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ゲームのBGMのラウドネスどうする問題

Steamでゲームを遊んでいるみなさん、こんなことを思ったことはありませんか?

「ゲームごとに音量が違うなあ」

音量には物理的な音の大きさを示すデシベルの他にラウドネスという要素があります。
これは人間の聴感上の音量のことで、その単位の中にLUFS/LKFSというものがあります。
テレビやYouTubeではラウドネス基準というものが設けられており、それぞれ定められたラウドネス値を超えないように制限がかけられています。
例えば、PlayStationは-23LUFSに設定されているのですが、Steamにはこのラウドネス基準がありません。
ゲーム制作側が自由に全体音量を決められるので、結果としてゲームごとに大幅に音量が違うという事態が起こっているのです。

ただ、ラウドネスってそもそも曖昧なものだと僕は思うんですよね。
ラウドネス値の計測は主に、瞬間的な「Momentary Loudness」、3秒間の「Short Term Loudness」、全体の「Integrated Loudness」に分けられるのですが、あくまで平均値にすぎません
実際、テレビは番組によって音量差を感じますし、YouTubeも然りです。
PlayStationにおいても、『ひぐらしのなく頃に奉』をプレイした時にスピーカーのボリュームを下げずにはいられないほどの音量を感じました。
ですので、なんとなく音量が揃っている、くらいの認識でいるのがいいかなと個人的には思っています。

それで、問題はこの、プレイヤーがボリュームを操作しなくてはいけない、というところなんですよね。
ゲーム内のオプションメニューで音量を調整する場合もあるでしょう。
いずれにしても、ひとつ前に遊んだゲームの全体音量が小さかったとして、次に遊ぶゲームの全体音量が大きかったらどうなるでしょう。
そう、大音量になるのです。
音楽の感想として一番聴いた人に言わせてはいけない言葉は「うるさい」だと僕は思っています。音楽というものはそうあってはいけない、と。
しかしラウドネス基準のないSteamのゲームでは、プレイヤーは全体音量の予測を立てることができず、これが起こってしまう危険性があるのです。

現在、サウンドディレクター兼コンポーザーを担当させていただいているSteamタイトルがあり、近く1曲目を納品する予定となっています。
つまり音量を決定する段階に来たわけです。
果たして、僕のラウドネス基準をどうすべきか考えました。
「じゃあ、小さくすればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、事はそんなにシンプルではありません。
本作にはバトルがあり、迫力が失われることもまた、僕にとってはあってはならないのです。
小さい音は小さい音で「しょぼい」という印象を与えるリスクを孕んでおり、プロモーションに不利で、適切な音量を探る必要がありました。
そこで僕が導き出したラウドネス値は、-17LUFSです。

正解のない世界で僕が出した答えです。同業の方におかれましては「そういう考え方もあるんだなあ」程度に捉えていただければと思います。
僕はMacユーザーで、8割のSteamタイトルをプレイできないため、平均値は頼りないものですし、リファレンスも用意できませんでした。
言わば勘です。
最も良い方法はやはりリファレンスを用意することだと思います。お手本にしているタイトルに合わせるのが間違いないでしょう。
とりあえずフリーBGMを持ってきてそのまま流すのはやめましょう。音楽として鑑賞する音量とBGMの音量が同じであっていいはずがありません。
ゲーム音楽のラウドネスの議論はなぜかほとんど見かけたことがないので、この記事が考えるきっかけになれば幸いです。

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