毒となり呪いとなり

・しまむら系列の赤ちゃん用グッズの販売が炎上して発売中止になった件、当たり前すぎるな。許されていいわけないだろ。

赤ちゃん用のTシャツや靴下に書かれた「パパはいつも寝てる」とか「パパは全然面倒みてくれない」とかのメッセージが炎上したわけだ。


「これでOK」となった経緯は大分気になる。あまりに歪なバランス感覚だ。

深夜に会議したの?

「お父さんだけを腐すのも良くないから“ママのご飯おいしくない”とかも増やそう!」とはならなかったのだろうか。

それとも「お母さんを腐すと世間からのバッシングがすごそうだからやめとこう」となったんだろうか。じゃあお父さんもダメだよ。


あるいは会社として、家庭内のパワーバランスは「働き者のお母さん、怠け者のお父さん」であるべきという構図を広めていきたいという社会メッセージなのかもしれない。

父親たるもの家の中ではふんぞり返って偉そうにしているくらいがいいんだと、家事育児は女の仕事なんだと、しまむらさんはそう言ってるのかもしれん。

世のお父さんたちは「天下のしまむらさんが男は家で休んでて良いって言ってたんだぞ!」と力強く言っていいのかもせれない。

つまり、今回の件、女性こそが抗議の声を大きくあげるべきなのだろう。「夫にも家事や育児をやってほしいのに、なんでその邪魔をするんだ!」と憤慨すべきなのかもしれない。



さらに私はもう少しこの件は深刻に考えた方がいいと思う。


かつて、21世紀初頭に100年カレンダーというものが売られていたそうだ。今でもたまに見かけることがある。

名前のとおりカレンダーを100年分、一枚の紙なり一冊の本なりにまとめたものだ。

その100年カレンダーを買った人は他の人たちより自殺する割合が高かったのだそうだ。


推定される理由は、自分の人生が100年カレンダーという手に持てるような大きさで目視できてしまって、自分の人生が空虚なように思えてきたからだと言われている。50年後も明日もしょせん一枚の紙の上のできごとではないか、と。

共感はできないが、なんとなく理解はできる。

カレンダーという用途上、それを目にする機会は多いのだろう。「おれ、このカレンダーのどこかでは死ぬんだよな」と冗談混じりでも思っていれば、毎日毎日それが積み重なって毒となり呪いとなり、自分の人生に意味を見出せなくなるかもしれない。


冒頭の話題に戻るが、このTシャツや靴下も同じだなと私は感じた。

使用用途的に赤ちゃんはそれを数日おきに身につけるのだろう。その都度、お父さんはそれを着た我が子を目にする。

仕事でヘロヘロになって帰ってきた日も、家事や育児を積極的にやった日も、ふと気がつくと愛する我が子がそんなメッセージを掲げているわけだ。

段々と毒が呪いが、浸透していってもおかしくないなと思ってしまう。

そして、最悪の形で、その相手が自分なのか妻なのか子どもなのか関係ない誰かなのかは分からないが、爆発してしまう可能性もあるなと思ってしまう。


だから販売中止になって安堵している。

世の中にマイナスのメッセージを流すというのは控えた方がいい。

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