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不正発覚、トップ辞任より大切なこと・・・

このところ様々な不正が発覚している。あえて例を挙げないが、大抵はメディアの前でTOPが深々と頭をさげ、「不正はあったが品質に問題はない」と釈明し、最終的には「不祥事の責任をとって辞任する」と表明する。

それはそれでいい。「不正はあったが品質に問題はない」という部分が気にはなるが・・・。


ここで問題にしたいのは別のこと。この不正の裏に存在する、「不正を知っていた社員」に対する処分である。


例えばの話。あなたの職場でなんらかの不正が行われたとする。その事実を知ったあなたは即座に上司に報告するが、返ってきた言葉は次のようなものだった。

「問題ない。数字の改ざんは誤差の範囲。安全性や機能に影響はない。このことは上も承知済み。このことは忘れろ」

ここであなたに残された選択肢は3つ。

1.上司に従い、沈黙して職務に戻る
2.しかるべき組織(社内・社外)に通報
3.辞める


1.が一番簡単な道であろう。不正が外部に漏れない限り、平穏無事に仕事は進む。給料だって今までどおり支払われるし、がんばり次第では昇進の道もある。


2.を選択するにはかなりの勇気と覚悟がいる。社内の通報窓口・顧問弁護士がいくら「決して不利な扱いを受けることはない。通報者の氏名は開示されない。安心して不正情報の提供を」としたところで、100%その言葉を信じる社員がどれほどいるだろう。実際に過去には「正直者がバカを見た例」が存在する。

ましてや社外の監督官庁やマスメディアに通報するとなると会社へのダメージとなり、会社へのダメージは社員である自身へのダメージにつながる。業績悪化にともない給料が減るであろうし、通報者であることがばれないようにビクビクとおびえながら生きていかなければならない。前述の「正直者がバカを見る」のように閑職に追いやられる可能性もあるし、「機密情報を漏洩した」との不当な理由で自主退職やクビに追い込まれる可能性もある。正義感は大切だが、それだけでは生きていけない。

こうなると3.が一番最良な選択のような気がする。不正をするような会社はとっとと辞めて、次の職場でがんばればいいだけの話だ。


問題はここからだ。数ヵ月後に不正が発覚したとする。冒頭にあるようにトップが頭を下げ、社内では「コンプライアンス(法令順守)」の嵐が巻き起こる。トップが入れ替わり、不正に対する姿勢が180度変われば 1.の選択をした社員にもなんらかのペナルティが課されるかもしれない。「上司に報告したが無視された」は新体制では受け入れられない。「どうしてコンプライアンス部門に通報しなかったのか?それは職務怠慢である」と言われれば誰も反論できない。「何十年と続く習慣だ。歴代の上司だってやってきた」と言ったところで「ではあなたの知る限りでいいので、その上司の名前をすべて教えてください。こちらで調査します。不正は絶対に許しません」で終わりである。


では2.や3.の選択をした社員に対し、TOPはどう対応すればいいのか?あくまでも個人的な意見だが、もしTOPの人間が本気でコンプライアンスを考えているのであれば、2.の選択をした社員を昇進させ、3.の選択をした人間からは徹底して事情聴取を行い、「不正の事実を知りながら告発することなく逃げるように辞めていった」という事実が確認できればなんらかの損害賠償請求をすべきと考える。


「あなたは不正の事実を知りながら、それを解決する努力を何もせず、放置して会社を辞めた。あなたがあの時告発していれば、会社へのダメージはこれほど大きくなかったかもしれない。よって株主に替わり、あなたに損害賠償請求を行う」


もっともこれは出来レースで、あくまでも対外的なパフォーマンス。損害賠償請求をいったんは行うが、しばらくしてから「和解」という形で訴えを取り下げるのである。辞めていった3.に「情報提供料」(法的に許されるかどうかは未確認)を支払って協力を要請し、「不正情報を握りつぶした3.の上司」を相手取って損害賠償請するという手だってある。

辞めていった3.を巻き込むのは申し訳ないが、こうすることにより


「弊社は生まれ変わりました。不正行為に対し、徹底的に戦います」


という姿勢を外部に示すことが出来るし、内部に対しても「見て見ぬフリは社内規定違反」という本気度を示すことが出来る。言葉だけでなく、実際に態度で示さなければ失った信頼を取り戻すことは難しい。


まさに夢物語だが、この夢物語が現実にならなければ不正はなくならない。こんなのがあり得るのはTVドラマや小説の中だけ・・・と笑うあなたにはこう言いたい。


「あなたの会社でも不正が横行しているのですか?あなたも不正の片棒を担いでいるのですか?」

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