見出し画像

オリンピック東京大会 プラチナメダルを彼女に!

ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリア、弱虫ペダルなどの自転車レースで、どうしても納得できない部分があった。団体戦ならまだしも、個人戦なのに

「グループ内の選手が交代で風よけになってエース選手の体力温存をはかり、レース終盤でエースが飛び出して全力でゴーーーーール、優勝!」

というもの。例えが悪いが、ウサイン・ボルトがフルマラソンに出場して42キロ地点までチームメイトに背負ってもらい、最期の195メートルだけを全速力で走る・・・って感じ。

ルールで認められているんだから別に問題はないんだが、なんかムズムズする。

自動車レースでよく耳にする「スリップストリーム」。先行する車の後方にピッタリと張り付くことで空気抵抗を減らし、効率よく走行する方法だ。任天堂のマリオカートにもある技なので、レースに興味のない人でも聞いたことがあると思う。

画像1

参考画像・・・ZURA SPORTS webより


この空気抵抗、自転車の速度域でも大きな影響を持つ。

ツールなどのロードレースのレギュレーションはUCI(国際自転車競技連合)が決めているのだが、空気抵抗に関連して様々な禁止事項がある。表向きの理由は「選手の危険防止のため」だが、中には「速すぎるから禁止した」ものもある。

その1つがリカンベント。登場時はそのスタイルから笑いものにされたが、その空力抵抗の小ささからあまりにも早く、2流とされた選手がレースで勝ち続けたためにUCIは「リカンベントは認定自転車ではない」とし、現在でもロードレースの世界から排除されている。

画像2

晴れたら走ろう!リカンベントより


「スーパータック」「スーパーマン」といった乗り方も同様。たったこれだけのことで空気抵抗が大きく減り、スピードアップする。さすがに後者は禁止されても仕方がないと思うが・・・

super tack


superman 又は電人ザボーガー


理由が「安全のため」であろうが「速すぎるから」だろうが、規制がすべての出場選手に適用されるのだから問題はない。ルールブック・プレイブックには黙って従う。それがスポーツというものだ。


では前述の「ボルト背負って42キロ、ゴール手前でボルトが全力疾走作戦」は?ナショナルチームのような大所帯であれば「チーム全体でサポートし、体力温存したエースを優勝」させることが可能だが、個人参加の選手にはそれが出来ない。「ボルトおんぶ作戦」に対し、個人参加選手は42.195キロすべてを自力で走らなければならない。ルールで認められているとはいえ、不公平ではないのか?

個人参加の選手がグループをつくり、交代で先頭に入って集団を引っ張ることもあるが、ナショナルチームのように「エースが先頭に出るのはゴール前のみ。それ以外はスリップストリームで脚力温存」といわけにはいかない。

この集団の駆け引きがロードレースの醍醐味・人気の秘密なのだろうが、だったら個人戦ではなく団体戦にして「1位でゴールに入った選手のチームが優勝」にした方がすっきりするのでは・・・と思っていたのだが、今回のオリンピック東京2020+1ですべてのモヤモヤがすべて吹き飛んだ。オーストリア代表のアナ・キーゼンホーファ選手がやってくれたのだ。


自転車女子・ 個人ロードレース。オランダ・フランス・イタリアといった有力チームがそれぞれのエースに金メダルを取らせるべくレースの王道「グループ走行」をするのに対し、アナ・キーゼンホーファ選手はF1レースで言うところの「ポール・トゥ・フィニッシュ」、競馬で言うところの「完全先行逃げ切り」をやってのけたのである。


You-tube動画 ↓ 直リン禁止なのでURLのみ。 
https://www.youtube.com/watch?v=9aVB78M0uiE


彼女はたった1人で空気の壁と戦い、147キロを走り抜いた。先行する彼女の存在を完全に忘れ、

「やったー!金メダル、ゲットだぜ!」

と喜んだオランダの選手が「あなたは銀メダルですよ」となるのはちょっとかわいそうだが・・・まさに「策士、策に溺れる」である。

自転車ロードレース界の常識を覆す走りで世界を楽しませてくれたアナ・キーゼンホーファ選手。彼女には金メダルだけではなく、さらにその上のプラチナメダルを贈りたい。バッハ会長、ポケットマネーでよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?