吉野次郎「2020狂騒の東京オリンピック」の読書感想文2

 小林まことのマンガ「1.2の三四郎2」に出てくる柔道家が「柔道を4年に1度の競技にしたくはないんだ」と言ってプロ柔道を旗揚げする話がありますが、これは「五輪のときしか見てもらえず、関心が持たれない競技には未来はない」という意味なんですよね。20年以上前にこのことに気づいた小林まことは凄い

 メダルラッシュに沸いていますが、前述の話を思い出して複雑な気持ちになります。五輪に憧れて競技を始める子供と、五輪開催以外でも競技に触れる機会があって、競技に憧れる子供のどちらが多いかというと、絶対後者だと思うのです。五輪に関係なく、見る機会があって関心を持たれる競技にならないと未来はないでしょうね。

 そもそも五輪種目になるのは、IOCの気まぐれ、胸三寸なのです。たとえば馬術はヨーロッパのセレブがやっていたという伝統があるから、除外候補にすらならないらしいです。スケートボードやバスケの3×3のようなXスポーツは、若い人の関心を惹くために五輪種目になったと聞きます。

 金子達仁は「各競技は独自の世界大会を持っているのだから、それを充実させて、五輪から卒業してはどうだろう。たとえばサッカーはW杯があるから、五輪から除外されても困らない」と語っていました。五輪からの卒業は極端にしても、五輪、IOCに頼らない競技にならないと未来はないでしょう。

 本書ではフィギュアスケートの充実ぶりが書かれています。選手育成に力を入れた結果、各テレビ局がゴールデンタイムに試合(全日本選手権、グランプリシリーズなど)をOAするようになり、フィギュアスケート協会に多額の放映権料が入り、スポンサーもたくさん着くという好循環になっているとか。協会関係者は「全日本選手権がゴールデンタイムでOAされるのはフィギュアスケートだけ」と胸を張り、五輪選考を兼ねた全日本選手権は、さいたまスーパーアリーナを満員御礼・フルハウスにしたそうです。ここまで国内で人気のあるアマスポーツは他にはないでしょう。

 全日本柔道連盟は予算の1/3が補助金だそうです。しかしフィギュアスケートは年度によっては補助金の割合は5%にまで下がるらしいです。補助金に頼らずに運営できるのは、素晴らしいことですよね。国からの補助金が減らされても、運営にダメージはないということですから。

 フィギュアスケートが五輪に頼らず注目、関心を惹く競技になった結果、競技人口も増えて選手育成の場「野辺山合宿」の希望者は定員200名を大幅に上回り、各地区で予選を実施して絞り込まないといけないぐらいになったそうです。そうなると自然に育成ができるようになるので、次々とスターが育つようになりますね。経営、選手育成どちらも好循環に入っています。

 これがアマスポーツの理想形だと思うんですよね。ソフトボールも来年新リーグを立ち上げるそうですが、HPを見る限り「五輪に頼らなくてもやっていけるようになるんだろうか?」という不安は解消されませんでした

 まず、チームに地域名をつけることを義務化していないので、このチームってどの県にあるの?と疑問が出ます。たとえば「日立サンバーズ」と聞かれて、「横浜市にありますね」と即答できる人はマニアだけでしょう。鹿児島ユナイテッドがどこにあるか?と聞く人はいないでしょう。地域名を着けることの最大のメリットは、チームがどの県、都市にあるかを説明する必要はないということです。せめて、プロ野球のように地域名+企業名にすればいいのに。

 チームも愛知県に4チーム、群馬県高崎市に2チームと偏っているのも気になりますし、スケジュールも夏休みに入り興行的にも書き入れどきの7月から8月三週目までオフにしているので、「興行として大丈夫なのだろうか?」と不安になります。

 五輪を見て、塁間が短いからこそのスピード感や、スタメンの選手は再出場できるので戦略に頭を使うと、野球にはないソフトボールの魅力を感じたので、JDリーグは僕の不安を打ち消すぐらい頑張って欲しいですし、「五輪はついで」と呼ばれるぐらい充実して欲しいですね。

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