わたしのがっこう 1.序章《セミ男》
今年は567の影響に依って6月、7月と休業することとなりました。
その間は庭の片隅に小さな畑を作ったり、滞っていた自分自身の仕事の準備をしたり、読めずにいた本を読んだりしました。
中でも庭で何かをじっと観察したり、ぼんやりと考えたりする時間を持てたことはとても貴重でした。
肌寒い7月が終わり、8月に入って仕事が再開すると同時に夏が突然やってきました。毎日のように最高気温が更新され、それまで存在を感じることのなかったセミたちも一斉に鳴き始めました。
大谷石で周りを囲まれた倉庫が仕事の作業場なのですが、働くのに良い環境とは言えず、壊れていた2階の空調を昨年に直してもらうまでは夏も冬も非常に過酷な場所でした。空調の効かない1階での作業では、今年も軽い熱中症になりました。
年の半分ほどは、そこで結構孤独な作業を続けることになっています。
そんな8月の暑い日に、作業をしながらフと思いました。
「オレはセミだったんだ」と。
土に潜っていた時間が長かったのか短かったのかは捉え方次第ですが、地中より出てきたセミに残された時間は本当に僅かです。そう、僅かな時間。
空を飛ぶ前にうまく羽化できないかも知れないし、他の動物に食べられてしまうかも知れません。
「わたしのがっこう」を始めよう、と思いました。
以前から頭の中にあったイメージの断片を組み合わせ、ここから根気強く繋げていこうと考えました。アイディアのヒントは探せば周りに沢山あります。
自分の中にあるのは、ささやかな経験という道具と、まだ若干柔軟性を残している想像力くらい。ほぼ何も無いところから、良く言えば身軽に始められます。セミ・ビギナー(準初心者)として。
土に潜っていた数十年が、良き栄養となりますように。
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