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裸を見られるより恥ずかしいらしい、彼女の本棚(女性の為の読むサプリ)

「こんばんわぁ。お届け物です。どなたかいらっしゃいませんかぁ。」
あれっ、返事がない。
ただいまぁー、俺、おれだよー。
うちの奥さんまだ仕事から帰ってないのかな。
いや、そんな筈ない。
今日は早番って、今朝一緒に仕事に出る時、玄関の鏡に、今年初めて着たのとか、春物のコート映しながら言ってたから。
風呂にでも入ってるのかな。
とりあえず、リビング、行こ。
あー、部屋着のまんまソファで爆睡してる。
しかも、ローテーブルに缶チューハイ、転がってるし。
俺のこと待ってる間に寝ちゃったかぁ。
でも珍しいな。
いつもなら、持ち帰った仕事しながらパソコンの前で渋い顔してたり、iPadでNetflixの韓流ドラマ観ながら
グズグス鼻かんでたり、何かしら起きてるのに。 
想像するに、早く帰った方が夕食を作るって決めた二人のルール通り、明日が休みの君はきっとウキウキしながら食材買って、ついでにお酒も買って、缶チューハイ片手にキッチンで、いい気分で料理してたんじゃないかな。
開放感マックス。
なんか、口開けて眠ってる姿も無防備でかわいいな。
そう、君は毎日気ぃ張って、仕事頑張ってるのに家に帰ってからは、グチひとつこぼさないし、職場では後輩の相談にも乗ってるって言ってた。
いつも聞き役ばかりのいい先輩でいるのも、疲れるだろうに。
自分の本棚を見られるのは、裸を見られるのより恥ずかしいって、結婚して新しい家に家具を置く時、君は本棚だけ別に、君専用に選んでた。
クローゼットやベッドは一緒なのに。
二人とも電子書籍が苦手で、君は、手のひらにくる重さと、ページをめくる感触が落ち着くらしく、読まない日も、バッグに必ず文庫本を入れてる。
出掛ける時のお守りみたいに。
心の中まで覗かれるようで、とか言いながら、でも今、君のだらりと伸びた指先にあるのは、ケーキのレシピ本?
あっ、来週のホワイトデーに何か作ってくれるのかな。
俺が逆バレンタインでブラウニー作ってあげたから?
君、パソコンはキャリア長いけど、料理系は初心者なんだよな。
ホワイトチョコ湯煎にかける時、湯気が入らないように、同じ大きさのボールを用意出来るかな。
混ぜる生クリームは冷蔵庫から出したてだと、溶かしたチョコが固まるから、作る前から出しておくんだよ。
いろいろ心配だな。
まあいいや。
君の寝顔見ながら、夕飯いただくよ。
でも、人差し指の新しい絆創膏、この焼きそば作る時にケガしたのかな。
目玉焼き乗っけてくれたから、頑張ったよね。
ありがと。


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