ものすごくみじかい話 わたしは世界的ピアニスト

 わたしは世界的ピアニストなのだけれども、ピアノを弾こうとするとピアノが悲鳴をあげるようになってしまったので、とうとうピアノを弾けなくなってしまう。どんなピアノを弾いてもそう。頭がおかしくなったのではないかと思って、いろいろな薬も試したのだけれども効果がない。結局、今でもピアノを弾けないでいる。
 ピアノに突っ伏して泣いていると、どのピアノも「ごめんね」と声をかけてくる。「ぼくがもっと強かったらよかったのにね」って。やさしいピアノたち。