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川越らぷそでい 第3話

前回までのあらすじ
越川虎之助(17)は少し特別な能力がある男子高校生。
ある日、嫌な予感がした為学校を遅刻して行く事にした。
嫌な予感は的中し、虎之助はトラブルに巻き込まれる。なんだかんだあり睡眠弾により眠らされた虎之助はどこかに連れ去られる。
虎之助が眼を覚ますとそこは川越妖魔特別対策本部という聞いた事もない場所。そこは妖魔を保護する施設も兼ねている不思議な場所だった。
施設を巡っている間にサキュバスのリリアがアイドルになっていた。配信やライブ会場にいる男性を使って虎之助を陥れようとするが失敗。川越を救った虎之助だが力尽きて意識を失う。
これは埼玉県川越市を舞台に繰り広げられる妖魔と男子高校生の物語。

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第3話

見覚えのある部屋
また母が僕の事を必死で守っている
『お願いです!!この子だけは!!』
『ならぬ!穢らわしい!!』
初めて別の人間が現れたな‥
何だろう‥この夢‥
母には一度も会ったことないし、どう見ても抱かれているの赤ん坊だ‥
これは本当に僕の記憶か‥?

川越妖魔特別対策本部内救護室

僕は意識を取り戻した。
うっ、眩しい光‥ここは本部かな‥
「よかった!目を覚ましてくれて!」
あ、絢音さんか‥
「お、おはようございます‥」
「おはよう‥っじゃないわよ!急に倒れてビックリしたじゃない!」
「ご、ごめんなさい‥」
本気で心配してくれた絢音さんに僕は素直にあやまった。
すると絢音さんは僕をギュッと抱きしめた‥
「‥みんなを私を助けてくれてありがとう‥」
‥‥僕は緊張の余りなにも出来ずただ時間が過ぎていった。だけど、このまま時が過ぎないで欲しいとも願う‥

「ゴ、ゴホン!」
信綱さんが急に現れた。
「ほ、本部長!こ、これはそういうのではなく、たまたまで!」
ドン!
絢音さんは我に返り僕を思いっきし突き放した「ひ、ひどい‥」
信綱さんは落ち込んでいる僕を慰めるかのような優しい声で話しかけてきてくれた
「虎之助くん、隊長はどうだい?」
「は、はい、だるいだけで特に問題はありません」
信綱さんは僕を上から下までと値踏みするかのようにじっくりと観察された。
「‥ふむ、やはり君は特別だ。なんせ、彩玉も使えるし、使用した後の副作用も少ない」
副作用‥?
「‥この彩玉って誰でも使える訳ではないんですか?」
僕は彩玉を取り出して聞いてみた。
「そうだ、君みたいな選ばれた者のみが使用できる。」
絢音さんが口を開く
「本部長、この石の玉‥彩玉っていうんでしたっけ?初めて見ました‥一体なんなんですか?さっきのリリアの件の時、虎之助くん、ハト出してましたよ。」
「うむ、この石はほとんどの本部の人間ですらほとんど知らない。これはな、イメージを具現化できる石だ。イメージが彩られるという意味で彩玉ってつけられた。しかも、この世には二つしかないとされている。」
「イメージが具現化‥最高の力‥ですね。私は使えないのでしょうか?」
「ふむ‥試しに使ってみなさい。虎之助くん絢音さんに渡して。」
僕は絢音さんに手渡した。
「さぁ、それではやってみなさい。イメージが石に注ぎ込まれるように意識して」
「はい!」
絢音さんは眼をつぶり呼吸を整えた
「イメージ‥イメージ‥」
彩玉は一瞬光を放ったがすぐに消えてしまった‥
「あっ熱い!」
絢音さんは思いっきし彩玉を投げ捨てた。僕は慌てて拾いに走る‥確かに熱くなってる。
「ほ、ほんとに熱い‥僕今までそんな事なかったですが‥」
信綱さんは頷きながら僕達に語りかける
「この彩玉は特別な人間以外が使おうとすると熱を発するようになっている。それでも使い続けると使用者の身体が炭になるまで燃え続ける。これは一種の呪われた呪具とも呼べる。」
絢音さんの顔が青ざめていく‥
「そ、そんな物私に使わせないで下さい!」
絢音さんは本気で怒っているようだ。
「いやぁ、すまんすまん。絢音くんすごく使ってみたそうだったから‥思わずね。」
「た、確かに使ってみたかったですが‥そんな危険な物なんて知ってれば使いませんよ!」
2人が色々と言い争っている中、僕はある事に気付いた‥
「あの‥信綱さん‥そんな危険な物‥か弱い男子高校生にいきなり渡したんですか⁉︎」
信綱さんは豪快に笑い出した。
「ガッハッハッ、わしの勘は鋭いんだ!今回も大当たりだったしな!まぁ、危険な賭けではあったが結果オーライだ!」
信綱さんは笑いながら僕の肩を叩いて来た。
「も、もういいです‥」
とてつもなく危ない賭けをされたが、僕にとっては嬉しい事だったのだ。
それは初めて人の役に立てた気がするから。

信綱さんは時計を見ながら僕に話しかけてきた
「さて、さすがにもうこんな時間だ。家に帰りなさい。今日は本当にありがとう。」
信綱さんは深々と頭を下げた。
「や、やめてくださいよ、僕も頼りにされて嬉しかったです。」
信綱さんはまだ頭を下げている
「君を信じて彩玉は預ける。だけどここに入隊するかの答えはまだ先でも構わないから心が決まったら教えてくれ。」
僕は正直心は決まっていたが、1人では決められない。
「わかりました。彩玉は預かります。悪用は絶対に絶対にしません。」
信綱さんは頭をあげて僕をギュッと抱きしめた。
「信じているぞ‥」

気付けばもう22時になっている。ばぁちゃんはもう寝てるんだろうな‥
「危ないから送るわ」
僕は絢音さんに自宅まで送っていってもらった。車中、絢音さんと他愛のない話をしながら家路へと向かう。

数分後‥

「着いたわ、案外近いのね。今日は助けてくれてありがとう。また明日ね」
絢音さんは投げキッスをしながら窓を閉めた。
思春期の男子には刺激が強すぎる‥
部屋に電気がついている、ばぁちゃん、まだ起きているんだ。
「おかえり、虎。」
いつもの優しいばぁちゃんの顔だ。
「ただいま」
ばぁちゃんはまた何も聞かず、お風呂入って寝なさいの一言。そのまま、寝室に向かっていった。
僕が疲れているのがわかってるんだな‥ほんとばぁちゃんは凄い。
僕はお風呂に入り軽く夕食をとり、ベットに横になる。
今日は寝てばっかな気もするけど自分のベットに入るとやっぱり眠くなる‥

こうして僕の長い1日が終わった。

翌日

チュンチュン

鳥のさえずりが聞こえる‥
いつもの朝だ。
今日は学校だ。なんだかすごく久しぶりに感じる。

2年A組
ここが僕の教室だ。昨日の事は誰も口にしていない。睡眠弾の効果かな‥?
向こうから女の子が駆け寄ってくる
「ねぇねぇ、虎ちゃん!昨日のリリアのライブみた⁉︎衣装も踊りも最高級!歌声は最上級にキュート♡最後の方はドラマのワンシーンみたいでカッコよかったよね!」
この子は幼馴染の北川真希。家の前に住んでいてアイドルオタク、そうドルオタだ。
いや、だけど昨日のライブって記憶消していないのか‥⁉︎
「ま、真希、ちょっと昨日の動画ある?」
「うん、あるよ。なぁんだ、虎ちゃん、観てなかったんだぁ‥」
真希は悲しそうに動画を見せてくれた
そこには昨日起きた事がそのまま流れている。僕の姿も映っているが上手くぼやけている。
「確かに凄いライブだね‥」
「でしょ!」
真希はニコニコしている。

ピコン

携帯からニュースの通知が届いた。
『川越ご当地アイドル、リリア。鮮烈デビューからわずか1日で活動休止!』
「えっ、嘘でしょ‥」
真希は絶句している‥
真実を知っている僕は驚くフリをしてみた。
‥その後の真希のテンションはだだ落ち。悲痛なおももちで帰って行った。
一応気になったので僕は本部にどういう事か聞きにいった。

川越妖魔特別対策本部

コンコンコン

「失礼します。」
「おう、おはよう。」
信綱さんは相変わらずのダンディイケオジだ。
「もう心は決まったか?」
「まだ祖母と話をしていないので‥」
「わかった。急かせて悪かった。」
「い、いえ‥あの、昨日の映像がそのまま流れてるんですが大丈夫なんですか?」
「あぁ、あれは大丈夫だ。歌声は合成だから。」
ご、合成であのレベルか‥技術半端ないな。
「ありがとうございます。そうだったんですね‥」
「活動休止の件は当たり前だがリリアがいなくなったからだ。ただ、再生回数凄いみたいで見つかり次第このまま契約したいって言っているらしい。」
信綱さんの力はすごいな、エンタメ業界もテリトリーなんだ。
用事は済んだがこのまま帰るのもアレなのでしばらく雑談をしてから帰宅した。

「おかえり、虎。」
「ただいま、ばぁちゃん」
僕は意を決してばぁちゃんに話す事にした。
「ばぁちゃん、ちょっといい?」
僕はありのままをばぁちゃんに伝えた。
ばぁちゃんは少し悲しそうにうつむいた。
「そうかい、虎もか‥」
ん?虎『も』?どういう事だ‥?
「虎もやはりそっちの能力があるみたいだね‥霊感というか特別な力が。」
「僕以外も持っていたという事‥?」
「そうだよ、私も、そして直美。そう虎のお母さんであり、私の娘ももっていたんだよ」
そうだったんだ‥ばぁちゃんも母さんも‥
「霊感だけなら気付いていたけど、まさか虎が選ばれし者だったとはね。彩玉なんておとぎ話だと思ってたよ‥」
うちには代々伝わるおとぎ話があるみたい。そんな事初めて聞いたな。
ばぁちゃんがゆっくり語り出した。
「人ならざる者現れし時、世は滅びに向かう。絶望の世に彩玉現れ世を救わん」
短いおとぎ話だ‥いや、おとぎ話ではなくこれは言い伝えではないか?‥まぁ、そんな細かい事はいいか。
「越川家は代々霊能力が高い家系。巫女や陰陽師のたぐいをしていた先祖もいると聞いた事がある」
なんだか現実離れした話だな‥
「虎よ、お前の母さんが亡くなったのはお前が生まれてすぐに原因不明で突如亡くなった。お前の父親の事は一切話さず誰かもわからん。ただ、遺体の首には赤いあざが出来ていた。何かの手掛かりになればいいが。」
急に色々言われて僕は正直頭がパニックになっている‥
ばぁちゃんはそれを察した。
「すまん、すまん、虎。いきなり喋りすぎたわ。とりあえず、その信綱さんの力になっておやり。お前の母さんの事はおいおい調べてくれ。」
ばぁちゃんは申し訳なさそうに謝った。
でも、母さんの死の真相‥知りたい気もする。ほとんど母さんの記憶はないけど知るべきなんだろうな。
「ところで、虎よ‥お願いがあるんだけど‥」
ばぁちゃんはモジモジしながら話しかけてきた。
「何、ばぁちゃん?」
「は、ハトを出してみてはくれんか!トン助に会ってみたい!」
ばぁちゃんはそういえば動物に目がなかったな。
僕は彩玉からトン助を出した。

「クルッポー!」
「呼んだポ⁉︎虎之助!」
シラコバトが彩玉から飛び出してきた。
「おお、トン助様!」
ばぁちゃんはトン助に向かって手を擦り合わせている
「お、おい、このばぁちゃんはお前のばぁちゃんか⁉︎お、俺は神様じゃない、ただのハトだ!」
「なんまいだぶ‥なんまいだぶ‥」
トン助には悪いがしばらく付き合ってもらった。
数時間後‥
「じゃ、じゃあな‥ポ」
トン助は消えていった‥
「ありがたや‥ありがたや‥」
ばぁちゃんはなおも祈っている
「‥満足した?」
ばぁちゃんは我に返った。
「はっ‥!‥さ、最高じゃったよ‥ありがとう虎之助。」
ばぁちゃんは深呼吸をして僕の眼をみる。
「ここから先は虎之助、あなたが全て決めなさい。あなたが決めた道、ばぁちゃんは応援する!」
「ありがとう、ばぁちゃん‥」
僕は川越妖魔特別対策本部に入る決意を固めた。

川越のどこか

「‥‥アタシが負けるなんて‥っていうか、戦う意欲が全くなくなってしまった‥」
悔しいけど‥何故かもう憎い気持ちが起きない‥うぅ、もう何もしたくない‥
アタシは目的もなく街を彷徨っている‥。
アタシはこれからどうすれば‥

「おい、お前リリアだな‥?」
アタシは顔を見上げるとそこには知らないサキュバスがいた。
「‥そうだけど‥、なんか用?」
「グランマの命令により、お前を消す」
見知らぬサキュバスが躊躇なく襲ってきた

ガキン‥!

「グ‥グランマ様‥」
バサ‥
サキュバスは地面に力無く倒れ込んだ
「単なる雑魚がアタシに勝てると思うなよ‥?」
リリアはサキュバスに冷たい視線を浴びせながら言い放った。
「グランマ‥か。ふっ‥アタシもここまでなのかな‥」
それからリリアはまたあてもなく彷徨い始める‥

妖魔界サキュバス治安区
サキュバス王室内

煌びやかな部屋の中に2人のサキュバスがいる

「グランマ様‥任務失敗しました。」
「‥‥‥まぁ、雑魚には無理よの。下がってよい。」
「はっ‥」
1人のサキュバスが消えグランマだけになる。
「‥リリア‥我が夫の様になるなよ‥。だが万が一もある。それまでに消さねばな‥」
グランマは不敵な笑顔を見せながら部屋を出ていった‥

第4話へ続く


#創作大賞2023



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