情報システムというお仕事

情報システムの仕事に従事すること20年
いやはやこんなに続くとは思ってもいなかったが、
これ以外の仕事に就くことはもっとイメージしていない

ITなんて言葉も段々と使われなくなって、
世間はすっかりAIに夢中のようだ
AIが何かもわからずに、まるで天才スーパーヒーローのような扱いだ
その上、効率化、残業削減、適正人員ともっともらしい言葉を並べて、
AIを神のように崇め始めているではないか

本来、我々より上の世代において、AIと言えば、
飯島愛か、愛川欽也か、哀戦士か、電影少女アイ、卓球少女愛ちゃん
の方が、よっぽど馴染みがあるのではないだろうか

それはさておき、自分も経験したが、『ひとり情シス』なんて言葉があるように
小さな企業であれば、情シス担当がひとり、なんてこともあり、
情シスというお仕事が、多少なりとも一般的になっているものと思われる
そうはいうものの、情シスになりたくて情シスを目指しましたなんて人が、
皆無であることも事実
ほとんどの人が、成り行きで情シス担当になっていたり、
自分のように新卒から情シス一筋ですなんて人には会ったこともないが、
そんな私でさえ情シスになりたくてなったわけではない
情シスとはそんな職業だ

実際にはどんなお仕事かというと、
これは組織規模によっても大きく異なるのだが、
初歩的なところから言うと、PCの調達、キッティング、管理、サポートデスクなどだ
これは大小問わず、どんな規模の情シスでも行っている業務と言える
場合によってはアウトソーシングしていて、管理のみを行っているケースもある

そして、それらのPCを有効に活用するために必須なのがネットワーク
中規模以上では、ネットワーク技術者が別にいるくらい、奥が深く、
スキルを要する業務なのだが、小規模では、これも情シスの業務の一つ

更にそれらを土台に業務を整然と進めるために必要なのがシステム
規模によって、自社開発のため開発部門があったり、
開発に関してはアウトソースで、選定、導入、管理を担っているケースもある

ひとり情シスでは、これらの業務をすべて一人でこなさなければならない
昨今、社給のスマホや、タブレットなんかも普及してきており、
こんなものの管理もしなければならなかったり、
電話や複合機もネットワークと親密な関係になっているおかげで、
良くわからないので、情報システムに任せます!状態になっていることも多々ある

情報システム歴20年の私が、どの領域の情シスを担ってきたかというと、
少なくとも上に書いたことは全部だ
タイピングとちょっとしたプログラムができる程度の学生だった自分が、
20年かけて磨き上げてきたとは言い過ぎで、
好きでもないものを仕事として、向き合ってきたレベルだが、
それでも20年という時間は職業人生の約半分を費やしてきたわけ

当然、地道にいろんなスキルを積み上げるために、多くのことに
チャレンジし続ける必要があるのだが、
業務を円滑に進めるため、効果を最大限にするために必須なスキルは、
コミュニケーションスキルだと思う
何も、誰とでも仲良くしようとか、分け隔てなく協力し合おうとか
そんな夢のような関係性を築く必要はない
適度にオープンで、適度な距離感を保ち、適度な威厳を持つ

ある時は、いろんな意見を聞き取り、ある時は、自らの専門性で決定し、
ある時は、徹底的に拒否する
それができる立場を社内に築くことが何より大事
嘘でもいいから、情シス抜きにしてうまくいくことなんかないからねーという
雰囲気を社内全体が持ってくれるように仕向ける
極力、自分では拳を上げず、ナタも振らない

また、情シス部門、担当者は、社内組織でありながら、社内の第三者であり、
社内外の間を取り持つ立場でもある

と言うのも、システム開発、導入において、基本的には所管部署が先導し、
業務改善のために、選定から進めていくことになるのだが、
どんなシステムを導入する際にも、セキュリティ、ネットワーク、システム間連携、動作環境など情シスが関与しなければならないところがたくさんある
この際に重要なことは、導入を目的にしないこと
あくまで、社内の諸条件に適合するか、もしくは、適合させられるか

良くある事案として、業務改善をするためにシステム導入をすることを
検討してきていたつもりが、導入準備においては、現状の業務に、
どうやってシステムを適合させるかという話に移り変わってしまうこと
ある一定のレベルであれば、システム側に手を入れることは必要であるものの、
話が進んでくると、あれができない、これができないと、いつの間にか、
現状業務の維持が目標のようになりかねないケースが多々ある
そして、所管部署と開発ベンダーの間で、要件の実現の可否、再見積もり、
カスタマイズの実装とフェーズが進んでいくのであるが、
容易にカスタマイズを増やしていくと、開発コストは爆あがり、運用開始時期は後ろ倒し、挙げ句の果てに、上がってきたシステムは、やれエラー、やれ考慮不足の
デスマーチ
お互いに、時間と精神力を削り合い、結果使えないものが生まれ、
そんなはずじゃなかった、言った言わない、配慮が足りないなどと、
客であることをいいことに言いたい放題になって収拾がつかなくなる

そうなる前に、我々が、第三者的な立ち位置で、システムが業務にマッチしているのか、
業務にシステムをマッチさせるのか、カスタマイズはコストに見合っているのか、
考慮に抜け漏れはないのか、要件の技術的難易度はどの程度なのかなど、
所管とベンダーの双方が、目標地点に、できるだけ短い道のりで進められるように
仕向けていくと言う、縁の下の力持ちのような、コンサルのような、お節介のような、そんなことをしていかなければならないのが、情シスの大事なお仕事の一つだったりする

そのため、社内の立ち位置というのが非常に大事なわけで、
それを築くために、日常のサポートデスク的業務には、手を抜かず、
ユーザーファーストを心がけ、社内とも信頼関係を築いておく必要がある

なんとも、面倒なお仕事なのである

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