ジェンダー平等論者はなぜ理詰めの議論ができないのだろう?

田中俊之さんという、あんまり有名じゃない大学の准教授さんが書いたコラムですが、ツッコミどころが満載。やっぱり今の日本の大学ってレベル低いんかなあ、と嘆息。

今年初め、総合商社の丸紅が、2024年までに新卒総合職採用に占める女性割合を4~5割にすると発表。これに対しては好意的な意見だけでなく、「逆差別ではないか」「性別問わず能力で採用すべき」といった反対の声も上がりました。

丸紅という民間企業が自己の責任においてそれをやる分には、何の問題もないんじゃないでしょうか。特に反対する理由は何もありません。

男性が8割を占める会社が、広く社会課題の解決を達成できるのかという問題意識、このペースでは何十年も経たないと状況が変わらないから今すぐ女性を増やすんだという決意、そして同質的な集団から脱却しないと環境の変化に対応できなくなるという危機感。いずれのコメントも、しっかりとしたビジョンを感じさせるものでした。

ん?なんで単なる一民間の営利企業が「広く社会課題の解決を達成」しなければならないのでしょうか。ちょっとよく分かりません。それは政府の仕事では?そして、「女性を増やせば広く社会課題の解決が達成できる」という理屈も全く分かりません。

あと、同質的な集団から脱却って言うなら、大卒女性を増やすよりも、中卒男子を増やしたほうが良いんじゃないでしょうかね(笑)。それは冗談としても、新卒採用を減らして中途採用を増やすほうが、よっぽど「同質的な集団からの脱却」に寄与すると思います。

これが他社でもできるかどうかは、経営層が「男社会のままでは限界がくる」と思えるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

まず「男社会」とは何か、その「男社会」のままではなぜ限界がくるのか、限界とは具体的にどういうことなのか、といったことに、何の説明もないですよね。

さらに、「女性は男性に比べて能力が低い」と思い込んでいる人もいます。こうしたジェンダーバイアスは、今の時代は完全な差別とされるため、表立って口にする人はあまりいないかもしれません。しかし、口には出さなくとも心で思っている人は、やはり一定数存在しています。

でも、本当に女性は男性に比べて能力が低いと思ってたら、女性は一人も採用しないのではないでしょうか。私は新卒採用の現場を知らないのでなんとも言えませんが、男子何割女子何割とかって枠を決めて採用してる会社が多いんでしょうかね。もちろん男子と女子で業務内容が違うとかだったらそういうこともありえるでしょうが、業務内容が同じなら特に性別による採用枠とか設けてない会社のほうが多いのでは?

「性別問わず能力で採用すべき」という人には、こうした固定観念を維持している人が一定数いるということを、まず知っていただきたいと思います。

たとえば、上述のような偏見をもった人たちが人事担当者だったらどうなるか、想像してみてください。

単にその会社が沈没するだけでは?

そして、優秀な女性は、男女差別をしない優秀な会社に集まり、そちらの会社の業績が伸びる。

この固定観念が解消されないままだと、どんな問題が起きるのでしょうか。長年、日本の大企業はおおむね男性は総合職として、女性は一般職として採用してきました。前述のように、女性は結婚・出産で退職するものという前提で動いていたからです。

その結果、女性はキャリアの継続が難しくなり、賃金も男性に比べて上がりにくいという状況が生まれました。これは、結婚しない人が増えている現代社会では大問題です。

大企業に勤めるエリートにとっては大問題かもしれないが、その他大勢にとってはどうでもいい問題です。

丸紅については、今後の推移も注視していくつもりです。女性総合職をたくさん採用しても、その後に辞める人が続出するようでは意味がありません。商社は転勤も長時間労働もあり、会社都合の働き方が根強く残る業界です。入社したのはいいけれど「男社会すぎて活躍しにくい」と感じる女性もいるかもしれません。

ははは、アベプラでも似たようなこと言ってた人がいましたね。

そんな風に、総合職で働く人に「辞めるな」とプレッシャーをかけるの、よくないと思うんですけどね。

本来主張すべきは「転勤も長時間労働もある、会社都合の働き方」を改善しなければならないってことであって、そこを改善すれば女性社員は自然と増えていくと思うのですが、その改善策を示さぬまま、ただ闇雲に「女性を増やせ」「男社会を辞めろ」と言われても、世の大半の、男性も女性も、何をどう改善して良いのか分からずトンチンカンな対応が増えるだけだと思います。

女性が半数に達すれば、これまで男性たちが続けてきた、仕事にすべてを注ぎ込む働き方も変わっていくはずです。男女とも家事育児や介護との両立を前提に働く、そんな風土ができあがっていく可能性もあります。

根拠もなく「はずです」とか言われてもねえ。

だから、女性を半数にすれば働き方も変わるはずっていうアプローチがそもそも間違ってるんですよ。働き方を改善していかないと、ただ女性を半数にしても、男性にそのしわ寄せがいくだけで、おそらく自殺も増えるんじゃないでしょうかね。

で、営利企業に対してただ闇雲に「働き方を改善しろ」と言っても、普通はそんな何の得にもならないことはしないので、政府は「働き方改革」に対して何かしらの罰則なりインセンティブなりを設けて企業を誘導していくのが常道だと思うのですが。

丸紅は、今後は働き方も時代に合った形に変わっていくと判断したのだと思います。そして、思い切った変革を行うよりも、今の状態を続けることのほうが、リスクが高いと考えた。この判断はとても妥当だと感じています。

「感じています」じゃなくて、学者らしいことを言ってほしいんですけどね、具体的にどんなリスクがあるのかっていう。

丸紅は人材戦略のひとつに「多様性」を掲げています。この言葉には、女性だけでなくLGBTや障害者、外国人も含まれているはずです。

いまどき「多様性」とか言ってる時点で、20年遅れてる気がします。

意思なき多様性は最悪」とまで言っています。多様性を取り入れるためには、何が目的なのかをはっきりと明確にする必要があるのです。ただ何となくぼんやりと「男社会の定義もよくわからないけど今の男社会のままじゃどうして限界を迎えるのかそもそも限界が何なのかよくわからないけどきっと限界を迎えることになるよね、女性を採用すればどうしてそれが解決するのかよくわからないけどきっと解決するはずだよね」じゃダメなんです。

最後に、田中俊之さんらジェンダー平等論者は知らないだろうけど、世の中には男しかいない職場、女しかいない職場がたくさんあります。前者で言えば、建築土木、運輸、漁師などの力仕事の現場、さらには警察官や自衛官なども男性が多いですよね。東日本大震災で宮城、岩手、福島まで飛んで行った自衛官の中に女性はどれだけいましたか?後者で言えばキャバクラや性風俗、介護業、保育士、あとは電話のオペレーターなんかも大半は女性ですよね。ジェンダーロールを否定する人たちは、こういうものも全て男女同数にすべきと思っておられるのでしょうかね。



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