真っ白でツルツルの恋愛脳

男の人に愛された時の記憶が私にはない。愛されたことがあるのは覚えているのだがそれがどんな感覚か思い出せない。ぽっかり穴が空いているとか、トラウマで記憶がシャットアウトされているとかそんな大それたものではなく。あえて例えるなら、つるりとしたの脳みそみたいな感じだ。綺麗でシンプルだから問題も起こらない、でも、シワがなかったら表面積が少なくなるぶん情報へのアクセス数は俄然少ない。


愛があったから生まれたものがしっかりとした形を持って存在するのだから絶対にその過去は存在しているはずなのに全然意味がわからない。


夜、台所でブーっと静かに動き続ける冷蔵庫の角に焦点を当てる。真っ白でツルツルしてて私の恋愛脳のよう。一点を見つめながら15年前にタイムスリップしてみる。彼が連れて行ってくれたブルーベリーパンケーキのお店、そこで熱く交わした理想の社会像(確かあの頃は物々交換交換が良いと私は唱えていた気がする)、どれだけ人にオープンになれるか挑戦したい、そんな挑戦を受けてくれる相手を探したい、理想のソウルメイト。周りの時間が止まる感覚、話に夢中で冷めてしまったコーヒー、別れた後も人生の戦友を見つけたおかげで寂しくない。これは全て私の脳で起こっていることで感情ではない。全然味がしない。

初対面の人からは昔の旦那への愛が深くて次の人が見つからないと思われる。でも違う、全然違う。

いつかなくなる者にお金も時間も奪われたくないだけだ。


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