Here's diazepam we can each take half of ー宇多田ヒカル「BADモード」とケア資源

遊びつかれた土曜日の夕方、キッチンに立った。カレー粉とケチャップに味を馴染ませたチキンをグリルしようと、テレビをつけて子どもたちには「おかあさんといっしょ」をみてもらう。妻は生協のウェブサイトで食材を注文する。

ぼくは宇多田ヒカルの新しいアルバムを聴いていなかったなと思って、「BADモード」を流す。

表題曲「BADモード」を聴きながら手が止まる。

なだらかなイントロから、宇多田ヒカルの「はぁ」というため息をはさんで軽快な四つ打ちとリフレインが始まる。

「いつもやさしくていい子な君が調子悪そうにしているなんて」からはじまり「そっと見守ろうか?それとも直球で聞いてみようか?傷つけてしまわないか?わかんないけど君のこと絶対守りたい 絶好調でもBADモードでも君に会いたい」とサビを歌い上げたあと、間奏が始まる。

そこで「here’s a diazepam we can each take half of」と詞が重なる。

もう一度曲を流しながら調べてみたら「diazepam」とは抗不安薬のことで、それを半分こしよう、と呼びかけていた。

子どもたちは、「おかあさんといっしょ」の音楽を聴きながら踊って楽しそうにしている。それを傍目に、なんてケアの歌なんだろう、と思う。ケアすることがされることである。それがお互いの抗不安薬になる。チキンをフライパンに並べながら、涙が出そうになる。

この詩から、ふと「ケア資源」という言葉が思い浮かんだ。

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