5年前に書いた小説を公開してみた【木瀬良さんは今日も一人】裏話
5年間でここまで価値観が変わるのか。
それが、この小説を読み返して思ったことだった。あまりの衝撃に、過去作は手を加えずに、そのまま出そうと思っていたにもかかわらず、はじめに注意書きを添えてしまったほどだった。
幸せは人の数だけあっていい。何歳まででも処女でいい。
男なんていなくていいし、自分ひとりで幸せなら、大切な人がいなくてもいい。
多様性の文化が広がり、個人を個人として尊重する。そんな意識を強く持っていたが、これは世間が代わっていく流れのなかで、私自身が、「そうだよな」「確かにそのほうが良いな」と変化していった証なのだと思う。
善い変化だと思う。
だが、私は本当に、私の意志を持っているのか、世間が良いと思うものを、知らず知らずのうちに吸い上げて、うっすらと染まっていき、果ては完全に染まり切ってしまっているだけではないだろうか。
そんなことをつらつらと考えてしまう。
きっと私は、生まれる時代が違えば、違う考えを持ったのだろう。
だが、そのことを自覚したことによって、自分軸により判断することが、これから可能になるかもしれない。
きちんと、自分の頭で考えること。
今後の5年間で、どんなふうに自分が代わっていくのか楽しみになる。
小説を書き、残していくという事は、その瞬間瞬間の時代を抜き取ること。その時自分が考えたり、大切にしたり、嫌だなと思ったり、感情を揺さぶられたあれこれが、そのまま形を残しているのは、やはり、良いことだと思った。
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