自動運転車の普及に向けた課題

自動運転車が世間一般に広く普及するには3つの課題があります。

①規制

自動運転は、社会と規制が認める形で、かつ安全性を持つように実装されなければなりません。規制はよく見落とされる要素です。現状の法規制は人間のドライバーを想定したものとなっていますが、自動運転の安全性と実用性を社会に受け入れられる形でバランスよく成立させることが課題と言えるでしょう。

具体的にどのようなところから社会実装を進めていくのが容易かを考えてみると、個人が所有する自動車よりも、企業が所有するロボットタクシーに対する法規制の方が簡単ではないでしょうか。企業の場合は、ユースケースや地域ごとに限定されたライセンスを発行すれば済みますが、一方で消費者に自動運転のライセンスを発行する場合は、現在ある複雑な法律や規制を最初から見直す必要があります。

自動運転が実現するためには、規制と技術がある程度成熟するまで待つ必要がありますが、自動運転を規制するというのは、考えてみると非常に難しいことです。例えば、自動運転車が交差点で道を譲るべきなのか否かを問われたとき、それが人間であったとしても異なる答えを出すかもしれません。そのため、「誤り」の明確な定義はなく、解釈の余地があったり、事後的な判断に左右されたりするということは十分に想定されます。

すべての自動車ドライバーは歩行者に対して注意義務を負っており、自動運転車も同じ基準に従う必要があるのは当然です。単純に考えてみれば、自動運転車は人間のドライバーよりも安全であるはずです。しかし、規制というものを考えた時には「より安全」であることが常に良いというわけではありません。現状の社会では「合理的なリスク」が何であるかを決定することによって、安全性と実用性のバランスを取っています。これは、自動運転を認可する際に規制当局が直面する問題となります。

②正確な地図の更新

自動運転を成立させるためには、非常に詳細で正確な高精細地図を作成し、その地図を継続的に更新し続けるということが課題となります。こちらもロボットタクシーであれば運転領域を限定することができるので、実現が近いと考えられます。消費者向け自動運転車の普及には、地理的な囲い込みのある地域だけでなく、どこでも、そして多様な環境で安全に運転できる能力が必要です。

③コスト

カメラ、レーダー、ライダー、高性能コンピューティングを備えた自動運転システムのコストは、現在数百万円程度です。このコスト感は、運転手のいないロボットタクシーモデルなどの運用には許容範囲ですが、一般消費者にとってはあまりにも高価です。消費者向けの自動運転車が普及するためには、自動運転システムのコストを数十万円レベル、つまりこれまでのコストよりも一桁低くする必要があると考えられます。自動運転車は、安全でありながら手頃な価格である必要があります。

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