしょう。

f.覚えておきたいバナナの小技:バック走バナナ
 バナナは車体の後ろに設置されるアイテムです。したがって、バック走中は進行方向に向かって設置されることになります。当然、そのまま走ると自分がスピンしてしまいます。しかしこれが、有効に働く局面があります。それは、バック走状態で、他のプレイヤーと正面(背面?)衝突した時です。この場合、バナナは正面の相手プレイヤーを直接攻撃できるアイテムへと変貌します。非常に限定的な状況ですが、レース終盤にスピンして逆走状態になってしまい、大勢を立て直すよりも、そのままバック走でゴールを目指した方が手っ取り早い場合などに、実行する機会があるかもしれません。筆者も過去に、一度だけ経験したことがあるシチュエーションです。バック走バナナの直撃によってスピンした相手プレイヤーは、そのまま障害物と化しますので、直後にジャンプもセットで出す必要があることを覚えておきましょう。

③ロケットのいい飛ばし方を知ろう
「偏差射撃と奇襲とを意識する」

 バナナの次に強力なアイテムが、ロケットです。前方に位置するプレイヤーへの、唯一の攻撃手段であり、状況によってはバナナより重要になる存在でしょう。このアイテムの取得を祈りながらアイテムボックスへ突撃するような局面は、対人戦では日常茶飯事です。
 しかしバナナと違い、ロケットは使い方をきちんと知らないと有効活用が難しいアイテムです。適当に連打しても強いというものでは、決してありません。とはいえ、扱うのが難しいかというと、そうでもありません。いくつかの法則と使い方とを把握してしまえば、誰でも簡単に、一流スナイパーになれるのです。

 ロケットを当てる際、どの打ち方をとるにせよ共通して心がけたい事項として、できれば多段ヒットさせるということがあります。スピンしている相手に、二発、三発と追撃を的中させることで、スピン後の進行方向を混沌とさせることができます。上手くすれば、相手プレイヤーを逆走状態へ陥らせることもできるでしょう。ロケットは、一発当てるだけでは単なる足止め程度にしかなりませんが、二発以上当てることができれば、それまでの成績をひっくり返し得る、逆転の一手に化けるのです。

a.壁を作って閉じ込める
 相手に直接当てるというよりは、相手が通らざるを得ないラインに壁を設置するイメージが基本です。ロケットはアイテムボタンを連打することで、ほとんど隙間なく、一本のレーザーのように攻撃判定を展開することができます。このレーザー的な射出スタイルが、ロケットの基本戦術だと思ってください。この特性を利用して、直後にコーナーがある場合はイン側を塞ぐように打ち込むと、前方のプレイヤーに対して、ほとんど避けようのない攻撃をすることが可能です(図Ⅱ-C)

図Ⅱ-C【図Ⅱ-C】

 直線で当てる場合もやはり、相手を閉じ込めるような打ち方をイメージしましょう。レーザーを展開して相手プレイヤーをコースのどちらか半分へと追いやり、相手が逃げた側へと集中砲火を浴びせかけるのです。外周に壁がある*湾岸道路*のようなコースでは、壁側に追いやると逃げ道を完全に断つことが可能です。(図Ⅱ-D)

図Ⅱ-D【図Ⅱ-D】

 放射状に発射して、コースに弾幕を張るように射撃しても似たような当て方ができるでしょうが、最初にレーザーを展開するやり方の利点は、自分自身が真っ直ぐ走っている時間を長く取れる点です。ロケットが射出される方向は、現在向いている方向です。そのため、発射先を左右に振ろうとすれば、自然と蛇行運転のような走法になってしまい、肝心のスピードが出ません。真っ直ぐ走っている時間を長く取れるということは、相手プレイヤーを攻撃しつつ、自分はベストに近い走りをできるということなのです。もしも攻撃を避けられたとしても、相手プレイヤーは回避のために自身の走行ラインを大いに崩されることでしょう。そうした場合に、こちらがロスの無い走りをできていれば、もしロケットを外してしまったとしても、結果的に相手プレイヤーとの差を縮めることができるのです。
 コツは、まっすぐ射撃している状態から角度を付けていく際、車体をできる限りゆっくりと旋回させることです。そうすることで、隙間なくロケットを展開することができ、より避けづらい攻撃に繋がります。ただ、前述した通り、アイテムの使用可能時間は5秒程度と決まっています。この時間内に収まらないと、攻撃が尻切れトンボのようになってしまいますので、迅速な操作ができるように慣れていきましょう。

b.奇襲を意識する
 ロケットを期待してアイテムボックスの取得に向かう場合、アイテムボタンを連打しながら近づくのは控えましょう。ロケットの強い所の一つが、その奇襲性です。食らう側からするとこのアイテムは、いつだって突然誰からともなく飛んできて、壊滅的な被害を加えていく死神のような存在です。本作には、後方確認の手段が無いため、後ろから狙う側が非常に有利なのです。この際、狙う側が、取得後一発目から当てにいく打ち方をしていた場合、その恐ろしさは倍増します。撃たれる側からすると、突発的に、必ず当ててやるぞという意思のこもった射撃の数々が、雨のように飛んでくるわけです。わけもわからないままに被弾してしまうこともしばしばでしょう。
 アイテムボックス取得の際にボタンを連打していると、不用意な方向へ一発が打ち出されてしまい、先行するプレイヤーにロケットの出現を感づかれてしまいます。上手い人なら、その先走りの一発で即座に危険を察知し、退避行動へと移ります。逃げ場のないコースであればそこから命中にこぎつけることもできるでしょうが、*湾岸道路*や*Iceland*では、安全圏へと逃げきられてしまう可能性が大きいです。例えば三周目で、先行するプレイヤーを抜くためにはロケットを当てる以外どうしようもない状態で、その状況になってしまったら目も当てられません。ここ一番の成功率を上昇させるためにも、最初の一発が重要であるということを意識しておきましょう。
 こちらが先行している場合に、すぐ後ろに相手プレイヤーがいるようなら、一瞬ブレーキをかけて後退し、あえて抜かれることで当てにいくのが有効な場面もあります。外してしまえば順位を譲る結果に終わるのでややリスキーですが、もし蹴落としたいプレイヤーがいる場合には覚えておきたいテクニックです。 

c.ロケットの物理法則を理解する
 射出したロケットが壁に当たった際の挙動が、なんだかおかしいと思ったことはないでしょうか。実は、打ち出されたロケットには、独特のベクトルが付与されています。このベクトルが働くことにより、壁などに当たった際、まるでビリヤードのボールのように反射して進むのです。ただ、ロケットはまるで風船のように軽く、また摩擦係数も少ないらしく、衝突した壁に沿って進むような挙動を取ることも多くあります。射撃をした後にはこの、跳弾し、滞留したロケットの爆風に、自分自身が巻き込まれてしまう場合があることに注意すべきです。道幅が狭い*水中*や、*オランダ*の風車周辺でよく発生する現象です。また特筆すべき事項として、この反射を利用して、カーブの先にいる相手プレイヤーを狙い撃てる場合があります。

図Ⅱ-E【図Ⅱ-E】

 図Ⅱ-Eのような、外周に壁が存在するS字コーナーでは、ロケットの反射を利用した攻撃が可能です。現在の所、*水中*で存在が確認されています。コーナーの側面へとレーザーを撃ち込むことで、まさにビリヤードの要領でその先にいる相手プレイヤーの進路を塞ぐのです。実行可能な状況はかなり限定的ですが、特に*水中*走行時には、覚えておいて損はありません。


④その他のアイテムのいい使い方も知ろう
「スパイク・ハンマー・バブルの活用」

 バナナとロケットがあまりに分かりやすく強力であるがゆえに、その他のアイテムは十把一絡げにして見られがちです。確かに、ハンマーとスパイクは対人戦だと当てづらく、バブルに至っては、一見すると存在意義すら疑わしい性能をしていると思われるかもしれません。しかし、アイテムはランダムで取得されるものなので、これらはみなさんの要望とは無関係に、手元へと舞い込んできます。せっかく手に入れたのに、それらへの使い道を見出せないというのは非常にもったいないことですね。多くの初心者が使えないと判断し、切り捨ててしまいがちなアイテムたちだからこそ、活用方法が分かれば、それはみなさんが初心者から脱却できる強みになるのです。
 これらのアイテムには、ちょっとやそっと触れただけではわからない、優秀であり、替えの利かない性能があります。それらを知っていれば、ハンマーが、スパイクが、そしてあのバブルまでもが、堅実に順位の安定に貢献する秘策へと昇華するのです。
 上手い人というのは、あらゆるアイテムを状況に応じて、最大限に有効活用します。それらは経験からくるアドリブの力でもありますが、単純に各アイテムの性能を知っているか否かという知識の差でもあります。そしてその知識の差は、本学会報を読めば今すぐに埋められることなのです。この先の項目を読めば、みなさんもこれらのアイテムに関して、上手い人と同じスタートラインに立てるわけですね。

a.ハンマー
 有効時間中、アイテムボタンを押すと相手プレイヤーがいる方向へハンマーを振りかぶります。このハンマーオブジェクト自体に大き目の当たり判定が付与されており、これに触れた相手はスピンします。判定が横に最も伸びるのは振り下ろした瞬間なので、当てに行く際は、あらかじめハンマーを振りかぶっておき、判定を車体横に置きつつ、その判定部分に相手プレイヤーを被せに向かうようなイメージが基本です。既に文中で何度か触れていますが、後ろに相手プレイヤーがいる場合、ギアを一瞬バックに入れることで並走状態を作り出して命中させる戦法が存在します。また、取得したことが見た目に現れないため、あえて使わず抱えておくことで、効果時間中、不用意に近づいてきた相手プレイヤーに対して奇襲を仕掛けることもできます。

 注意すべき点は、スピンさせた相手プレイヤーに引っかかり、走行を阻害される危険性です。スピン中のプレイヤーは、その場でぐるぐると回転しながら、微妙に移動します。その移動で、こちらの走行ラインを侵犯されることがあるのです。これに関しては、なるべく相手と密着しないよう、攻撃判定の外側を当てるように距離を取りつつ命中させ、命中した瞬間にジャンプを出すか、スピンしたプレイヤーがいる方向と逆に回避することで逃れられる場合があります。気に留めておくようにしましょう。

 また特筆すべき点として、命中した相手プレイヤーから、スコアを25点奪うことが挙げられます。相手プレイヤーの持ち点が25点未満の場合、所持しているスコアを全て奪います。この際のスコア増減はダイヤの取得時とは別の処理になっており、最高速の上昇と下降には関与しません(最高速上昇に関しては、第Ⅲ章で詳細を解説します)一度に複数のプレイヤーへ命中した場合、命中したプレイヤー全てからスコアを奪うことができ、何度もヒットさせれば、ヒットさせた分だけスコアを奪うことが可能です。
 5点、10点のスコア差が最終順位を分ける事態は、決して珍しいことではありません。特に1レース目、2レース目と優秀な順位で走り抜けた相手プレイヤーがいた場合、スコアを奪えることは非常に重要な逆転の要素になり得ます。もしもハンマーを取得した後、スピンなどで立ち往生している他プレイヤーを見かけた際には、当て逃げ的に一発お見舞いしていくのも、重要なスコア運用の考え方です。無理のない範囲で、貪欲に当てていきましょう。

b.スパイク
 有効時間中、後輪の外側に攻撃判定を伴うスパイクオブジェクトを付与します。近接攻撃の手段である点はハンマーと似ており、用法や注意点に関してもほぼハンマーと同様です。一発当てる毎に25点奪える点も同様ですが、相違点は以下の四点です。

 ① 取得した瞬間から見た目にそれが現れる
 ② 発動に関してアイテムボタンを押す必要が無い
 ③ 左右両方を同時に攻撃できる
 ④ 横方向への当たり判定が小さい

 ①については、スパイクが車体の左右に付与される為、後続プレイヤーにはスパイクを取得したことが即刻筒抜けになります。その為奇襲性においては、ハンマーほど高いものではありません。また、当たり判定が効果時間中ずっと継続するため、相手を壁際に挟み込むようにして当てるなどすれば、複数回ヒットさせることができます。
 ②については、アイテムボタンを押さずともよい為、ジャンプやハンドリングを駆使した、より複雑な操作の中に攻撃を組み込むことができます。*ヒルズ*や*谷*で、路肩の上の方で動けなくなっているプレイヤーへ、ジャンプして当てに行くような攻撃も、ハンマーよりやりやすいでしょう。
 ③については、左右同時に攻撃できる点が、混戦時に強力です。右に左にプレイヤーがたくさんいるような状況でこのアイテムを引くことができれば、一網打尽が狙えます。沢山当てられるということは、順位を好転させるのと同時に、沢山のスコアを奪えるということでもあります。4発当てれば100点入手です。奪われた相手はその分スコアが減っているわけですから、この場合だと200点が動く計算になります。一回のレースにおける、1位と2位の取得スコアの差が250点です。スパイクによる攻撃次第で、順位一つ分弱の得点を稼ぎ出せ得ると考えれば、これが決してないがしろにできないアイテムだということが分かるはずです。
 ④については、ハンマーと比較した場合、進行方向に対して横方向への当たり判定が短くなっています。したがって、当てようと思った場合、相手に車体側面を擦りにいくような格好になるでしょう。

c.バブル
 取得した瞬間から効果時間終了まで車体を丸いバブルが覆います。アイテムボタンを押すとこれが膨張し、破裂してすぐに消滅します。バリアーのような見た目ですが、そうした効果はありません。そればかりか、バブルに覆われている最中は速度が若干減少し、加速が止まってしまいます。低速状態で取得してしまうと、割れるまでの間ずっと低速状態で走行しなければなりません。さらにこの時間中は、ジャンプをすることができなくなります。このため、例えば直後にバナナが敷き詰められているような状況で引き当ててしまうと、それらを避ける手段が封じられ、目も当てられない大クラッシュに繋がりかねません。このようにデメリットが多く、実際にこれを引いた際にはがっかりすることが多いのも事実ですが、使い道はあります。バブルが出てくれることを祈る局面は、やや限定的ですが存在します。

 もしも車体が傾いていた場合、バブルを割った際にそれが元に戻ります。車体が傾いていると、ジャンプができなくなります。ジャンプができないと、上で触れたとおりバナナを避けたり、混戦時の立ち回りがしづらくなったりと、とかく不便なものです。*Iceland*や*峠*、*クラウド土地*のような、走破にジャンプが関わってくるようなコースでは、飛べないことが死活問題になります。そんなコースにおいてやむを得ず傾いてしまった場合、バブルを期待してアイテムボックスを取得するのです。もしかしたらそれにより体勢を立て直し、再び上位を目指せるかもしれません。
 また、バブルに覆われている最中、車体がほんの少しだけ、地面から浮かび上がります。これにより、ラリーカップのようなでこぼこしたコースや、*峠*の急坂などにおいて、減速を抑えて走行できる場面があります。そうした場合には、あえて割らず、バブルに覆われたまま走行する選択も重要です。


▮Ⅲ.スコアを意識しよう

 レースの勝ち負けを決定する要素がスコアです。本作の最終順位は、全三回のレースで稼いだスコアの量によって決まります。この最終値を決定づける最大の要因は各レースの着順による増加ですが、それ以外にも増減する要因があります。これらによる増減量は、基本的にはあまり多いものではありません。しかし、こうしたその他の取得による差が勝敗を分ける場合があるのも、また事実です。
 本章では、このスコアを増加させる手段と、その手段を知っていることで取れる戦法を解説します。特に、ダイヤによるスコア増加は重要な知識なので、項目を大きめに取っています。ご一読いただければきっと、スコア稼ぎが決して意味の薄い行為ではなく、むしろ最終順位に大きく貢献し得る重要事項であることをご理解いただけるはずです。

①スコアを稼ごう
「スコアが増加する要因を知る」

 スコアが増加するのはどんな時でしょうか。既に述べた通り、もっとも分かりやすく、増加量も多いのが、レース終了後の着順によって貰える点数です。各順位ごとの入手スコアは以下の通りです。

1位:1000
2位:750
3位:500
4位:250
5位:100
6位:0


 この通り、原則的には順位が一つ下がる毎に、250点ずつ取得スコアが減少していきます。総合優勝を目指すならば、最低でも3位より下にはならないようにしたいところですね。

 このほか、補助的なスコア増加要素として、コース上に散りばめられたダイヤの取得と、ハンマーとスパイクによる攻撃の命中があります。前者は一つに取得つき5点、後者は一回の命中につき最大25点を入手することができます。またハンマーとスパイクはスコアを相手から奪い取る効果であるため、反対にこちらが食らうと、所持しているスコアを最大25点、取られてしまいます。

②ダイヤを大事にしよう
「勝負を捨て、ダイヤ回収に専念すべき場合すらある」

 ダイヤというのは、コース上に点在している四角く黄色いオブジェクトのことを指します。これを取得するとスコアが5点加算されます。ひとつのダイヤオブジェクトは、各プレイヤーによって計31回取得されると消滅し、その場で待機して取得し続ければ、一か所のダイヤで最大155点を稼ぎ出すことができます。とはいえ、これは通常の走行をしている場合には、現実的な数字とはいえません。通常の走行をする場合は、コースにもよりますが、丹念に回収したとして、一回のレースで合計100点稼げれば多い方です。

a.ダイヤ取得のメリット
 ダイヤを取得する非常に強力なメリットとして、入手個数による、そのコース中限定の最高速度増加があります。初期状態の最高速度は60km/hですが、ここから1km/hずつ増やすことが可能なのです。この増え方というのがほんの少しだけ特殊で、まず2つ入手すると1km/h上昇します。それ以降は、3つ入手するごとに1km/h上昇していきます。特に上限は設定されていないらしく、そのコース上で取れるダイヤの数だけ、最高速を上昇させることが可能です。レースが始まったら、まずは急いで二つ回収することを意識しましょう。
 とはいえ、たった1km/hの差では効果の実感がしづらいかもしれません。しかし例えば3km/h増やして63km/hくらいまで加速できるようにすると、まったくダイヤを取得していないプレイヤーに対して、後ろからじわじわと差を縮められるようになっていることに気づくはずです。この差は、そのコースでのレースが終盤に近付くにつれて、如実に現れるようになります。最初は先行していたのに、後半になって後ろにいたプレイヤーに抜き返されたというような経験が多い方は、もしかすると、ダイヤをあまり熱心に取得しないプレイスタイルなのではないでしょうか。
 確かにダイヤを取るためには、若干の遠回りが必要になることもあります。しかし、一周が極端に短いコースなどを除き、一周目と二周目は、多少遠回りしてでもダイヤを取得するべきです。対人戦において、後半戦を意識した立ち回りをするのは、重要事項の一つです。最高速がある程度上昇した状態で後半戦に挑むことができれば、ライン取りの勝負になった際、前に出られる可能性が増大します。攻撃を受けるなどしてスピンしてしまった際に、少しでも素早く立て直して本線に復帰することにも役立ちます。そして何より、最終順位に関わるスコアが増加するというメリットがあります。最高速が上がるうえ、最終順位に貢献できる。まさに一石二鳥というわけです。

b.ダイヤ回収に専念すべき場面
 もしもみなさんが、レースの序盤から中盤にかけて、取り返しのつかない大クラッシュをしてしまった場合、そのレースを諦めてダイヤの回収に専念した方が良い場合があります。これは、必ず覚えておきたい考え方です。前述の通り、着順によるスコア増加は、順位によって決定されます。これが4位だと250点、5位だと100点、6位だと0点になってしまいますね。ダイヤ回収に専念すれば、コースにもよりますが、およそ250点~500点を稼ぎ出すことができます。つまり、4位以下でゴールするくらいなら、ダイヤを集めに回った方がスコアを稼げるシチュエーションが、かなりあるのです。
 おおよそ全てのコースには、ダイヤが二つか三つ、連続して設置されているような箇所があります。そこに陣取って往復し、取りつくすのです。並んでいるダイヤに対して垂直にポジショニングし、前進と後退を繰り返しましょう。もし取りつくしてなお時間が余ったら、また他の、ダイヤが多くある場所へ向かいましょう。
 この時注意するのは、ダイヤ回収に向かう判断は、できる限り早めにするということです。この戦法で得点を多く稼ぐためには、一つの回収ポイントで、より多くのダイヤを入手する必要があります。しかし前述の通り、ダイヤの個数には限りがあります。一か所につき、全プレイヤー合わせて31回しか取得できないのです。もし他にもダイヤ回収に回ったプレイヤーがいたとしたら、そのプレイヤーと同じ鉱脈を奪い合うことにもなりかねません。そうすると一人あたりの入手スコアが減ってしまい、共倒れの結果となってしまいます。
 また、分かっているプレイヤーは、ゴールした後にダイヤを回収しているプレイヤーの存在を、地図上のアイコンやブレーキ音などで察知するや否や、その妨害を開始します。ゴール後は、ゲスト側のプレイヤーなら走行の制御が可能です。それを利用し、回収作業をしているプレイヤーのもとへと向かい、壁際へと追い詰めて動きを封じるなどするのです。こうした被害を受けないためにも、やるのならできる限り早いタイミングでの方針転換と、素早い回収作業が求められます。

 加えて、ダイヤ回収に専念する戦法を取る際に重要な知識として、たとえゴールをしなくとも、レース終了時の順位に応じたスコアが得られるというものがあります。レースにおいて、初めに誰かがゴールすると、60秒のカウントダウンが始まります。このカウントダウンはレースの終了をつかさどっており、他の誰かが2着、3着とゴールするたび60秒にリセットされ、カウントが0になるか、6位のプレイヤーがゴールするとレースが終了します。この際、ゴールしていないプレイヤーが存在するにも関わらずレースが終了した(つまり、カウントが0になってレースが締め切られた)場合、その時点でまだゴールしていなかったプレイヤーは、現在の順位に応じた点数を取得できるのです。この点数はゴールした時と同一で、例えば、4位なら250点、5位であれば100点を取得できます。
 もしかすると、この情報を知ったみなさんは、どうせレースを投げ出してダイヤ回収をしているのだから、順位は6位になるだろうし関係ないのでは?と思われるかもしれません。たしかに、多くの場合はそうなります。しかし、実際にダイヤに専念した戦法を取ってみると、以外にもその限りではありません。ダイヤ回収に専念したレース終了間際、気づいてみれば、自分よりも派手なクラッシュをしたプレイヤーが後方で停滞していたり、同じくダイヤ回収に回ったプレイヤーがほんの少し前方、あわよくば10秒も前進すれば抜けなくもなさそうな場所で回収作業に勤しんでいたりすることが、時おりあります。
 終了カウントが残り少なくなった際、もしも抜けそうなプレイヤーがいるのを確認できたのなら、ダイヤ回収を中断して抜きにかかるべきです。6位で終了するはずだったレースを5位で終わらせられれば、終了時のスコアが100点増加します。5位が4位になれば、150点増加です。100点を超えるスコアの増加は、最終順位に大きく貢献し得るものです。これには、何度もいうようですが、他プレイヤーの動きをマップや効果音などの情報から察知する練習が必要です。
 当然、逆のシチュエーションも考えられます。終了間際、別プレイヤーのものと思われるダイヤの取得音が止んだ、マップ上で停滞していたプレイヤーが突然動き出したといった事象が確認できた場合、最後の最後で抜かれないよう、こちらも前進を開始すべき場合があります。


 以上が、ダイヤに関する事項の解説でした。やや限定的な情報も含まれてはいましたが、まずは、各コースにおいて取るべきダイヤを把握することと、緊急時にはダイヤ回収に専念すべきであるということの二点を抑えておきましょう。どのコースでどのダイヤを回収すべきかに関しては、第Ⅳ章にて解説します。


▮Ⅳ.コースごとの特性を知ろう

 第Ⅰ章から第Ⅲ章まででみなさんは、どのコースでも使えるような、比較的汎用性の高いテクニックを中心に学んできました。この章では、そこから少し視野を狭めて、一つひとつのコースに絞った解説をしていきます。各コースの攻略にもまた、知っておくだけで有利にゲームを進められる、便利なポイントが多くあります。
 しかしコースの種類は12もあり、これは昨今のレースゲームとしては多いものではありませんが、それでも、そのすべてを把握するのは大変なことです。もしもみなさんが、これらを一度に覚えるのが難しいと思ったなら、まずは一つのコースだけ覚えて、実践してみるなどしてもいいでしょう。一つのコースの対策を知り、実行できるようになるたび、みなさんは着実に、勝負に勝てるようになっていくはずです。


①早くゴールする走り方
「実は、非常に硬派なレースゲーム」

 まずは、一部のコースに存在する、強力なショートカットを把握しましょう。これらを把握して初めて、上手い人と同じスタートラインに立てると思ってください。*クラウド土地*、Mystic*などのコースには、上手い人と戦う場合、必ず知っておかなければならないショートカットの知識が存在します。本章ではこの先の項目にて、一つひとつのコースに関して、そうした重要な要素が存在するカップから順番に、攻略情報を掲載しています。

 次に、ライン取りを練習しましょう。もしかすると、本作をプレイした経験のある方は、細かいライン取りよりも、良いアイテムを引く運と、その使い方こそが重要ではないかと思われるかもしれません。確かにそういった面が色濃いのも本作です。ところが、ある程度まで突き詰めると、本作のレースゲームとしてのゲーム性は、その見た目とは裏腹に、たいへん硬派であることが分かります。
 本作は、攻撃の手段が派手であるため、大味なバランスに見られがちです。ロケットとバナナがあまりに強力で、また印象的であるため、そのイメージが先行してしまうわけですね。しかし、こと通常の走行に絞って観察してみると、一足飛びに加速する手段というのが存在せず、先行するプレイヤーを抜くためには、以外にも繊細な走行が求められることに気づくはずです。たとえアイテムがどんなに強力でも、常に必要なものを使い続けられるわけではありません。レースにおける走行時間の大部分は、自らのライン取り一つで勝負する、テクニックの世界なのです。さらに、本作にはキャラごとの性能の差すらありません。全員が同じ性能なので、このライン取りによる差が、痛烈なほどに結果として現れます。本作の一見して運否天賦、無茶苦茶にしか見えないレースの光景には、その見た目とは裏腹に、F1レースさながらの、実力至上主義の世界がひそかに隠れているのです。

②各コースの走り方
「全てのステージに、それぞれの個性があることを知る」


a.魔法のカップ:*クラウド土地*

 全コース中、最も一周が短いコースです。アイテムボックスが一つしか存在せず、しかもインコースから離れた位置にあります。そのため妨害行為がほぼ発生せず、普通に走る分には、たいへん平易なコースと言えるでしょう。

図Ⅳ-a-1【図Ⅳ-a-1】


●走り方の一例●

画像7【図Ⅳ-a-2】

 上図中における、【1】の部分をジャンプで突破することができます。雲の塊が二つ連なっているうち、左側の根本付近を狙って着地後、一呼吸おいてからジャンプして向こう側へ抜けましょう。高い所に着地してしまったり、反対に谷間の切れ込みに干渉するような地点に着地してしまったりすると、突っかかってしまいます。悪い詰まり方をすると、その場から動けなくなる場合もあり、ハイリスクな技と言えます。3周全て成功させると、選択した動物によって前後はしますが、上手くすれば34~36秒程度でゴールすることが可能です。
 このショートカットについて練習しておくべき点は、ハンドリングとジャンプのタイミングです。【1】のポイントが、直前の壁に阻まれて死角になっているため、スタートから当該地点に至るまでのハンドリングには慣れが必要です。この位置にピンポイントで角度を合わせて飛び込む感覚を身につけましょう。また、ジャンプのタイミングも若干シビアなので、これもやはり練習しておいた方がいいでしょう。幸い、本コースは魔法のカップの第一ステージに設定されているため、トライ&エラーは容易です。何度も繰り返しプレイしていれば、必要な感覚がつかめてくるはずです。

 さてみなさんは、上手い人と対戦を重ねるうち、この面のショートカットに独特の駆け引きがあることに気が付くはずです。そして、そのショートカットを巡る探り合いこそが、この面の勝敗を分けるキモであり、また非常におもしろい点であることにも気づくことでしょう。
 このショートカットは、最速を求める他プレイヤーが群がることにより、その成功率が著しく低下します。それゆえに、常に他プレイヤーの動向を確認あるいは推察し、仕掛けるか、迂回するかの選択を迫られ続けることになります。本コースの走行時間は平均して、ほんの40秒前後です。しかしその水面下では、野生動物たちが嵐のように、お互い観察の視線を飛ばし合っているのです。

 画面左上の小マップを確認し、【1】のポイント周辺で停滞しているプレイヤーがいるようなら、通常コースへの迂回を検討するべきです。このショートカットは、下手をするとその場で停滞し、まったく動けなくなってしまうリスクを背負っています。そして猫の額然とした雲の谷間は、野生動物が二匹、肩を並べて無事安穏に通行できるほど甘い場所ではありません。誰か一人でもそうした状態になったが最後、後続プレイヤーは次々に玉突き事故を起こし、第二、第三の被害者が発生する場合があるのです。重要なのは、みなさんが事故と関わり合いにならないことです。
 といっても、詰まってしまうプレイヤーというのは、大抵の場合、ハンドリングやジャンプなどのトラブルで、着地点が通行可能ルート外へとずれてしまうことにより、そのようになっています。そのため実際に現地を通行してみると、案外支障なく向こうへ抜けられる場合も多くあります。そこで判別の為に、やはり小マップを確認しましょう。ほぼ確実に危険と言えるのは、すでに誰か詰まっている【1】の地点で、もう一人停滞するプレイヤーが現れた時です。誰かが勇敢にもショートカットを試みて、やはり詰まってしまったわけですね。この場合、少なくともどちらか一方は悪質な詰まり方をしているため、ショートカットを試みるべきではありません。これとは反対に、他プレイヤーの通行が確認できた場合は良性です。自分が同様に試みても、比較的高い確率で突破できることでしょう。もちろんこれらは、ショートカットの感覚を習得していることが前提です。
 どちらの確認も取れない場合は、一位を目指すなら試行すべきでしょうが、もちろん安定を取る派閥もあります。これについては価値観の問題になりますので、みなさんの判断基準を持つようにしましょう。

 次に、レース開始時の話をします。この時、キリン以外での実行には、リスクが伴います。そしてスタート位置が後方の野生動物ほど、そのリスクが増大するでしょう。スタート直後は、全員がショートカットを試みることになるため、【1】の地点で大渋滞が巻き起こります。これに巻き込まれてしまうと、下手をすればそのレース自体を捨てざるを得ない、大クラッシュにも繋がりかねません。恐ろしいのは団子状態で雲の隙間に突入し、試みに失敗した先行プレイヤーに追突、そのまま自分も静止してしまうことです。最悪の場合、追突されたプレイヤーはそれにより前へのベクトルを得て脱出。そして自分だけ取り残され、そのままレース終了ということすらあります。
 こうしたリスクがあるため、初回は通常ルートへ迂回する選択肢があります。しかし迂回した場合、三連続でショートカットを成功させた他プレイヤーには絶対勝てませんので、リスクを負って勝負に出ることも、時には必要です。これが、クラウド土地の駆け引きなのです。

 なお、安定はさせづらいですが、倍ジャンプを成功させれば、ほぼ停滞の心配なくここを突破することができます。倍ジャンプについては、第Ⅴ章で解説します。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 スタート直後、(a)と(b)のダイヤを狙いましょう。あとは、ほぼロスなく取れる位置にある(g)のみ、デッドヒート時以外は毎周取得を狙いましょう。それ以外は基本的に無視して、最短コースをひた走るのがベターです。順位が一つ下がれば、250点をロストします。軽はずみに、5点単位のスコア欲に駆られるべきではありません。本面において、開幕直後以外の状況でダイヤを取得してもよいのは、ひとつは自分が一位で、後続との車間距離に余裕がある場合です。それ以外で取得すべきなのは、もはや先行するプレイヤーに追いつける見込みがない場合のみでしょう。
 アイテムボックスは、見ての通り一つしかないうえ、アウトコースの外れにあります。この位置では、あえて大回りして取るメリットもほぼ無いでしょう。


b.魔法のカップ:*Mystic*

 サイケデリックな色彩とBGMが、非常に印象的なコースです。黒くなっている個所は、ダートもしくは障害物の判定を持っています。それ以外の大部分は、減速無しで走行可能な路面扱いであり、白線でコースのラインが示唆されてはいるものの、そこから大きく外れて自由奔放なラインで走り回ることも可能です。以上から、見た目だけでなく、構成としても異色のコースと言えます。

図Ⅳ-b-1【図Ⅳ-b-1】

●走り方の一例●

図Ⅳ-b-2【図Ⅳ-b-2】

 比較的小さい黒丸の床は、その根元をすり抜けることができます。これを利用して、黒い床と有彩色の床との境目を、なぞるように走りましょう。注意すべき点は、上図中、※印が付されている、比較的大き目の黒丸部分には、障害物判定が内包されていることです。したがって、この部分を通行する際、少しでもアウト側にずれてしまうと、その判定に接触してしまい、走行が中断されてしまいます。また前述した通り、黒い部分はダート判定であるため、できれば踏むべきではありません。この部分に差し掛かる際には、適宜ジャンプをするようにしましょう。ジャンプでダート判定を軽減することはできませんが、障害物判定への接触を抑制できます。

 先行有利が色濃いコースです。アイテムボックスとダイヤが、わざわざ取得すべき位置に存在しないため、キリンやシマウマといった先行集団が目立ったミスをしなければ、初期位置がそのまま着順になるでしょう。しかしながら実際には、完璧な走行ができる場合というのは稀です。上手い人でも一レース中に何度か、ダートを踏むなどして、後続に隙を見せる場面が発生するでしょう。時にはアイテム取得派による攪乱も発生します。そうした際に、チャンスをいかして順位を上げるためのテクニックを知っておくべきです。
 本コースにおけるアタックの基本は、地上で失速している相手プレイヤーの上をジャンプで飛び越えるか、失速しながらジャンプしてしまった相手プレイヤーの下を走ってすり抜けるかの二択です。本コースでは、その特性上、原則的に全員が一本の線をなぞるようにして走行することになります。この場合、特に上手い人を後ろから抜こうと思ったとき、他のコースのように、イン側から強引に抜きにかかることができません。横に並んで抜き去るスペースが、そもそも存在しないのです。よって仕掛けられるタイミングは、相手プレイヤーがダートに足を取られるなどして減速した場合に絞られますが、自分と相手は同じラインを走行しているので、そのまま近づいても追突事故が発生するだけです。そこで、ジャンプを利用するわけですが、この際に二つの選択肢があることを把握しておくべきです。
 失速した前方の相手プレイヤーが地上にいる場合、そのまま飛び越せばよいでしょう。この場合、こちらが相手プレイヤーの後ろにベタ付きしているような状況では、反射神経の勝負になってきます。追突するより前に、素早くジャンプを入力できるようにしましょう。
 反対に、失速したプレイヤーがジャンプ中だった場合は、下を通り抜けるようにします。ジャンプ中の相手プレイヤーに地上から接触した場合、こちらの当たり判定の方が強く計算されます。空中で接触を受けたプレイヤーは不時着を起こして失速するため、団子の局面では、これによりトップが一気に最下位グループまで転落することすらあります。攻撃手段が少ない本コースにおいて、これは貴重な攻撃手段であると言えるでしょう。もちろんこの際、自分自身がダートに足を踏み入れ失速してしまう事態には、十分に注意を払うべきです。
 抜き去る際、ジャンプすべきか地上を行くべきかというのは、その場の状況次第です。さらに言えば、一緒に走行するプレイヤーの性格次第でもあります。前方の相手プレイヤーたちを後ろから観察し、ジャンプを連発しがちな走行スタイルか、あるいはジャンプは最小限に抑える走行スタイルかという見極めをしておくのも有効でしょう。慣れてくれば、相手プレイヤーの挙動から、ダートに足を踏み入れそうな兆候を察知し、抜き去る準備を始めるといった戦法も取れるようになってくるはずです。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 ダイヤに関しては、クラウド土地と同様、よほど余裕があるか、反対によほど悲観的な順位状況である場合以外は、取りにいくべきではないでしょう。先のコースではそれでも、取得のロスがほぼ無いという理由から、取ってもよいとされるダイヤがありましたが、本コースにおいては、トップを目指すのならば、ただの一つも取得すべきではありません。

 アイテムボックスについても原則的には同様で、取らないのがベターなのですが、本面におけるアイテムは、取得さえしてしまえば、全コース中屈指の凶悪さを誇るのもまた確かです。全員が決まりきった、ピンポイントのラインをなぞることになるため、バブル以外の全てのアイテムを、比較的容易に当てに行くことができるでしょう。特にバナナが他コースに輪をかけて強力無比であり、黒丸の根元に2、3個設置するだけで、全プレイヤーが取るべきラインが変更されてしまいます。
 といったように、こと妨害においては非常に強力なのですが、残念なことに、取得したプレイヤー自身の順位向上にはあまり貢献してくれないのが、本コースに存在するアイテムの残念なところです。アイテムボックス取得のために迂回し、またその使用に励んでいるうちに、先行集団はさっさと先に進んでしまうことでしょう。一人か二人の順位を徹底的に転落させ、自分が三位くらいになるためには有効かもしれません。確かにマークしているプレイヤーがいて、なるべくスコアを稼がせたくない場合には、それも一つの手ではあります。しかし最終順位を向上させるならば、基本的には一位を狙わねばなりません。やはり無視が無難でしょう。


c.魔法のカップ:*水中*

 路面の左右を格子状の壁に覆われたコースです。路面と壁の間は、赤と白の路肩で隔てられており、この部分は路面より一段高くなっているものの、ジャンプで乗り上げれば走行可能です。しかし、路肩に接触した状態で走り続けると、床の角に突っかかる現象が多発するため、基本的には路面側のインを攻めることになるでしょう。
 本コースの特性として最も厄介なのは、走行可能な道路幅が極めて狭く、一度逆走状態になってしまうと、転回するためにたいへんな手間がかかる点です。そして、道が狭いということは、バナナとロケットによる通行封鎖が発生しやすいということです。そうした特性が想定されたかのように、アイテムボックスがロスなく取得できる位置に、大量に用意されています。以上から、極端なクラッシュと復帰の手間とが連発して、プレイヤー間の距離が開きやすいのも特徴の一つと言えるでしょう。
 

【図Ⅳ-c-1】

●走る際の注意点●

 アイテムボックス周辺における攻防に気を配りましょう。決して逆走状態にならないことを、なによりも優先すべきです。特に(C),(D),(E)の周辺は、コーナーが連続する中にアイテムボックスが散りばめられており、ブラインドバナナが大量発生しがちな地帯です。壁が格子状になっている為、カーブに差し掛かる際、その先についてできる限りの情報を見通しておくのがポイントです。前述の通り、本面において路肩の走行はベターではありませんが、バナナを避けるためにここを通る選択が有効な場合もあります。
 
◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 本面においては、取ることで損になるダイヤはありません。道すがらで取得できるものは、できる限り拾いつつ進むようにしましょう。本コースに限ったことではありませんが、(c),(d)や、(g),(h),(i)といった横並びのダイヤが現れる場面では、前のプレイヤーとは違うラインを走行し、一つのダイヤを奪い合わないようにすると、取り損ねることが少なくなります。
 これら横並びのダイヤは、挽回の難しい大クラッシュに見舞われ、スコア回収に切り替えた際の稼ぎ場としても優秀です。ただ、転回の難しいコースなので、車体をダイヤの配置と同じ向きに切り替える際、少々のコツがいります。コンパクトなハンドリングで、気持ち小刻みに切り返しましょう。

 アイテムボックスについては、(A)以外はとりあえず取得しておいて問題ありません。(A)はアウトコースにある上、直後にロスなく取得できる(B)が存在するため優先順位が下がりますが、(B)を先行プレイヤーに取られてしまう場合には取得を検討してもいいでしょう。
 またこれも本コースに限った話ではありませんが、直後の路面がバナナで埋まっているような局面でアイテムボックスを拾い、万が一バブルを取得してしまうと、ジャンプによる回避が封じられて連続被弾に繋がります。本コースでは(C)から(E)にかけての地帯で、特によく発生してしまう悲劇です。何としてでも取得したいアイテムがある場合は取りに行くべきですが、そうした局面では、あえてアイテムを取得しない選択も考慮しましょう。
 また、(D)から(E)にかけてのS字カーブ地帯では、第Ⅱ章で開設した、ロケットを壁に這わせて死角に打ち込む技が使えます。いざというときの為に、覚えておきましょう。


d.道路カップ:*湾岸道路*

 一周が長く、活用すべき要素が多いため、総合力が要求されるコースです。*クラウド土地*や*Mystic*などのように、絶対的な短縮テクニックがあるわけではありませんが、とにかく突き詰めると、細かい注意点が多くなります。アイテム、ダイヤ、ショートカット、地形と、利用できるものはすべて利用する気構えで挑みましょう。
 ……などというようなことを、いきなり言われてしまうと、どうしてもうんざりとしてしまいますね。すでに本文中で何度も申し上げていますが、一つひとつの要素を、順番にゆっくりと覚えていけば問題ありません。本文の内容を参考に、実戦の中で、楽しみながら習得していきましょう。

【図Ⅳ-d-1】

●走り方の一例●

図Ⅳ-d-2【図Ⅳ-d-2】


 本コースの砂浜には、ダート判定が設定されていないため、減速無しで走行することができます。したがって、上図中【1】および【2】の、内側に砂浜があるコーナーでは、それを突っ切ることができます。この際、路面が砂浜よりも高い位置にあるため、砂浜から脱出するときにジャンプしないと引っかかりますので注意しましょう。しかし上図のライン取りを見ると、【1】のコーナーでは、路面に沿って走行することになっています。これはなぜでしょうか。
 その理由は、ここで路面走行を選択することにより、最大5個のダイヤ取得を狙えるためです。本コースはかなりのロングコースであるため、他のコースよりも顕著に、序盤に上げた最高速が、あとからじわじわと効いてきます。5個という取得可能個数も絶妙で、これは丁度、初期状態から数えて、最高速が2km/h上昇する個数です。
 確かにこのライン取りだと、結果的にアウトコースを攻めることになるため、砂浜を突っ切るより、少なくともその週は遅い走行となります。アイテムボックス(A)も、直進を選択したプレイヤーに取られてしまうでしょうし、実際に直進を選択する派閥もあります。あくまでもこの走り方は一例でしかないということは、忘れないで頂きたいと思います。その中において、本学会報でこのルートを推薦するのは、最高速を上げることで、順位が非常に安定するためです。
 本コースは各アイテムボックス同士の間隔が、比較的広く設定されています。そしてその結果、アイテムの力に頼らず、自力で差を縮めざるを得ない走行時間が多くなりがちです。そうした際に重要となってくるのが、自分と相手との最高速差というわけですね。これは、一周が長く、アイテムボックス間隔が広いすべてのコースで持っておきたい考え方です。なお、三周目は追い上げが必要ならば直進ルートを走行してもいいでしょう。

 次に、活用しがいのある地形の多さについて、知っておきましょう。本コースは、内周側が山、外周側が砂浜になっています。そして、山・砂浜と路面との間には、緩やかに傾斜がかかった路肩の部分が存在します。
 路肩は、走行中に時おり突っかかりが発生するデメリットがありますが、山側の路肩がインコースになる区間では、ここを走行することで先行プレイヤーとの差を詰められる可能性があります。突っかかりを抑制するため、ジャンプを連発しながら走行するのがいいでしょう。
 砂浜は、前述の通り路面よりも一段低くなっています。これを利用して、後方からのロケット攻撃を、路面外へ退出することにより回避することができます。また、この地形にはダート判定が設定されていないため、それ以外のアイテムから逃れたい場合にも、大げさに路面外へ退出するのが有効な場合があります。反対にこちらがアイテムで攻撃する場合には、砂浜側へ逃げられないよう、山側へと追い詰めるようにして使うといいでしょう。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 ダイヤ(g)、アイテムボックス(B)は、【2】のショートカットを断念すれば取得できますが、そこまでして取るべきではないでしょう。ダイヤを回収しつつ、ロケットによる不意打ちができれば強くはありますが、確実に引き当てられるわけではありません。
 それ以外のダイヤとアイテムボックスに関しては、おおむね取得すべきです。ただダイヤ(f)については、アウトコースにあるため、三周目やすぐに抜きたい相手がいるときなど、状況に応じてスルーし、先を急ぐ選択もいいでしょう。


e.道路カップ:*谷*

 左右を高い山に覆われたコースです。そのため道幅がやや狭くなっており、一度逆走状態になってしまうと、転回に手を焼く場合があります。
 また非常に急なコーナーが各所に存在しており、これらは左右の壁によって、完全なブラインドカーブと化しています。その上、アイテムボックスが総じてコーナー手前に設置されているため、しばしばとてつもないクラッシュが発生する恐ろしいコースと言えるでしょう。
 また、谷というシチュエーションに相応しく、路面の所々に傾斜が設定されています。特に、コーナーと上り坂が同時に現れる箇所については、スムーズに突破するコツを知っておくべきです。

図Ⅳ-e-1【図Ⅳ-e-1】

●走る際の注意点●

図Ⅳ-d-2【図Ⅳ-e-2】

 みなさんがこのコースを走行するにあたっては、【1】と【2】のコーナーについて、あらかじめ適切な知識を得ておく必要があります。この二か所は、ともにステージの構成上見通しが利かず、上り勾配と非常に急な角度のコーナーとが一体化した構成になっています。何も知らずに走行すると、傾斜に足を取られて停滞し、酷いときにはそのまま静止してしまうことすらある、魔のコーナーです。極めつけには、両コーナーの手前にはアイテムボックスが配置されている為、バナナが大量に敷き詰められていたり、停滞しているところにスパイクやハンマーなどによる攻撃が飛んでくるなどします。

 まずは、ここを最小限の速度低下で突破する方法を知りましょう。いくつかのポイントを知っておけば、減速を抑えるのは比較的容易です。
 坂道の走行にあたって重要なのは、傾斜に対して角度を付けて、ジャンプを連発しながら上ることです。これは、坂を登る必要がある場面で共通して持っておきたい考え方です。
 【1】のコーナーは傾斜が緩やかなので、ジャンプを連発することだけ実行できれば、おおむね問題なく登ることができます。この際、バナナや他プレイヤーの妨害警戒などといった支障がない限りは、ダイヤ(b)およびアイテムボックス(B)を取得できるようにしましょう。
 【2】のコーナーには急傾斜が設定されており、普通に走行すると大幅な減速を強いられることになります。基本的な突破方法は【1】と同様ですが、直前のアイテムボックス(C)から取得したバブルを割らずに保持することで、有利に突破することが可能です。
 次に、このポイントに設置される、バナナの対策をしましょう。坂道の部分で攻撃アイテムを食らってしまうと、登坂に必要な推進力を失ってしまい、通常の被弾時に輪をかけて、形勢の立て直しにかかる時間が長くなります。そうなってしまわないように、適切な対処の方法を心得ておくべきです。
 アイテムボックス(B)および(C)から両コーナーまでの間に、バナナの設置が確認できた場合、そのバナナの線形をよく確認しましょう。そして、その線形の延長線を予測し、ラインを外して走行するのです。並んでいるバナナがコーナーの内側へ向かって、小さな半径で曲がっていくようならアウトコースへ、反対に外側に大きな円を描いているようならインコースです。バナナが途中で途切れていて線形予測が難しい場合は、アウトコースからコーナーへ突入しましょう。より先まで視界を稼げるようになり、突然バナナに出くわすといった事故が起こりにくくなります。これは【3】のコーナーにも共通して言えることですが、両コーナー共、非常に厄介なブラインドコーナーであるため、内部に仕掛けられたバナナが突入時まで目視できません。ならば、バナナの置かれている位置を予測するか、できる限りコーナー内部を見通してしまおうということなのです。
 
◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 基本的には、ダイヤ、アイテムボックス共に全て取得するのがベストです。ダイヤ(c)のみアウトコースに設置されているため、三周目は無理に取りにいかなくともよいでしょう。


f.道路カップ:*Iceland*

 路肩外に海と溶岩とが広がるコースです。これらの地形はコース外部判定を有しており、これに触れると路面の中央までワープさせられ、速度を0に戻されてしまいます。路肩部分は、コース外部に向かって下がる、傾斜した地形を取っています。この部分は、内周側ならば車体を傾けつつの走行が可能ですが、一方で外周側は垂直に近い、切り立った形状をしており、快適な走行は難しいでしょう。

図Ⅳ-f-1【図Ⅳ-f-1】



●走り方の一例●

【図Ⅳ-f-2】

 内周側路肩の下部、コース外部判定と路肩の瀬戸際を走行するのが基本です。ただし、上図中【1】、【2】、【3】の地点においては、インコースとアウトコースとが反転するため、路面へと復帰するのが良いでしょう。【3】においては、これによりアイテムボックス(D)およびダイヤ(e)、(f)の取得も狙えます。路面からの復帰時は、ジャンプを連打すると素早く登ることができます。バナナで路肩が塞がれていた場合も路面へと復帰するべきですが、復帰ルートすら塞がれていた場合は、溶岩へと飛び込みましょう。前述のワープ仕様による復帰が可能です。
 路肩走行時に注意すべきは、車体が地面に引っかかり、つんのめってしまう現象です。これは走行中に突然発生する現象で、特に、路肩を走っているとよく起こります。通常の走行中であれば、一瞬静止するのみの被害で済みますが、本コースの路肩走行中に遭遇すると、推進力の一切を失い、制御不能となり、そのままゆっくりと溶岩へ滑り落ちてしまいます。
 この走行不能状態は、ジャンプにより解消することができます。可能であれば、走行中常にジャンプを連打するのも一つの手です。しかし、ジャンプをするためには、車体が路肩の傾斜に対して水平であり、両輪が接地した状態である必要があります。したがって、路肩を走行する際は、積極的に車体を傾けるよう動くべきです。具体的な手段としては、中途半端に路面へ退出せず、十分な角度を得られるまで、なるべく路肩に滞在し続けることです。この十分な角度が得られない時間が伸びるほど、致命的な突っかかりのリスクが高まります。
 ひとたび角度を得られても、路面を走っていると、だんだんと車体が元の体勢に戻ってしまいます。なので、路面における走行時間を最小限に抑え、それを維持する角度マネジメントも重要なスキルといえます。
 なお引っかかりを封じる手段は、残念ながら、現状の本学会においては発見されていません。ジャンプを連打することで、一応の抑制は可能なようです。更なる研究が期待される議題のひとつですね。

 次に、本面における、有効なバナナの設置方法について知っておきましょう。大きく分けて、二通りの考え方が存在します。
 一つは、路肩を塞ぐという考え方です。上述した通り、上手い人はおおむね一様にこの部分を走行しますので、そこにバナナを設置します。傾斜に設置したバナナは、水平方向と垂直方向、両方の当たり判定を発揮できるため当てやすく、特に強力です。
 もう一つは、路面中央の、白線に沿わせるという考え方です。しかし、なぜこの部分への設置が有効なのでしょうか。それには、本コースにおける、コース外部判定の仕様が関係しています。海や溶岩に触れると路面へとワープするわけですが、この際の復帰位置が、落ちた地点と同じ進行度の、白線に沿ったラインなのです。
 進行度というのは、画面中、ラップの下に表示されている数字で、スタートからゴールまでの一周を100%とした場合の、現在地点のパーセンテージを表します。この数値が50%の際に溶岩へと落下すれば、同じく50%地点の白線上に復帰するわけですね。
 したがってその際、50%地点前後の白線上にバナナが置かれていれば、落下したプレイヤーは復帰と同時にスピンすることになります。これにより、路肩で被弾し落下したプレイヤーへの追加攻撃を狙えるほか、路肩からは路面の状況を見ることができない場合もあり、路面復帰を狙って自ら溶岩へと飛び込み、罠へかかりに来てくれる場合も考えられます。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 路肩がアウトコースになる場面で取得を狙うのが基本です。ややタイトなライン取りが求められますが、ダイヤ(a)とアイテムボックス(A)は、毎周、両取得を狙うべきでしょう。
 ダイヤ(e)、(f)も、可能なら取得したい所ですが、逃げ切りの局面においては、直前にアイテムボックス(D)があるため、ロケットが後方から飛んでくる事態を警戒して臨むべきです。反対に追い上げの局面においては、ここでアイテムボックス取得に向かうのがいいでしょう。
 その他については、余裕があれば、局面に応じて路肩から出て取得する程度で大丈夫です。


g.ワールドツアーカップ:*エジプト*

 路面上に、壁や出っ張りなどの、大量の障害物が設置されたコースです。全長がかなり長く、またアイテムボックスは取り辛い場所への設置が多い上、設置間隔も広めに取られています。倍ジャンプを積極的に使用できないルールの場合、有効なショートカットも存在しません。
 以上から、逆転要素が薄く、ライン取りが順位に直結する、本作屈指の硬派さを誇る実力派コースといえます。このコースで安定して上位を取れるようになることを、ひとつの目標にするといいかもしれませんね。

【図Ⅳ-g-1】

●走り方の一例●

図Ⅳ-g-2【図Ⅳ-g-2】

 道中のダイヤを回収しつつ、極力インベタで走り抜けます。本コースにおいては、各コーナーを如何にインコースで抜けられるか、そして、ダイヤを如何に取りこぼさないかが、順位に色濃く反映されます。必要な攻略のポイントを、一つひとつ把握していきましょう。
 【1】の地点では、台形のオブジェクトの内側から、ややタイトなラインでダイヤ(d)の取得を狙いましょう。台形の側面にベタ付きで走行し、低くなっているところをジャンプで飛び越えるなどすると、安定して取得できます。
 【2】の地点は、急なブラインドカーブの途中に、通常のジャンプでは突破できない壁オブジェクトが設置されており、これを把握せずにインコースを走行していると正面衝突してしまいます。ややアウトコースに膨らんでコーナーへと突入し、壁の右端を舐めるようにして突破できるとベストです。そのようにここを越えられると、直後のダイヤ(i)およびアイテムボックス(D)に関しても、無理なライン取りをせず、余裕をもって取得できるでしょう。
 【3】の地点は、ほとんど直線に近い、なだらかな左曲がりの線形を描いた区間です。内側に三つ設置された赤と黄色の出っ張りオブジェクトは、ジャンプで飛び越えないと引っかかってしまいますので気をつけましょう。アイテムの陰が薄くなりがちな本コースですが、この地点では、直前に設置されたアイテムボックス(D)に由来する妨害が頻発します。こうした直線的な区間においては、ロケットが特に強力ですので、後方から響く発射音に警戒しつつ走行しましょう。

 ちなみに本コースには、倍ジャンプを活用することで可能となるショートカットがいくつか存在します。壁オブジェクトを飛び越えてインコースをひた走ったり、ダートの中に設置された壁を飛び越え、コーナーを一つカットするなどといった具合です。これらは確実に決められるならば有効な技ですが、確定倍ジャンプの使用については、その部屋のルールをよく確認してから検討すべきであることは、理解しておきましょう。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 ダイヤに関しては、基本的に全取得ポイントで回収するべきです。三周目においては、余裕が無ければ、アウトコースに設置されているもののみ、スルーしてもいいでしょう。

 次にアイテムボックスですが、(D)はできる限り毎周取得するべきです。厄介なコーナーを抜けた先の死角から突如出現するため、慣れるまでは取り辛いでしょうが、本コースにおいては、これが非常に貴重な逆転の手段になり得ます。自分が一位の状態においても、コーナーの途中にバナナを設置できれば、後続へ非常に強力な圧をかけられます。このアイテムボックスを取得できるか否かで、勝率が変わってくるのです。
 (A)は壁の裏に、(C)はアウトコースに存在しているため、スルーして先を急いだほうが賢明な場合が多いです。
 (B)はダートのど真ん中に設置されており、見た通りに活用が難しいのですが、この位置から飛んでくるロケットの奇襲性は抜群です。開幕でここに潜り込みゲリラ戦法を仕掛ける、好戦的なプレイヤーも存在するので注意しましょう。


h.ワールドツアーカップ:*オランダ*

 道の中央に、全三基の風車が設置されたコースです。この部分は道が狭まっているほか、稼働する羽根にも接触判定があり、通過のタイミングが悪いと道が塞がれてしまいます。
 また、大量のダイヤが設置されているのも特徴で、15個という総個数は、全コース中*パリ*と並んで最多数です。

図Ⅳ-h-1【図Ⅳ-h-1】

●走り方の一例●

図Ⅳ-h-2【図Ⅳ-h-2】

 本コース攻略の要は、ダイヤ回収の精度と、風車前後の戦略への理解です。

 一周で10個以上のダイヤを回収できる本コースにおいては、これらを満遍なく取得することで、最終的に最大時速を、初期状態の60km/hから、70km/h程度まで伸ばすことが可能です。一周がそう長くはないコースではありますが、これほどまでに上昇値が大きいと、回収した場合とそうでない場合で、非常に大きな差が現れます。

 次に、風車前後の攻防についてです。上図の通り、※印の位置に存在する風車オブジェクトの直前には、必ずアイテムボックスが設置されています。風車は中央に空いた穴の部分を通り抜けられる構造になっており、この部分のみ実質的な路面の広さが半分程度になっています。これはつまり、ここを走行するにあたっては、必然的に通行ルートが限定されてしまうということです。したがって、近接攻撃系のアイテムにしろ、バナナにしろ、非常に的中させやすく、また被弾もしやすい環境が発生します。
 この道が狭まっている地点に設置されたバナナには、特に注意を払いましょう。風車が画面内に現れたら、羽根と、直下の道を注意深く観察すべきです。このとき直下が封鎖されている、あるいは先行プレイヤーがバナナを引くなどして封鎖されそうな気配があるなら、路面外のダート地帯へ大回りする選択も重要でしょう。風車直下は、直前のアイテムボックスからバナナを引き当ててしまいさえすれば、比較的容易に道を埋め尽くすことができます。しかも全ての風車には、揃って直後にコーナーが控えているので、狭路バナナをなんとか凌いだとしても、すぐにブラインドバナナが襲い来ることになります。これは、アイテムボックスとバナナの距離が近い、一基目、二基目の風車において頻発する現象です。

 風車直下で被弾すること自体にも、他のシチュエーションにおける被弾時とは異なる、非常に重大な危険性があります。この地点で連続スピンし、車体が横向きの状態で停止した場合、再び進行方向へと自力で向き直るのが、非常に難しくなります。道が通常よりも狭いために、車体を満足に転回させるだけのスペースが存在しないのです。しかもこの時、カメラ視点の関係で、風車の外観によって視界が遮られ、車体とその周辺について目視できない状態にもなります。
 こうなった場合、前進と後退を小刻みに切り替えつつ、少しずつの転回を試みましょう。本作におけるギアの仕様から、慣れるまではやや難しい操作ですが、できるようにしておくべきです。この位置で静止し続けることは、順位を落としてしまうだけに止まらず、スパイクとハンマーのいい的にされて、持ち点を吸収されてしまう事態にもつながります。こうした事故は、どれだけ上達してもなくなるということはありませんので、プレイ経験が浅いうちから、よく練習をしておくべきなのです。

 一方で、回転する風車の羽根にも注意が必要です。これは、一定周期で通行範囲に干渉し、障害物と化すオブジェクトです。正面から触れると一時停止を余儀なくされるほか、車体の脇腹を両断されると、突っかかりが発生してやはりロスが発生します。こうなると、近接攻撃の脅威にも晒されることになり、危険な状態が発生してしまいます。アイテムによる妨害要素以外で、本コースにおける順位の変動を、もっとも強くつかさどるのがこのオブジェクトです。
 当たりそうか否かを事前に察知して、前者の兆候があればライン取りを変更して調節するようにしましょう。風車を遠くから見れば、このまま走行した場合、通過と羽根の路面に降りてくるタイミングとが、重複しそうであることを推測できるはずです。そうした危険周期を察知した場合、アウトコースに逸れるか、アウト側のダイヤをスルーしてインコースを走行するなどして、風車に到着する時間をずらすように動きましょう。ライン取りは変えず、ほんの一瞬バックギアに入れるといった操作も有効です。
 また、選択した野生動物によっては、最速のライン取りで走行した場合、最初の風車に必ず衝突してしまうことが考えられます。これについては、ダイヤ(d)、(e)のどちらを取るかによって周期をずらすことが可能なので、使用する野生動物に合わせて、適切なライン取りができるようにしましょう。
 周期の予測に関しては、ある程度の慣れが必要ですが、対戦を重ねれば自然と身についてくるはずですので、そう焦ることはありません。もちろん、意識して練習すればもっと早く身に付くのは言うまでもありませんね。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 上図【図Ⅳ-h-2】中【1】の部分のダイヤ群、(g)、(k)、そして(m)、(n)、(o)は毎周欠かさず取得すべきです。
 開幕直後は【1】の地点において、ダイヤの争奪戦が勃発します。ハンドリングを駆使して、四つとも取得できるようにしましょう。(d)、(e)に関しては、先行プレイヤーとラインをずらして、どちらかを必ず取得する判断力が肝要です。
 (h)、(i)、(j)は、単位取得数が多いので、本学会報においては、三周目以外は狙うべきものと定義します。ただし、かなりアウトに寄った設置であるため、インコースをひた走る派閥もあります。
 ダイヤ(l)は、外れた位置に存在し、かつ単体の設置であるため、よほどスコアに困っている場合以外、取る意義は薄いでしょう。

 アイテムボックスに関しては、おおむね上図【図Ⅳ-h-2】の赤ライン通りに取得を狙うことになります。攻撃性を強く持つ必要がある局面では、(A)の取得を試みるのも良いでしょう。(D)は理解の難しい地点への設置であり、本学会では、このアイテムボックスの活用方法についての議論が望まれています。


i.ワールドツアーカップ:*パリ*

 アイテムの活用術と対策が試されるコースです。アイテムボックスとダイヤとが大量に存在しており、特に前者は、取りやすい位置にのみ設置されています。そのため、しばしば壮絶な妨害合戦が勃発することでしょう。幸い路肩に壁が存在しておらず、いざとなれば路面外へ逃げる手立てもあるものの、ダートの減速が辛めに設定されているため、それにもリスクが伴います。

図Ⅳ-i-1【図Ⅳ-i-1】



●走り方の一例●

図Ⅳ-i-2【図Ⅳ-i-2】

 アイテムボックスとダイヤとを回収しながら、なるべくインベタでゴールを目指すのが理想です。とは言ったものの、実際に対人戦でこのコースを走行すると、十中八九、上図【図Ⅳ-i-2】における赤線のような走り方はできません。それは何故かというと、本コースは、本作の全コース中において最も、バナナによる通行封鎖が多発する地帯であり、その結果、実質的な走行可能ラインが目まぐるしく変更されていくためです。こうした事情から、アドリブ力が常に試されることになります。
 そうした状況を生み出しているのは、大量に設置されたアイテムボックスです。特に(A)および(B)の配置が強力で、(A)からめぼしいアイテムが出なければ、(B)を取得して再抽選するといったことが可能です。これにより、バブルや近接攻撃アイテムの無駄取得が抑制され、直後の道がバナナやロケットで埋まりやすくなります。また、各アイテムボックスが走行上、無理なく取得できる位置に設置されているのもポイントです。他のコースならば、アウト側に設置されているため、先を急ぐ場合には取得を諦めた方が良いアイテムボックスが一つはあるものですが、本コースにはそれがありません。バナナで封鎖されていない限り、毎周適切なライン取りの範疇で取得することができます。
 以上から、バナナをはじめとした、アイテム対処と活用のレパートリーがモノを言うコースであるといえます。これらの情報については、第Ⅰ章と第Ⅱ章にて詳しい解説をしましたので、この項目では説明を省きます。

 その他の特徴としては、ワールドツアーカップのコースに共通する点として、障害物の設置が挙げられます。
 全体に散りばめられた赤と黄色のオブジェクトは、エジプトのそれよりも引っかかりの判定が強いことを把握しておきましょう。ジャンプせずに触れると、その場で静止するほどの強い接触判定を持っています。
 また【2】の地点には凱旋門があり、*オランダ*の風車オブジェクトと同様に、直下の道が狭まっています。アイテムボックス(C)で取得したバナナが届く位置ですので、通行封鎖と、直後のカーブにおけるブラインドバナナを警戒しましょう。
 最後に【3】の地点ですが、ここにはコースにまたがるようにしてエッフェル塔がそびえ立っています。これ自体に接触判定はありませんが、通行する際に視界が塞がれますので、陰に隠れたバナナを見落とさないように注意しましょう。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 ダイヤは(o)以外全て取得、アイテムボックスは全取得が基本ですが、そうはいかない場合が多いのは前述したとおりです。
 これはすべてのコースについて言えることですが、第一に優先すべきは、被弾をしないことです。よってバナナが路面を埋め尽くしているような局面においては、原則的には、無理な取得に走るべきではありません。上手い人のプレイを観察していると、バナナと重なっているダイヤをジャンプで取得するなどといった離れ業を見ることがありますが、これは基礎動作をきちんと身に着け、確固たる自信を持った走行ができるからこその行動なのです。まずは焦らず、確実なプレイを心がけましょう。


j.ラリーカップ:*ヒルズ*

 中央と外周を山に覆われたコースです。そうした構成には一見して*谷*との共通点が見られますが、実際には、道幅が非常に広い、路面に凹凸がある、中央の山に登ることができるなど、同じ山道のコースでありながら、まったくの別物に仕上がっています。
 また本コースは、Speedrunnerの間では聖地のような扱いを受けており、彼らを虜にしていると目される、非常にテクニカルで、なおかつ強力なショートカットが存在します。成功を安定させるためには相応の練習が必要ですが、Speedrunnerの中には、この*ヒルズ*こそが本作の真価であると主張する派閥もあります。それほどまでに、奥の深いコースなのです。

【図Ⅳ-j-1】


●走り方の一例●

【図Ⅳ-j-2】

 上図【図Ⅳ-j-2】の赤ラインは、Speedrunにおいて採用されている走行ルートです。山を登ってコースの中央に無理やり潜り込み、バックギアを駆使して往復することで、ゴール判定と通過地点判定を最速で通過して周回を進めます。
 これは、はっきり言って気難しいテクニックです。山にはダート判定が設定されていないものの、路面よりも多数の凹凸が設定されており、一度これに足を取られてしまうと簡単には抜け出せません。ただでさえ走行が難しい上、あまつさえそこをバック走で走る必要すらあるのです。以上から、この技を対人戦で安定して成功させるためには、十分な練習と基礎動作の習熟が必要です。
 ポイントは、周回判定と、途中経過判定の位置とをきちんと把握することです。本作における一つのコースの一周判定は、①周回判定を踏む ②途中経過判定を踏む の二つの工程を順番に実行することで承認されます。これら二か所の位置が分かっていれば、あとはその二つのポイントをつつがなく走行できるラインを探求するのみです。このライン取りに関しては、アドリブと山の地形への理解が重要ですので、とにかく走り込んで慣れましょう。本コースは、ラリーカップにおける最初のコースであるため、トライ&エラーは容易です。
 走り方の参考に、Speedrunnerの方の動画を見るのも手です。

 これは拙動画ですが、動画時間30秒過ぎから*ヒルズ*の走行が始まります。まずは、後退と前進とを切り替えるタイミングに注目してみましょう。そこが周回判定および通過地点判定です。おおよその位置を把握できたら、シングルプレイヤーモードで反復練習してみましょう。

 ちなみに上手い人が集結した部屋で走ると、マップ中央に複数名のプレイヤーが詰めかけ、前進するものと後退するものが乱立した末、正面衝突をはじめとした足の引っ張り合いが発生します。この場合、そのまま居座って他のプレイヤーを避けつつゴールを目指すのも一つの手ですが、堅くいくなら迂回のルートも存在します。

図Ⅳ-j-3【図Ⅳ-j-3】

 【図Ⅳ-j-2】のルートに自信がない場合、あるいは山頂が混雑していてこれを試みるのが得策でないと判断できた場合には、上図【図Ⅳ-j-3】のような妥協ルートの走行を試みるといいかもしれません。
 このルートでは、最初に山を登るところまでは中央ルートと同様ですが、事故の起こりやすい中央を避け、その周りをぐるぐると回るようにします。三周目のみ、黄色のラインでゴールへと向かいましょう。
 以上は、中央ルートに比べれば若干難易度が低いのですが、それでも山の地形には手を焼くことになるでしょう。実際、高度と勢いの管理が求められたり、タイトなラインでの切り返しが必要であったり、クレバスのように切れ込んだ地形への対処が余分に必要になったりなど、このルートなりの難しさというものがあります。また、このルートを通ってもなお、中央ルートを走行するプレイヤーとの接触事故が発生しがちです。
 したがって、やはり可能であれば、中央ルートを通るに越したことはありません。このコースを走行するならば、いつでも自信を持って挑めるようにしておきたいものです。


k.ラリーカップ:*ラグーン*

 非常に広い路面領域を誇るコースです。路面の方々にはラリーカップ特有の凸凹が存在しており、慎重に走行ルートを見極めなければ、走行中に減速が発生してしまいます。
 また路面外には海原が広がっています。これに落ちると他ステージ同様、道の中央へと戻されますが、この際に、非常に特殊な挙動が取られます。所定の位置へと戻された瞬間、車体が空高く打ち上げられてしまうのです。とはいえ本コースの路面は広く、意図して海側に寄らない限り、本現象は起こり得ません。
 しかしながら、みなさんが本コースで最速を目指すならば、この打ち上げ現象と、きちんと向き合うべきです。なぜでしょうか。それには、本コースにおけるショートカットが関係しています。

【図Ⅳ-k-1】


●走り方の一例●

【図Ⅳ-k-2】

 基本的には上図【図Ⅳ-k-2】における、赤線のルートを通りましょう。ただし、下記にて解説するショートカットに自信がない場合は、大岩の外側を走行することになります。オレンジのルートは、かなりの上級者むけコースです。腕に自信があれば試みましょう。青のルートは、三周目に取るべきコースです。ゴール判定のみを目指す場合、このルートが最短です。

 上図中、【1】【2】【3】のコーナーは、ジャンプを駆使すれば、内側を通り抜けることができます。通常、これらのコーナーはインコースが大岩で塞がれているために通行できません。しかしこの内側、大岩に沿った部分は水深が比較的浅いため、適切な通行方法を取れば、すり抜けることができるのです。

 まず前提として、本コースにおいて打ち上げ現象が発生する原理を知っておきましょう。打ち上げのトリガーは、*Iceland*等と共通しており、場外判定への侵入です。
 では、場外判定とは、厳密に言えばどのような判定なのでしょうか。その答えは、高さ軸の座標です。車両の位置する高さ座標が、コースごとに設定された一定値を下回ると、場外に飛び出したとみなされ、指定座標への強制転移が行われます。この際、例えば路面部分が平坦な*Iceland*では、何事もなく路面上に復帰するわけですが、本コースはこの路面が、起伏のある構造をしています。そのため復帰時に、地中に対するめり込みが発生します。そしてこうした場合、Unityエンジン独特のベクトルが発生し、めり込みの度合いに比例した、上方向への強い推進力が発生するのです。つまり、上空へと強い力で跳ね飛ばされるというわけですね。
 以上が、打ち上げ現象のカラクリです。つまりは、凹んだ部分の、特に深くなっているところに足を踏み入れなければ、打ち上げられることはないわけです。

 なので、大岩の内側を沿うように走行し、深くなっていると思しき場所を避けるか、ジャンプで飛び越えましょう。しかしこの部分の地形は、海面によって隠れているため目視ができません。手探りか、あるいはおおよその場所を把握して仕掛けるしかないのです。これが、この技の難しい所です。speedrun.comにある本作のページにて、記録提出された走行動画が視聴できますので、上位陣の走行を見てみましょう。彼らがジャンプで飛び越えている地点が、深くなっているポイントです。

 この技の難易度はコーナーによって差異があり、難しい方から並べると、【1】【3】【2】の順番になります。
 【1】は比較的簡単で、このショートカットの基本的な原理が理解できていれば、安定して通り抜けることができるでしょう。壁側にべったりと張り付くようにして走行すれば、ノージャンプでパスすることも可能です。
 【3】はやや難しく、シビアな入力が求められます。壁沿いを徹底すればノージャンプでの突破も可能ですが、直後が右方向へのやや急なカーブになっているため、そうすると逆走方向へ飛び出す格好となってしまいます。なので、できれば右方向へ飛び出したいのですが、それには適切な位置でのジャンプが必要です。海中区間を半分過ぎまで進んだところで、前方やや右にジャンプするのが良いでしょう。
 【2】は突破にあたってジャンプが必須であり、直前の下り坂になっている青い地面からジャンプして、左のタイヤを大岩に乗り上げさせて回り込むようなイメージで走行するとパスできます。単体であればそこまで難しくはないのですが、【1】を抜けた後からの流れで実行しようとした場合、難易度が急上昇します。この場合、【1】突破後に一度アウト側へ脱出し、【2】の地点突入時に角度が付くよう調整します。路面の色が土色になる所まで出て、そこから急ハンドルを切るのがポイントですが、この際に難しいのが、ジャンプ操作の直前まで、【2】を目視できない点です。したがって、感覚の習得が重要です。それぞれ反復練習をしましょう。

 ショートカット以外の攻略情報としては、通常の走行時にもジャンプを有効活用することが挙げられます。本コースでは、常に足を取られやすい状態で走行することになるため、空中にいた方が速度が出る場合が多くあるのです。
 【4】は大岩の内側がどうしようもなく深いため、外側を走行することになる地点ですが、この部分の路面はなだらかな上り坂になっており、焦ってインベタを走るとつっかえてしまいます。なので、あえてややアウトコースからコーナーへ侵入し、イン側にズレていくようなイメージで走行するとスムーズでしょう。この時も、ジャンプを連発するのが有効です。
 また、他プレイヤーの頭上に乗り上げている間はスムーズな加速が可能になることも覚えておきたいテクニックです。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 ダイヤを取得して最高速を上げることで、ジャンプの飛距離を伸ばすことができます。これは、ショートカットの成功率を上昇させることにも繋がります。更には通常の走行時においても、凹凸の地形をより多く飛び越しつつ走ることができます。以上から本カップは、他カップのコースに輪をかけて、最高速増加の恩恵が強いカップと言えるでしょう。しかし残念ながら、本コースにおいては取得できるダイヤの数が限られており、効果を実感できるほどの速度上昇は得られません。
 最短コースでは、(a)、(b)or(c)、(d)、(e)、最終周に(i)と取得できます。(e)は、直後のショートカットを試みる場合アウトコースになってしまいますが、これを取得するコースから【3】へと侵入すると、結果的に無理のない姿勢でラインを描きやすくなります。もちろん、取得せず実行するのもアリです。(i)については、ダイヤを大切にするプレイ方針であれば、毎周取りに走るのも良いでしょう。

 アイテムボックスは、最短ルートの場合、(A)、(C)あたりが取得候補です。共にインコースへ飛び込んだ相手を近接武器で仕留めやすい他、ショートカット失敗からの復帰位置を把握し、そこにピンポイントでバナナを仕掛けてしまう、恐怖の戦術も存在します。
 しかし、基本的には道が広いためにあらゆるアイテムが避けられやすく、使い勝手はあまりよくありません。取得するならば、あらかじめ欲しいアイテムと当てる計画を明確にしておくのがベストです。


l.ラリーカップ:*峠*

 緩急の激しい路面に凹凸がひしめく、ラリーカップの総決算とも言うべきコースです。狭路、コーナー、長めの直線といった、非常にアイテムの活用がしやすい地形の手前に対して、アイテムボックスの設置が徹底されており、アイテムの使い方が試されるコースでもあります。以上から、プレイヤー同士の距離が近くなりやすく、接近戦が発生しやすいことは、本コースの特筆すべき点です。

図Ⅳ-l-1【図Ⅳ-l-1】


●走り方の一例●

【図Ⅳ-l-2】

 開幕直後、【1】に誰よりも早くたどり着き、アイテムボックスを確保するべきです。ダイヤに目もくれずインコースをひた走り、真っ先にここへと至りましょう。この前後は、狭路・上り坂・凸凹の三重苦が襲い掛かる、悪夢のような区間なのです。例えばここで被弾して失速した場合、それだけで自力での走行がほぼ不可能になることすらあります。そんな場所に、あろうことかアイテムボックスが設置されています。ここからバナナを引いてしまえば、それだけで後続プレイヤーを半壊させることができることでしょう。また、バブルを引いた場合は、この場所のみ、割らずに保持したまま走行すべきです。バブルの浮遊効果により、凸凹の影響をあまり受けずに走行することができます。とはいえ、スタート位置が後方の野生動物を選択していた場合には、この戦法は当然取り辛くなります。そうした場合は無理に急がず、ダイヤ(a)、(b)を取得するなどしてもいいでしょう。

 【1】および【2】は、本作における、適切な通行方法を知っておかなければならない区間の一つです。ともに凸凹を避けて走行できる場所がほぼありません。下り坂になっている【2】はまだしも、【1】は上り坂なので、一度勢いを失えばそのまま立ち往生も珍しい事ではありません。
 【1】は、ジャンプしながらの走行が基本です。そして、アイテムを取得しないのなら、極力インコースを、特に、右側斜面の根元辺りを走りましょう。斜面の色が黒くなってくるあたりの手前で中央に復帰し、そのままアスファルトの路面へと躍り出るのが理想です。このライン取りの良い所は、位置関係的に、バナナが突然目の前に現れるということが無い点です。アイテムボックスを取得するプレイヤーは、ここからアウト側に膨らむことになるため、必然的に、インコースのプレイヤーとラインがバッティングするまでに、時間がかかるのです。アイテム取得プレイヤーと横方向の距離が開くということは、スパイクとハンマーの回避にもつながります。また一段高い場所を走行することにもなるため、これがロケットの回避に貢献する場合もあります。間違っても、理由なく中央を走行すべきではありません。
 【2】は【1】ほどの脅威はありませんが、やはり走行が困難なほどの凹凸が生じています。そこでこの区間は、やや高めの斜面を、ジャンプしながら走行すべきです。アスファルト区間から、下りルートではなく、左手の斜面を横断するようなルートで抜け出し、そのまま、なだらかに下り方面へと角度を付けつつ走行しましょう。この際、斜面が黒く変色する地点まで到達してしまうと、突っかかりが発生してしまう上、抜け出す機会を失してしまいます。そのため、気持ち早めに路面へと退出するのがポイントです。

◆取得すべきダイヤは?アイテムボックスは?◆
 多少アウトコースに逸れてもダイヤを取得するか、迂回を最小限に抑えるべきかが難しいコースです。最高速を上げると、ジャンプの飛距離が伸びます。本コースにおいては、もっとも厄介な【1】および【2】の区間の有利な走行に繋がるため、ダイヤの収集を怠るべきではありません。
 しかし、開幕直後は(a)、(b)を無視して狭路直行がベターであり、(c)は悪路の真ん中に位置している為、取りに行くリスクが勝る場合が多いでしょう。(d)はダイヤ重視なら取得します。
 (e)~(i)はアイテムを取らない場合は全て取りたい所ですが、この際、後方からの攻撃に注意すべきです。これらのダイヤが位置する【3】の区間は長めのストレートであり、ここではロケットによる攻撃が非常に強力なのです。抜きたい相手プレイヤーが前方にいる場合、アイテムボックス(D)および(E)の取得を検討すべきでしょう。

③対人戦で練習すべきステージは?
「なぜ、ラリーカップの優先度が低いのか」

 冒頭で述べた通り、本章において、上に記載されたカップほど重要です。*クラウド土地*と*Mystic*は、確実に練習して、最短のコース取りを試みられるようにしておくべきです。その他には、*谷*の登坂、*Iceland*の路肩走り、*エジプト*のライン取りあたりは、練習すればするほど、如実に成果へと繋がるためオススメです。ところで、対人戦に特化した練習をする場合、ラリーカップのコースに関しては、後に回してもいいかもしれません。

 本章の冒頭において、私は有用な攻略情報が存在するカップから順に解説する旨を述べました。その考え方でいくと、魔法のカップに関する情報が最も有用であり、反対にラリーカップのそれは、比較的有用ではないことになります。しかしながらそのように言われてみて、ラリーカップの攻略情報を一読したみなさんの頭には、少々の疑問が浮かんだのではないでしょうか。
 実際のところ、ラリーカップを走行するにあたっての、上で解説した情報の重要性は、魔法のカップのそれに引けを取らないほどの大きさを誇ります。知っているか否かで、分かっている人とまともにレースができるか否かが、まったく決定されてしまうような内容です。それなのになぜ、このカップが最も下に記載されているのでしょうか。
 その理由は、*ヒルズ*の内部処理的な不安定さです。このコースは、他のコースと比較して初期化の処理が重いのか、複数人でプレイを開始すると、参加できるプレイヤーと、そうでないプレイヤーとが出てきてしまいます。一応、このコースを終えて、次の*ラグーン*コースまで進むと、おおむね全員が参加できるのですが、最初のコースに参加できたか否かで開いてしまった点差は、もはや如何ともしがたいものです。
 そうした事情からラリーカップは、対人戦において選ばれること自体が少ないのです。なので、まずは他のカップから練習していこうというわけですね。なお本学会においては、ヒルズを全員参加にて、安定してプレイできる方法を活発に研究・募集しています。これは2021年8月現在、本学会における最優先の命題です。


▮Ⅴ.野生動物界の物理法則を知ろう

 「アレ?今なんだか車体がヘンな動きをしたような……?」
 みなさんには、レース中、そんな風に思った経験があるかもしれません。そして恐らくその原因は、本作に採用された物理エンジンから織り成される、独特の物理法則です。本項目では、これからなる現象について、レース中に活用できる情報を、かいつまんで解説します。

①鍔迫り合いの美学
「いさぎよく引いた方が、被害は少ない」

 レース開始直後など、他のプレイヤーと並走の状態になるのは、よくあることですね。ところでそうした状況で、隣のプレイヤーに少しちょっかいをかけてやろうと、横っ腹に体当たりを仕掛けてやるなどした経験が、みなさん一度はあるかもしれません。この状態を本学会では、鍔迫り合いと呼称しています。そしてこの鍔迫り合いの最中、操作感覚と挙動が、時おりおかしくなることがあります。

 他プレイヤーと密着並走した鍔迫り合いの状況で、突如としてハンドル操作が利かなくなり、そのままゆっくりと曲がりながら前進、壁や悪路にぶち当たるまで制御不能になることがあります。この状態になると、ジャンプすることも、満足にできなくなってしまいます。残念ながら、この現象が発生する原因について、確かなことは判明していません。
 この状態から抜け出すにあたって確実なのは、ギアを一瞬だけバックに入れることです。そうすることで、操作不能状態から抜け出すことができます。この際当然、相手の先行を許す格好となってしまうものの、一緒に障害物へと突っ込むよりかは、遥かに被害が少なくすみます。頻発する現象ではありませんが、いざというときの為に覚えておきましょう。

 また、相手プレイヤーの後輪を、自分の前輪で薙ぎ払うようにして当たりに行くと、相手の進行方向を強制的にずらすことができます。アイテム無しで実行できる攻撃手段として、ぜひ覚えておきたい技です。

図Ⅴ-1【図Ⅴ-1】

 自分と相手が、上図のような位置関係になったらチャンスです。赤矢印のようにキー入力をして相手の後輪に、自らの前輪を引っ掛けるようにしましょう。上手くすれば、相手は明後日の方向へと吹っ飛んでいくはずです。これは、アイテムによる逆転要素が薄く、なおかつ接近戦の様相となりやすい*エジプト*などにおいてよく使える技ですが、実行可能であれば、どのようなコースでも積極的に狙っていくべきでしょう。

②車体が斜めに!?
「意図して斜めの状態を作るべき場合もある」

 野生動物たちが操る車体は、傾斜に差し掛かるなどすると、それらに合わせた角度へと傾きます。そのほか、他の野生動物に乗り上げた際にも、この傾き現象が発生します。多くの場合、再び平面を走行すれば、徐々に元の姿勢へと戻ることができるのですが、時おり、たとえ平面に戻ってもこの傾き状態が固定され、片輪走行になってしまうことがあります。そして、この状態に陥ってしまった時は、原則的に素早く通常の姿勢に戻るべきです。

 この片輪走行現象の厄介な点は、ジャンプができなくなる点と、当たり判定が横に広がってしまう点です。
 ジャンプが発動する条件は、両輪が地面に触れていることです。したがって、車体が傾き、接地が片輪だけになってしまうと、必然的にジャンプが封じられてしまうのです。ジャンプができないと、バナナを避けられず、*クラウド土地*などにおけるショートカットもできなくなってしまいます。
 また、車体が斜めになることで、当たり判定もまた斜めになります。現状の学会においては、野生動物の当たり判定は、四角形(■)であると考えられています。これが斜めになると、菱形(◆)となり、通常時よりも、判定が横と縦方向へ広くなってしまうわけですね。これにより、置いてあるバナナへ当たりやすくなってしまうばかりか、通常ならば下を通り抜けられる空中バナナ下を通過できなくなってしまったりと、いいことがありません。

 以上から、一部の例外を除き、片輪走行の状態に陥った場合、できる限り早急に元の状態へ復帰すべきです。片輪走行状態は、バブルのアイテムを割った際に解除されます。それができない場合、傾斜への侵入と退出を小刻みに繰り返すことで、元に戻る場合もあります。また、これは意図して実行する必要はありませんが、被弾してスピンした際にも元に戻ることができます。*クラウド土地*や*Mystic*をはじめとした、ジャンプが生命線となるコースでは、この片輪状態からの復帰が重要となる局面が発生します。もしもの時に、今から備えておきましょう。

 一方で、こうした車体の傾きが、有利に働く局面もあります。例えばラリーカップに存在する凸凹した路面においては、接地面積の少ない片輪走行の方が、比較的安定して走行できる場合があります。また、傾斜をメインで走行する場合には、むしろ車体がその傾斜に合わせて傾いていなければ、ジャンプができません。*Iceland*や*峠*の一部においては、傾斜に突入してから、素早く斜め走行の状態を作り、これを維持する走り方が重要なのです。

③倍ジャンプって何?
「対戦前に、ルールの確認を」

 本作における、ジャンプの手段は三つあります。一つは、キーボードのスペースキー、一つは、コントローラのジャンプボタン、そして最後の一つが、画面上に表示されている丸い鹿のアイコンです。
 これらを同フレームに同時入力することで、ジャンプのベクトル発生を重複させ、通常よりも高いジャンプを発動させることができます。二つを同時に入力すれば二倍、三つなら三倍です。成功判定はかなりシビアですが、これを駆使することで可能なショートカットがあったり、既存のショートカットをより有利に実行できるなどします。ちなみにJoytokeyなど、ボタン割り当てのソフトウェアを使用すれば、2倍ジャンプならば容易に発動できます。3倍ジャンプはクリック操作が必要となるため、狙って発動させるのは、かなり難しい技と言えるでしょう。

 対人戦におけるこの技の使用については、特に公平を期す場合、事前に当事者間でルールを決めておくのが無難です。Joytokeyの使用は有りか、そもそも倍ジャンプ自体を使ってもいいのかといった取り決めを、あらかじめ話し合い、おのおのが遵守するのです。そうしない場合、プレイヤーによって取れる行動の手段に差異が生じることになってしまい、競技としての公平さを欠いてしまいます。
 参考までに、本学会における一般的なルールは、倍ジャンプ有り、Joytokeyによる同一ボタンへの二つ以上のジャンプボタン割り当て無しです。通常のジャンプボタンとは別に、スペースキーのボタンを一つ用意して、それらの同時押しで倍ジャンプを試みる分にはいいわけですね。もしくは倍ジャンプをする場合、スペースキーとコントローラのジャンプボタンを、何とかして自力で同時入力し、この技を成功させています。そしてこれは恐らく、Speedrun.comに記録を投稿している走者間でも共通の、暗黙の了解と言えるでしょう。とはいえSpeedrunの記録狙いならばともかく、一発勝負の対人戦においては、そこまでして高いジャンプを狙うよりは、ひたむきにライン取りへ集中した方が、良い結果を残しやすいようです。例えば、エジプトの壁オブジェクトを、この技で越えるショートカットがあるのですが、これに失敗すると、壁と正面衝突してしまいます。たとえ成功しても、稼げるのはほんの数秒です。1F技を成功させた見返りがこれというのは、どうにも割に合いませんね。

▮Ⅵ.その他

 第Ⅴ章までのどの情報にも属さない、細々とした内容を、以下にまとめました。対戦相手募集の方法から、採用する操作方法によるメリット・デメリットなど、かなり幅広く掲載しています。なので、ちょっとだけ読みづらいかもしれませんが、本学会報もいよいよ佳境です。一気に読むのもいいかもしれません。集中力がそろそろ限界……という場合は、また今度、ここから読み直してもいいですね。

①対戦相手がいない!
「活発に対戦している人とフレンドになろう」

 この学会報を上から順番に、この項目まで読み進めてくださったみなさんは、ついに、対人戦に必要な知識を得たと自負してもいいでしょう。もしかすると、練習も重ねて、ドライビング・テクニックまで身に着けてしまっているかもしれません。しかし、肝心の対戦相手がいないのでは、宝の持ち腐れです。せっかく対人戦の練習をしたのです。生の人間を相手に、戦いたいですよね。

 対戦相手を集めるにあたって手っ取り早いのは、生放送やSNSなどで本作の対戦相手を募集している人と、フレンドになることです。本作は、根強い人気を誇るゲームであるため、インターネットのライブ・ストリームにおいては日夜、学会員、非学会員を問わず、比較的高い頻度で生放送が行われているはずです。そして、そうした配信者たちは、恐らく多くの場合、対戦相手に飢えています。新たな対戦相手を、常に募集しているのです。なので、そうした配信にお邪魔して、名刺代わりにフレンド申請をしてしまいましょう。もちろん、事前に申請を募集しているのか、配信の雰囲気を読みつつ確認を取るのは絶対です。よそ様に迷惑をかけてはいけません!

 こうして本作を愛するプレイヤーとフレンドになれたとしても、舞い上がってはいけません。対人戦の招待を送信しまくるような行為は、多くの場合煙たがられます。フレンドにも、フレンドの生活というものがあるのです。相手からの招待が来るのを待つか、こちらから招待するにしても、節度を持って行うのがいいでしょう。

 ところで、マルチプレイ募集画面において、覚えておくべき便利な技があります。通常、募集画面でフレンドに招待を送れるのは、ホストプレイヤーのみですが、ゲストプレイヤーでも、コントローラのAボタンか、Ctrlキーを入力することで招待画面を開くことができます。もしもみなさんに、たくさんの野生動物フレンドが存在し、別グループの対戦に招待された場合、自分のフレンドに招待を送ることで、より多くのプレイヤーによるレースができるかもしれません。ただこの際、ホスト側が特定のメンバーでの対戦を想定している場合も考えられますので、可能ならば、Steamのチャットで確認を取ってから実行するようにしましょう。

②どの動物を選ぶべき?
「最後尾のライオンにも、きちんとメリットがある」

 勝ちに行くならば、キリンかシマウマを選ぶべきです。この二頭が際立って有利であり、争奪すべき存在です。なぜでしょうか。
 レース開始時の初期位置は、最初に選択した野生動物によって固定されます。具体的には、下図のように配置されます。

【図Ⅵ-1】

 見ての通り、キリンは必ず首位からスタートできるのです。次いでシマウマ、カバ……と、最後尾のライオンまで続きます。したがって実際のところ、キリンが最も有利であるのは間違いないのですが、それ以外の野生動物を選択する場合のメリットも存在します。もちろん、最後尾のライオンにさえ、知っておくと便利な強みが存在するのです。

 初期位置が後方の野生動物でスタートすることで、レース序盤の混戦を回避できる可能性があります。レースの開始直後というのは、各プレイヤー間の距離が近いこともあり、しばしば最初のアイテムボックス周辺などにおいて、大クラッシュが発生します。*クラウド土地*では、ショートカット地点で大渋滞が巻き起こり、地形に足を取られて動けなくなるものが現れるなどします。
 こうした際、例えばライオンならば、先行するプレイヤーの動向を観察し、回避行動に移ることができます。本作には、後方を確認する手段がありません。もしキリンを選択した場合は、レース開始直後、後ろからの脅威に最も強く晒されることになるのです。そしてそれは、後ろから観察できる立ち位置が、非常に強力であることを意味します。
 また、スタート地点周辺のダイヤやアイテムボックスは、大抵キリンやシマウマが取得してしまいます。これらは一度取得されると、一定時間取得判定が復活せず、キリンの真後ろに位置することになるシマウマやサイでは、同じものは取得できません。しかし、サイやライオンであれば、キリンとの十分な距離があるため、彼らが取得したオブジェクトを再取得することができる可能性があります。
 確かに理論上、キリンがベストな走行をした場合、後方の野生動物がどれほど頑張っても最初の順位は覆りません。しかし第Ⅰ章で申し上げた通り、本作で勝利するために重要なのは、事故を起こさないことです。そうした考え方でいくと、対戦環境におけるライオンは実に安定しています。十分に、選択肢に入る存在なのです。

 自分の持ち野生動物を決めておくというのも重要な考え方の一つです。各野生動物におけるスタート位置の微妙な違いは、レース開始直後の動き方の違いとして結実します。特に*クラウド土地*や*Mystic*のような繊細な操作が求められるコースにおいては、初期位置からどう操作し、どう動くのかによって開幕の順位が決定されます。*オランダ*では、風車の周期対策が野生動物によって変わってきます。
 全ての野生動物ごとの”開幕操作感”を把握できればベストですが、実際には現実的ではありません。そこで、自分はこの野生動物という一頭を決めておくのです。そうすることで、常に一定の操作で開幕を切り抜けられるようになります。候補の筆頭はキリンですが、競争率が高いため、毎回選べるとは限りません。そこで、こうした操作感のギャップを嫌い、あえてそれ自体のメリットが少ないカバ、象、サイを持ち野生動物として、毎回同一のキャラ選択ができるようにする派閥もあります。
 そして持ち野生動物を決めておくと、なによりその動物への愛着が湧きます。キャラクターへの愛着は、みなさんの本作に対する思い入れを育み、本作における体験をより豊かなものへと昇華させてくれることでしょう。

③ホストとゲスト
「両者のゲーム性がある」

 ホストとゲストでは、操作感が全く違います。そして、ゲスト側における操作感は、ホストとの回線状況により千変万化します。これは、普段ホスト側のみ、あるいはゲスト側のみでプレイしていると、意外と気づきづらい仕様です。いつもはホスト側でしかプレイしてないけど、突然ゲストで参加することになった場合、あるいはその逆の場合に備えて、両者における操作感の特徴を押さえておきましょう。
 
a.ゲスト側の場合
 その時々の回線状況に応じて、操作感がまったく変わってきます。具体的かつ代表的な例を挙げると、操作ラグの発生、FPSの減少、傾き挙動の変更などです。このうちラグと低FPS化はまず間違いなく発生しますので、最初のレースの数秒間で、その部屋の遅延具合をつかみ、順応できるようにしましょう。

 傾き挙動の変更は、上手く扱えば強力な武器になり得ます。これは、斜面などに突入した際、通常であれば車体がゆっくりと傾くところが、処理の短縮によるものか、斜面に突入した瞬間に車体の角度が変更されるようになります。つまり、通常時間がかかる傾きが、一瞬で実行されるようになるのです。そして、これにはメリットとデメリットがあります。
 メリットは、斜面走行時の安定性増加です。斜面に対して常に、地に足を付けながら走行できるため、必要な時にジャンプを出すことができます。*Iceland*や*峠*のような、斜面走行の多いコースにおいては、これが大変な強みになります。
 デメリットは、不必要な傾きリスクの増加です。傾きが起こりやすくなるということは、片輪走行のリスクが増すことでもあります。また、*クラウド土地*のショートカットは、斜面へと引っかかりやすくなり、難易度が急上昇してしまいます。
 傾き挙動の変更現象が発生するかどうかは、ゲスト側でのマッチが開始されるまでわかりません。もっと言えば、第一レースが開始されて、斜面に足を踏み入れるまで分からないのです。したがってこれもラグやFPSの件と同様に、レース開始後に活用できるかどうか確認するようにしましょう。

b.ホスト側の場合
 一人用モードの時と同様の、スタンダードな操作性と物理法則によるプレイが可能です。傾き挙動の変更現象が適用されていた場合、斜面ベースのレースではゲストに競り負ける可能性がありますが、それ以外は安定して走行できるでしょう。
 しかし一方で、ゲスト側での参加に慣れたプレイヤーからすると、こちらの操作感に違和感を覚えることもあるようです。理想はゲスト/ホスト両方の操作感に慣れることですが、どちら側で走るにしろ、根底にあるのは本学会報で触れたような基礎的なレーススキルです。そこさえ押さえておけば、ホストとゲスト、このどちらの立場に置かれても、十分な立ち回りができることでしょう。

④キーボード?コントローラ?
「ややコントローラ有利、キーボードの強みも」

 本作の操作手段は、大きく分けて二つです。一つがキーボード、そしてもう一つがコントローラですね。両者は単純に入力の方法が違うだけでは止まらない、それぞれ重要な個性を有しています。副題の通り、総合的にはコントローラが有利と結論付けてはいますが、人によってはキーボードの方が操作しやすいということもあるはずです。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。

a.コントローラの場合
 アナログスティックによるハンドリングの微調整が利くというのが、最も大きな相違点です。これにより、*Mystic*や*エジプト*、*ヒルズ*など、細かなハンドリングの差が順位を決定づけるコースにおいて、優位に立ちまわることができます。しかしながらギアチェンジが左スティックの上と下に設定されており、始めのうちは咄嗟に操作できないかもしれません。
 そして特筆すべきは、レース中には関係のない事ではあるものの、マルチプレイヤー募集画面でフレンドに招待を送る操作が、非常に快適である点です。キーボードの場合、マウスでフレンドを一人ひとりクリックする必要があるところを、ボタンとスティックを交互に入力するだけで済んでしまいます。これは、数名を招待するだけならそう変わらない労力差かもしれませんが、野生動物フレンドの規模が数十名まで膨らむと、非常に重要な事柄となってきます。もしみなさんが最終的にキーボード派に落ち着いたとしても、招待の際のみコントローラを使用することを、強くお勧めします。

b.キーボードの場合
 ハンドリングとギアチェンジの操作がWASDに集約されています。そのためハンドリングについてアナログスティックのような微調整は効かず、コーナリングの調整は、AもしくはDをチョンチョンと何度も押すことにより行う必要があります。しかしギアチェンジに関して言えば、ハンドリングと紐づけられた操作感で実行できるため、コントローラのそれと比較して、直感的な操作が可能です。
 この操作方法において最も厄介なのは、アイテム設置がCtrl(左)に設定されている点です。位置関係上、小指で押すことになりますが、慣れるまでには時間を要することでしょう。ジャンプキーはスペースボタンに設定されています。右手で入力すれば、特に問題なく操作できるでしょう。

画像31

 以上を表にまとめるとこのようになります。どちらがみなさんに適合しているかどうかは、みなさん自身で両方に触れて頂き、判断して頂くより他ありません。どちらか迷ったらコントローラがお勧めですが、用意ができないからといって、本作のプレイを諦めるべきではありません。実際には、両者の差は微々たるものであり、キーボードでも全く構わないのです。Speedrun.comの上位プレイヤーにも、キーボード操作を愛用する方はいます。大事なのは、日々の鍛錬と、本学会報で述べているような知識の集積です。

◆◇◆◇◆◇◆


【コラム:公式対戦環境を想定した、公正なレースルールの考察発表】
 本学会においては、日夜様々な議論が交わされています。それは本作の物理法則に関する、実践的な知見からの考察であったり、あるいはコード解析面からのアプローチであったり。新走法の開発であったり、時にはバグの報告と検証であったりもします。
 そうした中で、我々が活発に議論した話題の一つが、まだ見ぬ”公式戦”を見据えてのルール制定でした。これは、本作に含有されたやや極端なゲームバランスをできる限りなだらかに均し、公正公平なレース環境を制定。いつかあるかもしれない公式戦に備えることを目的に発起された議題です。
 以下は学会員によってまとめられた草案の一つですが、もしもみなさんが本作の大会を開催する場合、これを参考にルールを設定してもいいかもしれませんね。
1.人数が多いマッチの場合(3~6名)

【レース前の準備】
 事前に抽選を行い、プレイヤーそれぞれに1~6の番号を決定

【ホストとゲストについて】
 番号が1のプレイヤーがホストとなる

【選択野生動物について】
 番号が1のプレイヤーから順番に、2、3……と野生動物を決定する

【選択コースについて】
 ラリーカップを除いた3カップを順番にプレイする

【最終順位に付いて】
 3カップの総合得点で決定する


2.1vs1の場合(2名)

【レース前の準備】
 特に無し

【ホストとゲストについて】
 A案:各カップについて、ホストとゲストを変更して一回ずつプレイする
 B案:各カップごとに抽選を行い、ホストとゲストを決定する
 C案:最初のカップ開始前に抽選を行いホストを決定、
    以降1カップごとにホストとゲストを変更する

【選択野生動物について】
 常にゲスト側が最初に選ぶ

【選択コースについて】
 A案:ラリーカップを除いた3カップを順番にプレイする
    (どちらか片方がヒルズに入れない場合)
 B案:全4カップを順番にプレイする(両者ヒルズに入れる場合)

【最終順位について】
 プレイした全てのカップの総合得点で決定する


◆◇◆◇◆◇◆


▮おわりに
 本作は、楽しいゲームです。一つのマッチごとに、駆け引きがあり、熱さがあり、悲しみがあり、情緒があり、ドラマがあります。とはいえ、アイテムを思った通りに当てられた時の痛快な感情や、難しいショートカットをうまく決めて先行プレイヤーを抜き去ることができた時の、飛び上がりたくなるような喜びは、もしかすると、本作だけで味わえるものというわけではないのかもしれません。実際に、本作の要素を一つひとつ取り出して観察すると、実に凡庸なものが多いのです。
 しかし、それでも本作には、本作だけが持つ、不思議な魅力があるのです。サイケデリックな世界観やインパクトに満ちたゲームバランスは当初、人々に嘲笑と苦笑いとで迎えられた側面があります。しかし我々は本作をプレイし続けるうちに、それらは決してあざけ笑い、一過性の楽しみとして消費するような要素ではなく、本作を構成する重要なものであることに気づきました。道化の仮面を被って現れたこの『野生動物のレース』という作品には、極めて緻密で、硬派で、誠実な、ゲーム作りに対する心意気が内包されていたのです。陳腐を寄せ集めた内容にも関わらず、まったくそのように見て取れないのは、決して奇抜さに振り切れている為ではなく、本作の製作者であるPaul Bird氏が、本作をひとかどの作品に仕上げようと、真摯に製作へと励んだ、何よりの証拠なのではないでしょうか。だからこそ我々も、真剣に本作と向き合えているのです。

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