May Fair
実家の愛猫ちびは2004年5月15日に生まれた。
その一週間は雨続きだったが、久々によく晴れた日だった。
突然この世を去った友達を、見送る日だった。
学校を卒業してから久々にそろった仲間と電車で滋賀へ向かった。
学生時代のようにたわいのない会話をしていたら、あれ?今日はどうしてあの子がいないんだっけと考える。
直後にどうしようもない悲しい気持ちが流れ込んでくる。
ああ、そうか、今からあの子に会いにいくんだ。
見送りに行くんだ。
電車の中で何度も、心が錯覚をおこした。
もうあの子がこの世にいないということを、理解していても理解していない。そういう感じだった。
もう笑わないあの子の顔。
あの子の頬にやさしく触れる、お母さんの微笑み。
あの子の親友の、寂しい笑顔。
どこまでもきれいに晴れた青空が、目に染みた。
忘れることはない、大切な日の記憶。
その日の夜、我が家の愛猫ふくが出産した。
その中の1匹がちびだ。
消える命と、生まれる命。
生まれ変わりとか、そういうのではない。
あの子はあの子。ちびはちび。
代わりはいない。
どこにも。
ちびは今年で、15歳になる。
5月のやさしい風と美しい緑の中、ちびと私は今日も生きている。
オリジナルのイラストや写真と共に、旅やグルメについて語ります。サポートしたいと思えるようなコンテンツを生み出せるよう、コツコツ楽しみたいと思います。