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タワー様と一緒③タワー様のお茶会

バクダンに変態後、初めてタワー様の部屋にお邪魔した。


今まで何でも無かったお部屋への道は、身体が巨大化したことによって障害物を乗り越えて行くアドベンチャーロードのように感じてしまった。

僕らの基地(ベース)がこんなに天井が低くて通路が狭いとは!


タワー様の部屋には四方に鍋山がうずたかく積まれている。

僕が身じろぎするだけでそれが崩れてしまいそうになるので、出来るだけ肩身を狭くしておとなしく座っていた。


今のタワー様には新しい付き人がいた。
僕のいた場所で新しいコジャケがキビキビと働いている。

タワー様が出陣の際には人手が必要だ。そのためには手伝いが必要になる。

だから新しい付き人を入れる必要があると頭では分かっているのだけれども。

複雑な気持ちを抱えながら、彼の動きを見守る。タワー様の新しい付き人……。
もうここには僕の仕事も居場所も無い。

これまでの生活には戻れないと改めて実感して、涙があふれそうになってきた。

でもタワー様にはそんな姿を見せたくない。

勝手に哀愁ジレンマに追われていると、近くにいたその付き人のコジャケを、タワー様に紹介された。


「紹介するよ、新しく手伝ってもらってるコジャケ君」

「はじめましてっス。話題の憧れの方にお会いできて嬉しいでっス。お会い出来たことを家族に自慢するっス。後で手形くださいっス。では、お茶の準備があるので失礼しまっス」


ペコリとお辞儀をし、早口で一方的に述べ慌ただしく去ってしまった。かなりせっかちなタイプとみた。

居場所が無くなったと嘆いていた僕の悲しみは彼と一緒にどこかへ行ってしまった。

「君とは違うタイプですね」
「あきらかに違いますね」
僕よりも元気で動きがいい。細かいことは気にしなさそうだ。僕と違う様子に何となくほっとした。


「元気を貰える気がしています」
「僕もそんな気がします」
二人で何か秘密を見つけたように顔を見合わせて笑った。


「お茶の用意が出来たっス」
コジャケ君と他のコジャケ達が数匹がかりで大きなカップを運んできた。大きなストローも一緒に運ばれてきた。


「君用に取り寄せたんだ。君とまたこうしてお茶を飲みたかったのでね」
「タワー様…」


タワー様の好意に胸が熱くなった。感動でうるうるしていると、タワー様がコジャケ君達に声を掛けていた。


「コジャケ君や皆にまだ紹介してなかったね。彼は僕の同僚で親友のバクダン君です。これから頻繁に遊びに来てもらうつもりなので、よろしくお願いしますね」


コジャケ君達がお茶の準備の手を止めて、僕に挨拶をしてくる。

僕も震えながら挨拶を返した。ちゃんと挨拶を言えていただろうか。


「タワー様、同僚はともかく親友だなんておこがましすぎます」


僕の声はまだ震えていた。視界が潤んでタワー様が見えにくい。
「僕の自認は自由ですよ。僕は以前からそう思っていました。親友は置いておいても同僚なんですから、タワー様の呼び名はやめませんか?」


「では何とお呼びすれば」
「そうですね。タワー君、タワーさんですかね」


タワー君にタワーさん。何だかしっくりこない。
「…タ、タワーさん」
どぎまぎしながら呼びかけ、タワー様の顔を見ると、にこにことこちらを見ている。緊張し過ぎて話の内容を忘れてしまった。


「…タワー様、駄目です。緊張して話す内容を忘れてしまいました。モグラさんのとっておき情報と、ハイテク新型お鍋情報だったのに」


「え、モグラ君情報はともかく、ハイテクお鍋情報は知りたかった…」
「…すみません」
「大丈夫ですよ。また、思い出したら遊びに来て下さいね」
「はい!」


あ、モグラさん情報だけ思い出してしまった!

例のイカと痴話げんかをしてここ(基地)で金イクラにされたんだった。


まだ僕の付き人ネットワークは現役で、いろんな話が聞こえてくる。

タワー様はお鍋情報を楽しみにされているので、モグラさん情報は握りつぶす。

でも、モグラさんがまたタワー様に何か言ってきたら切り札として使おうと思った。

(コジャケ君にあげた手形(ひれ形魚拓))