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アートの探索遠足#009 詩と描画による対話型鑑賞

こんにちは、臼井隆志です。今日は、対話型鑑賞イベントのお誘いです。「アートの探索遠足」と題して、オンラインでの対話型鑑賞イベントを毎月開催しています。

妻の第二子出産のため、9月10月はお休みをさせていただいておりましたが、11月から再開します。

今回は、詩の対話型鑑賞を、"描く"行為を加えたかたちで実験します。

これまで、この対話型鑑賞イベントは主に言葉を通じて行ってきました。しかし、この2ヶ月、いくつかの論文を読み、発表を聞き、ワークショップに参加したことをきっかけに、言葉以外のメディアを用いることで、より深く作品とインタラクションできるのでは?と考えました。ちょっとした実験企画に、ぜひ遊びに来てください。

開催概要
日時 :2020年11月28日(土)13:00~14:30
会場 :ZOOM
持ち物:紙とペン(複数色あるとGOOD)

参加をご希望の方は、このマガジンの購読もしくは記事単体でご購読のうえ「参加方法」の部分にお進みください。

詩を聞いて思い浮かんだものを対話する

今回のメインの活動は、以下のようなステップでの進行を考えています。

① ある詩を目を閉じて耳で聞く
② 詩を聞いて思い浮かんだものや風景を、オノマトペ、メタファーなどを用いて書き出してみる。言葉で説明しづらいものは線や面で描いてみる
③ そうして描かれたものを、対話を通じて交換してみる

と、こんなかんじのシンプルな活動です。

そのまえに、最初にゆるやかなイントロとして以下のような問いについて考えてみます。

あなたが普段行っている表現活動はなんですか?(表現活動とは、絵画や演劇といった創作表現のみをさすものではなく、場づくりや料理、文章を書くこと、twitterやinstagramをすることなども含みます)」

そして、メインの活動を行います。

その後のふりかえりの活動では、詩の主題について考え、もしも自分がその主題を扱うとしたら?という設定で、思考をめぐらせます。たとえば下のような問い。

この詩があなたに問いかけたものは何ですか?それはどんな言葉で表現できますか?

もし同じ問いを、あなたが普段から行っている表現方法を用いて表現するとしたら、どんな表現になりそうですか?

ふりかえりなどをふくめて、90分かけてのんびりとやってみたいと思っています。

[ここから先は、ご興味のある方のみお読みください!企画の背景にある考え方のご紹介なので、ネタバレしたくない方は「参加方法」までスクロールしていただけたら!]

どうすれば私たちは作品から深いインスピレーションを受けることができるのか?

今回の実験の企画には、いくつかインスピレーションの源になっているものがあります。

まずひとつは、CULTIBASE labのなかで運営している「アートゼミ」で、創造性の認知科学の研究者である石黒千晶さんの発表を聞いたことです。

このなかで、石黒さんは、アートから触発されるためには、他者と自分の両方の視点(dual focus)が必要であるとしています。他者としてのアーティストの表現を見ながら、自分自身の表現を省みる、ということです。

これまで対話型鑑賞イベントでは、アーティストの表現に対して、思ったことや感じたことを語っていました。石黒さんの発表を聞いて、対話型鑑賞に「自分の表現との比較」という活動を導入してみるとどうなるのだろう?という問いがぼくのなかに沸き起こりました。

その結果、上のようなイントロと振り返りの活動を試みたいと考えました。

「コトバ」以外のメディアを用いる

もう一つは、アートによる組織開発について様々な文献を調べているなかで、創作行為を行うことで、人の「知覚シンボルシステム」に影響を与えるという考察を目にしたことです。

知覚シンボルシステムとは、ざっくりいうと、人は言葉で物事を記憶しているのではなく、身体的な知覚情報(色合い、匂い、手触りなど)を通して記憶しているという考え方です。

たとえば、バーガーショップの店員に"ちょっと困ったお客さんとの接客シーン"を「漫画」で描いてもらうという実験調査した論文がありました。漫画を描くという行為を通じて、絵やコマ割りなど、いつもと違った感覚で「接客」をとらえなおします。そうすると、困ったお客さんへのより良い対応をするようになると結論づけられています。

論理的・分析的な「コトバ」で物事を解釈するだけでなく、描いたり演じたりしてコトバ以外の知覚を用いることで、別の解釈が生まれ、その解釈によって新しいアイデアが生まれたり、その知のあり方が深化するというのです。

オノマトペとメタファーの可能性

漫画で描く以外にも、さまざまな表現方法を用いることで、普段と異なる知覚で情報を解釈することができそうです。

青山学院大学の鈴木宏昭教授は、こちらの論文で「オノマトペ」や「わざ言語」の可能性に注目されています。

オノマトペは、ぼくたちも日常的に使う「ワクワク」「ざわざわ」「ぺたぺた」といった言葉です。触覚や感情を表す時に用いられます。

「わざ言語」とは、伝統芸能の稽古のシーンなどで用いられる言葉です。「ひざをやわらかく」とか「天から舞い降りる雪を受けるように」といった言い方での比喩表現を示します。体の動きを具体的に支持するのではなく、メタファーを用いて相手の中にイメージを喚起させることをねらいとしています。

こうした論文を読む中で、描画、オノマトペ、メタファーといった表現方法を用いることで、普段と異なる仕方でアート作品に近づくことができるのではないか?と考えました。

身体感覚を想起させるために最適な「詩」は何か?

さて、ここまでぼくが今回の企画をつくるにあたって参考にした考え方をご紹介してきました。こうした知見を参考にしながら今回鑑賞するために選んだ詩は、オノ・ヨーコの「グレープフルーツジュース」の一編です。

オノ・ヨーコの作品は、ぼくたちの身体に対して、不可能なことを含む要請を容赦無くしてきます。その不可能性をイマジネーションの力で引き受けてしまうのが、ぼくたち観客がもつポテンシャルだと感じています。このヨーコの深い要請を、インスピレーションとして受け止めることができるのか。チャレンジしたいと思っています。

と、ここまで長たらしく書いてきましたが、かしこまってご参加いただく必要はありません。のんびりとアートを鑑賞するために、ぜひお気軽にご参加くださいね。

参加方法

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¥ 800 (数量限定:残り 3 / 5)

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