「公法上の契約に類した契約」を巡る迷走について

5月1日付の監査結果で若年被害女性等支援事業に関して問題がないことが確認されている「公法上の契約に類した契約」を巡る論点については、宇佐美典也、川松都議、暇空らが誤った想定で「追及」しているために議論がぐちゃぐちゃになっている。

この件については都議会で取り上げられた時期に論じており、そこでの私の推測が当たっていたのだが、その跡付けを含め、経過を振り返っておく。

論点そこじゃないんだよなあ。福祉保健局の対応状況として「局内規程を整備」としており裏返せば不備があったということ。川松都議は「小池知事より遥か以前に内部通知が出ている」とツイートしており、この通知に不備があったのだと思われる。

そして、その不備に福祉保健局も財務局も気づかぬまま代々引き継がれ、契約手続きが行われてきた。R4年度は幅広い分野の8事業等の11件が委任を受けずに契約されており、ここからも実務として定着していたことが窺われる。

であるので、まずは事実確認としてR3年度以前の契約状況を確認する。同時に、「局内規程を整備」の具体的内容と従前有効だった規程等(川松都議の言う内部通知含む)を確認する。その上で、従前有効だった規程等が策定された経緯を確認する。ただし、どこまで追えるのかは分からないが。

一方、当該規程等の策定に当たっては後に齟齬が生じることを避けるため、財務局に意見照会するなり確認されるなりしているはずで、当該規程等の写しは財務局も保有しているはず。両局間に何らかの了解がなければ、福祉保健局だけでなく財務局も長年気づかなかったということは考えにくい。

若年被害女性等支援事業の問題又はR4年度の問題にする前に、まず以上の事実確認をして問題の所在を明らかにすべき。


川松都議のYouTubeで平成18年通知のことはよくわかったが、令和4年度は若年被害女性等支援事業以外にもこれだけあるのに「WBPC」と言うのは恣意的。令和3年度以前の同局の契約の実態を明らかにすることが先決。「このやり方まずかったの?」「毎年あるよ」というのが福祉保健局の実際だったのでは。

平成18年通知を読んでYouTube見直した。川松都議が趣旨、考え方は良かったというのは1の「公法上の契約」に関してであり、「法令に根拠」「手数料」は1。問題は2「公法上の契約に類した契約」だし、令和4年度の13件は「公法上の契約に類した契約」。川松都議はなぜか「公法上の契約」と繰り返した。

契約管財課と事業所管課の役割に係る3について、川松都議は「基本的には」「原則的として」を読み上げつつ、3を若年被害女性等支援事業に当てはめて論じる時には3と「違う」「矛盾する」プロセスでなされたと強調した。なお、この間もずっと「公法上の契約」と言っていた。

川松都議が誤解しているのは、平成18年通知の趣旨が引き継がれなかったとした点。最初から2として「公法上の契約に類した契約」が立てられていて、「法令に直接的な根拠は有しなくても」「国の要綱や通知に具体的な根拠を有する契約」が該当すると明記。まさに若年被害女性等支援事業は該当。

ここは専門家に解明、解説して欲しいが、「公法上の契約に類した契約」という概念は東京都が案出したようには見えるし、現時点で明らかになっている限りはその初出がこの平成18年(2006年)の福祉保健局の内部通知であるようだ。

「公法上の契約に類した契約」の概念を案出した意図を辿るのは難しそうだが、福祉保健局の担当には厚労省などの要綱等による事業が多いという事情からかなと推測したくなる。ただ、通知発出に際して財務局等に意見照会や協議などせず独断でそうしたのかは気になるところ。

あと、「公法上の契約に類した契約」という概念を福祉保健局内部だけであるいは都庁内部だけで案出したのかも素朴に気になるけど、試みに「国会図書館サーチ」で横断的に検索しても論文・記事含め全くヒットせず、ガーシー元議員の主意書だけ…。

「公法上の契約に類した契約」は「WBPC問題」ではないし小池都政の問題とするのも苦しい。通知発出当時の石原都政の問題だとも考えられない。ましてや「公金チューチュー」のような話であるはずもない。もっとミクロな、契約事務負担の問題だったのではないか。直感だが合理的に可能性を潰していくとそうなる。


平成18年福祉保健局内部通知における「公法上の契約に類した契約」とは、
・「個別の法令に直接的な根拠は有しないが」
・「国の定める基準に基づいて全国一律の内容で契約することを求められるなど、公法上の契約に類したもの」で
・「国の要綱や通知に具体的な根拠を有する契約など」

①→若年被害女性等支援事業は内部通知2にまさに該当。まさに宇佐美典也が理解できないだけ。
②→昨晩の川松都議もそうだが内部通知3の「基本的には」「原則として」という文言を無視して初めて成り立つ主張。「基本的には」「原則として」等を入れて幅を持たせるのは官僚文書の特徴。

闇かどうかは主観的な価値判断で、事実関係を揃えるまで軽率な判断は控えるべき。令和4年度の若年被害女性等支援事業以外の7件の契約の事実関係を確認するのと令和3年度以前の契約実態を明らかにすることから。自治体の1部局が「公法上の契約に類した契約」という概念を案出したのは確かに大きなこと。

何でこうなる???こうやって妄想的仮説のフィルターで見るから違う方向に決め付けていくのよ。

批判する気にもならないが、この男が国会議員にも都議会議員にも「知恵」を貸している。

東京都はまず令和3年度以前の公法上の契約に類した契約について遡れるところまで積極的に公開するところから始めて欲しい。妄想にキリがないから消極的に構えていると手が付けられないことになりうる。


都議会における「WBPC問題」追及のラッキーパンチの副産物として「公法上の契約に類した契約」の存在や福祉保健局の内規・実務に係る不備が明らかになったという経緯であって、本来であれば「WBPC」問題という立て方から「公法上の契約に類した契約」問題という立て方に切り替えるべきだった。

繰り返すが、まずすべきは「公法上の契約に類した契約」概念の案出や適用について先取り的に悪意を想定せず、古い話で限界はあるが内部通知発出の経緯や趣旨、令和3年度以前の同契約の適用事案の特定・確認、それらと令和4年度の他事業について同契約が適用された理由等の確認であるはず。

それらが明らかになっていないにも拘らず、若年被害女性等支援事業を「公法上の契約に類した契約」の典型的・象徴的事例としたり、特異な処理がされたかに論じたりするのは全く合理的ではなく正当性を欠く。たまたま若年被害女性等支援事業きっかけで同契約が知られることとなったに過ぎない。

「優遇して事業委託している」は事実誤認であるし、そう疑う合理的根拠はない。

なお、福祉保健局内部通知は、全国一律の内容で契約することを求められる「など」、公法上の契約に類した契約が相当数存在するとし、具体的に、国の要綱や通知に具体的な根拠を有する契約「など」と例示。

都の答弁もこのロジックに沿っていた。「全国一律の内容で契約することを求められる」というのは「求める」という行為だけを指すものでない。「国の定める基準に基づ」くということであって、それが「国の要綱や通知」などにおいて具体化している。ロジックを辿り損ねて誤読。


結局、宇佐美典也が繰り返しているこれが論理のすり替え。都は「国の要綱に基づく事業であれば全国一律の内容で契約することが必要」との認識であるということ。行為としての「求める/求められる」ではない。また、答弁書は要綱「においては」は契約のあり方について「特に定めていない」としたのみ。

平成18年福祉保健局内部通知の、特に「公法上の契約に類した契約」概念が案出されたことの背景として、自治体業務のアウトソーシングの拡大があるかもしれない。人は増やせない(むしろ減らされる)中で契約事務負担は増えるということからの「知恵」だったのかも。市場化テスト法施行がこの年だった。

「癒着」の証拠はないし、そう推測できる合理的根拠もない。「公法上の契約に類した契約」がそのように使われてきた証拠も、そう推測できる合理的根拠もない。ラッキーパンチで「公法上の契約に類した契約」に辿り着いたのだからまず令和3年度以前の適用例を確認すればいいのに。願望的仮説で台無し。 


大げさに言っているが、都の内部手続きに瑕疵はあったが契約自体は有効に成立しており、追認により瑕疵は治癒したというものであるし、契約行為にも追認にも不合理な点は認められないというのが都庁と監査委員の判断。そして以上は累次の判例、下級審判決と整合している。

宇佐美典也のツイに新しい情報はない。福祉保健局の内部通知が発出された経緯の検証、令和3年度以前の該当契約の確認、問題が見逃され引き継がれて契約事務手続きが行われてきたことの検証は必要だが、「不正」「横行」と騒ぐ話ではない。

何か明後日の方向で盛り上がってて理解ができない…。地方自治法違反の問題は生じていないというのが都庁及び監査委員の認識であるし、判例・下級審判決とも整合的。

福祉保健局の内部通知は平成18年(2004年)の石原知事時代のものであるし、「公法上の契約」「公法上の契約に類した契約」の定義は最初から変わっていない。繰り返すが、故意を含意する「横行」を用い「政治的圧力」を疑う合理的な根拠は示されていない。

合理的な根拠なく大袈裟なこと言ってないで、まずは令和3年度以前の該当契約を確認することが先だし、恐らく都庁内部では平成18年福祉保健局内部通知に則った契約を洗い出して粛々と追認手続きは済ませているのではなかろうか。

川松都議の質疑直後に予想した通りの展開だよね。この時点で「WBPC問題」「不正」「疑獄」というフレームをやめ、都の契約手続きの問題、内部手続きの問題として実態解明をし是正策を講じようという議論に転換していたらもっとすんなりと運んでいた。

福祉保健局の内部規程の不備が特定されて整備され、既存契約に係る手続き上の瑕疵も追認で治癒された。問題の起点は平成18年の福祉保健局内部通知で、令和4年度の各契約含めこの通知に則って契約事務手続きがなされてきた。5月1日付監査結果も以上の事実関係を踏まえ、契約の有効性に不合理な点はないとした。この点は監査結果が引いたものを含め、関係する判例や下級審判決と整合的。随意契約についても、不合理な点はなく、裁量権の逸脱又は濫用に当たらず、違法・無効でないとしたが、この判断も判例と整合している。

以上に対して暇空も宇佐美典也も、不合理な点があり裁量権の逸脱又は濫用があるという根拠を何ら示せておらず、主観的に喚いているだけだし、法令と判例の理解を欠いている。また、「平成18年」にあえて触れないようにしているように見える。他の者もただ「無権代理」等の言葉に引っ張られているだけ。


最初から言ってるけど「公法上の契約に類した契約」が出てきたのはラッキーパンチ。3月時点で「WBPC問題」という立て方をせずに精査していればもっと早く実態解明できただろうに。「パンドラの箱」なんてことはなく2006年(平成18年)当時の福祉保健局関係の契約一般を巡る状況から探る方が建設的。


「令和4年4月1日から契約締結の日までに行われたもの」つまり本委託契約の対象である令和4年度内に行われたものは「この契約により実施されたものとみなす」。何の問題もない。こうするか契約始期を4月1日にするか書き方の問題。この扱いを否定したら自治体でも国でも相当数の契約で困ることになるぞ。

福祉保健局の契約手続きに問題があったことは認められているが、ポイントはそれに不合理な点があったか、そして追認することに不合理な点があったか。監査結果は判例や下級審判決も参照して不合理な点はないとした。主観的に疑問だと繰り返してもフェーズが違う。

oppはいつももっともらしく書いているけど、相当主観的な評価、推測が入っているし各事業の特質への理解は不足しているように見える。

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