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同年代最強クラスのランナー

実業団に所属せずに、フルタイムで働きながらも、実業団ランナーと互角の実力を誇る中村高洋さん。私と同い年で、学生時代からの友人です。

学生時代に、急に強くなったと思ったら、一気に雲の上の存在になってしまいました。私がようやく雲の上に辿り着いた頃には、彼は月に到達、そろそろ土星に辿り着くのではないかと思ってしまうくらい、今でも記録を伸ばしています。

2020年には全日本実業団ハーフマラソンで8位に入り、タイムも1時間0分57秒。そして、世界ハーフの日本代表になりました。

そんな中村高洋さんと牛山純一が、陸上競技についていろんな話をしました。

「中村高洋」×「牛山純一」

今回のテーマは、
「どうしてそんなに強くなったの?」
「得意なペース、苦手なペース」
「マリオカートで例えるなら”ヨッシー”」
30代のアマチュアランナー同士の対談をお届けします。

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中村 高洋(なかむら・たかひろ)
1983年8月24日生まれ
霧島市在住の超ランナー
小松高校(石川県)→名古屋大学、名古屋大学大学院→京セラ鹿児島
専門は長距離種目
5000m:13分57秒24
10000m:28分33秒76
ハーフマラソン:1時間0分57秒
マラソン:2時間14分25秒
2020年全日本実業団ハーフマラソン8位
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牛山:それでは、よろしく。

中村:こちらこそ、よろしく。とりあえず写真撮ってきたけど、こんな感じでいい?

牛山:おぉ、早速。ところで、これはどこ?

中村:背景を桜島で撮ろうと思ったけど、曇っていて見えなくて。

牛山:「桜島」と言えば、鹿児島県のシンボル。えらく遠くに行ってしまって、なかなか会うこともなくなったね。

中村:2年に一度くらいは一緒に戦いたいみたいな話をしたこともあったけど、それすらなかなか叶わないね。

牛山:最後に会ったのは、2016年の福岡国際マラソンだったっけ?

中村:そうそう。

牛山:控室で少し話したよね。たしか、結構雨が降っていて。肝心のレースの方は、競うとかそういうレベルじゃなくて、2時間16分34秒と2時間24分21秒、もはや別の戦いでしたな。

中村:あのときはたまたまだよ。無謀にもハーフまで先頭集団に付いて、何とか粘って自己ベスト。一か八かが上手くいったレースだった。

牛山:一か八かの勝負で勝てるってすごいと思うんだけど、どうやったらそういう場面で勝てるの?

中村:国語辞典によれば、「一か八か」ってのは、「結果がどうなろうと運を天に任せてやってみること」ってことなので・・・

牛山:あー、勝たなくてもいいのか。

中村:一か八かと思っているうちは負けても仕方ないのかなって思っている。だから、つまらない答えだけど、事前の練習のやり方や、得意なレース展開に持ち込むことで、勝てると思える状態に近づけるしかないのかなって。

牛山:勝ち負けよりも、挑戦していくことが大事と言うことですな。

中村:そういうことになるね。

牛山:ところで、みんなが「こーよー」って呼んでいるから、「こうよう」だと思ってたけど、本当は「たかひろ」なんだよね。

中村:小学校の頃からあだ名が「こーよー」だったので。もしかしたら本名知らない人がいるかもしれない(笑)。

牛山:流石にそれは無いでしょう。

中村:たしかに(笑)。

牛山:こーよーには、大学3年くらいまでは負けることが無かったのに、4年のときには一度も勝てなくて。それからも一度も勝てたことが無いと思う。

中村:牛山は1年から強豪の愛工大の主力で、4年かかってようやく追い付いて、嬉しかったのを覚えてるよ。

牛山:今まで陸上やってきて、追い付かれた経験ってあんまり無いと思うんだよね。一度追い付かれたとしても、また抜き返した人はたくさんいるけど、未だに追いつけないのは、ホントにこーよーくらいだと思う。

中村:なかなか競う機会も無いからね。

牛山:2014年の日体大記録会で10000mを走ったときは、もしかしたらと思ったんだけどね。自分自身も学生のときよりも強くなっている自信があったし、レース展開次第では勝てるかもって思ったんだけど。

中村:あのときは同じ組に変更してもらって、俺も勝ちたいという想いで臨んだんだ。

牛山:レース中も、常にこーよーが視界に姿が入っていて、8000mを通過したときにはこーよーのすぐ後ろにいたんだけどね。

中村:そうなのか。気付かなかった。

牛山:やっと追いついたと思ったのに、そこからすぐにペースが上がって、それに対応できずに最終的には10秒も離されてしまってね。やっぱりスゴイなって思ったわけよ。

中村:たしか、めちゃくちゃ寒くて、ペースが上がらなかったから、組でトップを狙うことに気持ちを切り替えたんだ。

牛山:そうそう、めちゃくちゃ寒かった。長野県から来たのに寒く感じたくらいだから。

中村:あのときは勝てて、ホッとしたよ。

牛山:そこでちゃんと勝つところがスゴイと思う。強い人と弱い人の違いって何だろうね。フィジカル?それともメンタル?

中村:いきなり難しい質問!どちらもと言いたいところですが、敢えて言うならメンタルかなと。練習を継続したり、レースの苦しい場面で追い込んだり、いくらフィジカルが強くてもそれを活かすにはメンタルが必要かなと。牛山はいかがでしょう?

牛山:ある程度のところまではメンタルなんだと思っているんだけど、たまに身体能力の違いを感じさせられる相手に遭遇すると、あぁ…って思うね。でも、それは世の中の1%未満の人間。だから、メンタルがあれば、そこそこまではいける気がする。

中村:なるほどね。

牛山:ところで、何でそんなに速くなったの?やっていることはそんなに変わらないはずだと思うんだけど。

中村:メンタル面で言えば、いい意味で頭のネジが外れているのかなと。

牛山:頭のネジが外れていると言うのは?

中村:普通は実業団選手なんかに勝てないと思ってブレーキを踏むと思うけれど、何故か自分は勝ちたいなと思ってしまって。それで、練習の強度を上げたりレースでもついていってしまったり。失敗レースもたくさんあったけれど、その繰り返しがリミッターを外してくれたのかと。

牛山:特にハーフが強いよね?

中村:ハーフは、スピードとスタミナの絶妙なバランスが、自分に合ってるんだろうね。

牛山:1時間0分57秒でしょ、俺1kmくらい離されちゃうよ。

中村:でも、トラックの絶対的なスピードは弱いから、牛山のツイッターの練習内容を見ていると、5000mなんかは勝てないような気がしてる(汗)。

牛山:いや、俺も5000mは苦手で・・・

中村:いやいや、あなたはスピードあるでしょ。練習で1000mを2分30秒台で走っているし。俺は今できないよ。

牛山:そのスピードが、どの種目にも生かせてなくて在庫になってるから困ってて。1000mを2分37秒で走るスピードを実戦で使う場面がどこにもないからね。

中村:たしかにちょうど使わないペースかもしれない。

牛山:よく使うギアと、使わないギアってあるよね。得意なペースと、苦手なペースと言うか。3000mや10000mは得意なんだけど、1500mや5000mは苦手とかね。

中村:俺も5000mは最近、思ったほどのタイムが出ないことが多いね。2分50秒~55秒/kmペースを意識したトレーニングが多いけれど、もっとガッツリとスピードトレーニングやらないといけないのかもね。10000mやロードは今のトレーニングがはまっているのか、逆に想定以上に走れることも多いけど。

牛山:苦手なペースってあるの?

中村:3000mとかを、3分を切る速いペースを維持するのは、苦手というかキツいから好きではないね。

牛山:ハーフは3分を切るペースで走っちゃうのにね(笑)。

中村:絶対的なスピードは無いと思うよ。

牛山:俺たちって絶対的なスピードは弱いよね。マリオカートで例えるなら「キノピオ」のカテゴリーというか、「ドンキーコング」には勝てないというか。

中村:ピノキオってのは同意だね。

牛山:テクニックを鍛えれば、そこそこ勝負できちゃうというか。

中村:テクニックと経験でカバーしたいね。なお、俺はヨッシー派だね。

牛山:ヨッシー?!

中村:スタートダッシュというか、加速重視の先行逃げ切りタイプかな。

牛山:結構前半から突っ込んでいくよね。しかも、それでちゃんと結果を出すからスゴイと思う。世界ハーフの代表になってしまうんだから。

中村:こんな日が来るとは思っていなかったね。ご存知の通り、コロナ影響で延期になったけど、その分しっかり練習はできているから、いい走りが出きると思う。他の代表選手と写真撮ってもらうのが最大の目標。

牛山:他の代表選手も豪華だもんね、羨ましい。現地はどんなところでしょう。

中村:イマイチ分からない。あんまり情報出てこなくて。暑いのか寒いのかくらいは調べて行きたいと思う。

牛山:ポーランドのグディニャだっけ?調べたら日本より涼しそうだよ。

中村:そうなのか。

牛山:地図だけ見ると、北海道より上の方(緯度が高い)だし。

中村:なるほどね。ちょっと話は変わるけど、最近のトラックにおける厚底規制(ミッドソールの厚さ25mm以下)についてどう思う?

牛山:これは、複雑な気分だね。ここ最近、5000mの13分台にしても、10000mの28分台にしてもバーゲンセール状態だと思う。

中村:一気に増えたからね。

牛山:厚底シューズを履けば、誰でも速く走れるのであれば、13分台とか28分台の意義って何なんだろうって思ってしまう。もしかしたら、そんなものは最初から無かったのかもしれないけれど、そこに特別なものを求めていた我々世代からすると、規制されて良かったんだと思う。

中村:ほー。

牛山:一方で、厚底のメリットをたくさん享受しているのも事実で、時代にどう適応していくかが重要なのかと思っている。翻弄されてもいけないと思うけど、いろいろ試行錯誤しながらやっていくつもり。

中村:なるほどね。ホットな話題について、強い人の話を聞けるのは楽しいよ。

牛山:いやいや、何をおっしゃる!

中村:(笑)

牛山:そう言えば、こーよーも厚底履いてたよね。少なからず影響あるのでは?

中村:そう、俺も最近は厚底シューズを履いていたから、辛いなぁ~というのが最初に思ったところ。ただ、新ルール施行後にどういうタイムで、どういうポジションにいられるか、というのは楽しみでもあるし、当然ポジションをより上げられるように頑張っていきたいね。

牛山:なるほどね、自分だけが履けなくなるわけじゃないからね。

中村:条件は一緒ってことで。

牛山:では、次の話題へ。今後はどんなことをやってみたいと思っているの?

中村:引き続き全種目でベストタイムを更新していきたいね。あとは、音楽活動も。

牛山:なんと、音楽活動も!陸上競技以外でも勝てる気がしない・・・

中村:引退したら専念したいものです。

牛山:うーん、引退しなそうだけどね。

中村:それから、マラソンは東京マラソンでタイム狙いたいと思ってる。

牛山:東京マラソンは、俺もタイム狙って走りたいところだね。

中村:終わったら、そのあと昼から飲もうか。

牛山:昼から飲めるね。

中村:11時くらいには終わるからね。

牛山:しかし、あまり速く走ると、記者会見等もあって早く終わらないのでは??

中村:その場合には、賞金で飲めるから大丈夫。

牛山:たしかに(笑)、その目標でいきましょう。しかし、そうなるとサブ10は必至。牛山純一に速く走るためのアドバイスをください。

中村:いやいや、十分速いでしょ。明らかに俺より練習してるし。自分は速いと思って、スタートラインに付けばいいんじゃない??

牛山:おぉ、それなら今まさに取り組んでいるところ。

中村:どんな取組み?

牛山:イメージが変われば、出力も変わる。そんなところかな。

中村:なるほどね。

牛山:最後に、飲むとしたら、ビールは何がいい?

中村:スーパードライ!

牛山:いいねー、そのために頑張れそう。東京マラソン楽しみにしてます。

中村:SNS等で練習や試合結果を見て、凄い刺激を貰ってるし、まだ負けないように頑張ろうって思う。これからもそういう刺激をヨロシク。来年くらいには、またトラックで一戦やりましょう。

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2人の対談は、これで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2020年8月6日 オンラインにて
鹿児島県霧島市 ⇔ 長野県茅野市

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牛山純一
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