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草間彌生のアーティストトレース

次回のアーティストトレースは、5〜6月にかけて、草間彌生の対話型鑑賞と戦略トレースを行います。

言わずと知れた超有名アーティストですが、その表現がどのような議論を巻き起こし、どんな解釈を生み出していたのかを体感している人は多くないのではないでしょうか。ぼくもその1人でした。

直島の赤いカボチャのようにアートアイコンになっている草間彌生の作品に対して、もはや一つの記号としてスルーしてしまっていた自分がいました

一方で、ハラミュージアムアークで経験した「ミラールーム(かぼちゃ)」は、一面を黒のドットで埋め尽くされた部屋の中にある筐体の小窓を覗くと、鏡によって無限にひろがるドットの世界にめまいを覚えた感覚が、いまも身体のなかに残っています。

2012年のテートモダンでの個展の写真がこちらに掲載されていますが、これを見るだけで、皮膚がゾワゾワと粟立つような感覚が起こります。

アーティストトレースでは、多くの人がその名を知っているアーティストをとりあつかっていきます。そのなかで真っ先に候補にあがった草間彌生について、リサーチをしていくとさまざまに面白い観点が浮かび上がってきました。

病理との繋がりから考える草間彌生

草間彌生さんは、幼少期から統合失調症があったとされ、10歳の頃から幻覚で見る水玉などを反復して描いていたとされています。しかし、精神病理と彼女の創造性をつなげて語ることがよいことなのか?といった批判もあります。

草間彌生さんの研究をしている中嶋泉さんは、この病理を背景とすることで、神秘的で特殊な能力をもった「普遍的」芸術家モデルへと、草間彌生さんが描かれるようになっていると言及しています。(上のYouTubeで、59:00頃から、中嶋さんのプレゼンが見られます)

病理を前提に見るべきなのかどうかも含めて、思考をゆさぶる作家です。

絵画・彫刻と体験型アート

50年代にニューヨークで平面作品やソフトスカルプチャーと呼ばれる布による彫刻を作成していただけでなく、鏡をつかったインスタレーション作品もすでに発表されています。

そうした活躍ののち、60年代には平和・反戦運動として水玉模様を裸の男女にボディペインティングするパフォーマンスを公共空間で行うなど、「ハプニング」を展開しています。

その後、90年代になると体験型アートが隆盛するなかで、草間彌生の空間的な作品・パブリックアート作品が広く展開されていきます。その時代の流れと、草間彌生さんに対する世間の受容のプロセスもまた、非常に興味深い点です。

ジェンダーの視点から考える草間彌生

初期の頃から、草間彌生作品には「男根」がモチーフになっていました。ソファにびっしりと生えた突起物は、男性の性器を象徴しているとされています。セックスへの強迫観念が可視化されたこれらの作品に、草間さん自身がヌードで横たわるポートレート写真があります。

この写真の背景には、当時のニューヨークでアジア人であり女性がアート界で活躍することが難しかった時代に、日本人であり女性であるというアイデンティティの問題にどのように向き合っていたのか。この視点からも様々な解釈を生み出すことができるはずです。

アーティストトレース #草間彌生 5/29開催

こうした観点から、草間彌生さんの活動をとりあげてみたいと思います。

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