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連載:都市空間生態学から見る、街づくりのこれから

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2015〜2020年にかけてNTT都市開発・東京大学Design Think Tank(DTT)・新建築社の3者で行われた共同研究「都市空間生態学」の紹介と、それに紐づく「いま考… もっと読む
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#建築

「温度あるデータ」とは何か?|都市空間生態学から見る、街づくりのこれから vol.3

文:木内俊克 今回から3回にわたって、都市空間生態学の研究が発足した当初からテーマとして扱ってきた「温度あるデータ」について取り上げたい。これが掘れば掘るほど面白い、実に奥深いトピックなのだ。 ここでは温度という言葉を用いているが、つまりは人びとが感覚や感情で捉える様々な情報のことを指している。こうした一見ふわふわと捉え所のないようなものを、我々はどのようにデータとして扱い、記録し、視覚化し、そして街に住まう人びとに還元できるのだろうか? そんな問いを出発点に、まずは「温

都市空間生態学から見る、街づくりのこれから vol.2

文:木内俊克 誰が・何がまちをつくるか 「街づくり」というくらいだから、まちはつくられるものだ。でも「誰が」まちをつくるのか、その主体について深く思いえがくことは、あまりないように思える。街づくりのこれからを勘案するにあたって、まずはその主体について考えてみたい。 まちで暮らす住民が主体だという声がまずあがりそうだが、大規模な建物を企画しているのはデベロッパーであり彼らの影響が大きいという声も聞こえてきそうだ。とはいえ建物そのものは設計者が設計していて、その良しあしが重要

都市空間生態学から見る、街づくりのこれから vol.1

文:木内俊克 2019年までの5年間、いわゆる街づくりをテーマとした、NTT都市開発・東京大学Design Think Tank(DTT)・新建築社による共同研究「都市空間生態学」を担当していた私は、実に多くの方々とお会いしては、まちについてお話する幸運に恵まれた。それで分かったことがひとつある。元々、街づくりに答えなんてないのだ。 研究の根底には、人や物事が互いに影響し合って成り立っている相互依存的なネットワークとしてまちを捉えてみよう、その仕組みを捉えてまちを活性化す