見出し画像

「多接合型太陽電池応用に向けてシミュレーション活用」研究室紹介 Vol.4

名古屋大学大学院2年生の伊藤君に研究についてインタビューをしました。

「シミュレーションを活用して最適な薄膜作製プロセスを探求」

<研究テーマ>
「印刷と焼成で形成したSiGe薄膜の多接合型太陽電池応用に向けた研究」

現在最も普及しているシリコン(Si)太陽電池は比較的安価に生産することができますが、Siのバンドギャップ1.12eVに対応した波長の光しか吸収できないため、理論限界効率が約29%であると言われています。
一方、異なるバンドギャップを持つ材料を組み合わせた「多接合型太陽電池」ならば幅広い波長の光を吸収できるため、シリコン太陽電池の理論限界効率を超えた性能が期待されています。

「多接合型太陽電池」はシリコン太陽電池を超える高効率化が可能ですが、ボトムセルに必要なGe基板が高価なため大規模普及に繋がっていません。
そこで私の研究では、SiGe薄膜を印刷・焼成という簡単で高速なプロセスで作製し、SiGe薄膜中の組成変化をシミュレーションと実験を比較しながら、よりよい作製条件を見つけることを目指しました。

「安価で高効率な多接合型太陽電池の実現に向けて」

実験は以下の手順で行いました。
 ①ペースト印刷(2種類のペースト)
 ②アニール(温度700-1000℃、保持時間1-10分)
 ③観察・評価(断面研磨⇒断面SEM-EDX)
 ④凝固シミュレーションと比較(Schel-Gulliverモデル)

まず、Si基板上にAl-Geペーストを印刷します(①)。
次に、焼成することでSi基板上にSiGe薄膜をエピタキシャル成長させます(②)。

SiGe薄膜のSEM像とGe組成プロファイル

上図<SEM像>より、Si基板上にSiGe薄膜を成長させたことが分かります(③)。
最後にSiGe薄膜の組成変化を測定し、シミュレーション値と実験結果を比較します(④)。上図<Ge組成プロファイル>より、シミュレーション値・実験値ともにアニール温度が高くなるほど基板からのSi溶解量が増加し、SiGe薄膜の組成・膜厚に大きく影響することが分かりました。
本研究より、作製条件を効率的に探すことができると考えられます。

次のステップとして、安価で高効率な多接合型太陽電池の実現に向け、欠陥をふせぐことができる作製プロセスが求められています。
今後は、欠陥観測のできる測定装置の作成に取り組んでいきたいと考えています。

「就活、研究、学会参加…妥協のない研究室生活を目指して」

研究室のメンバーは研究や就活に妥協せず取り組んでいます。自分一人だとサボってしまいそうな時でも、研究室で頑張ってる仲間を見ると自分も頑張ろうと思えるので、日々研究に励むことができます。

研究室の過ごし方

就職活動ではメーカーの研究開発職を中心に活動し、2週間のインターン参加の後、内定をいただきました。これは日々の研究活動や先生方との議論で鍛えれたおかげだと思います。
今後の目標は、国際学会に参加するメンバーも多いため、自分も負けずに参加していきたいです。

<研究実績>
2023年11月 材料フォーラムTOKAI(名古屋)
2024年3月 応用物理学会(東京)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?