若く思われる方法
若く見られるではなく、 若く思われる方法。
手法は難しくはない。
むやみに古い話に同調したり、懐かしんだりしない、というものだ。これまで、なんなら嬉しそうに、リアルより少し年上のお姉さんやお兄さんから知り得たキャラクターや歌手、生活スタイルの話まで参戦してきて、損してるかも、と感じた。
今の生活で、話すといえば、よく行くスーパーとか、ときどき行く喫茶店とか、たまに行く何かのお店程度だ。他愛ない会話が、今のささやかな楽しみだが、わざわざ年をさらけ出すこともないか、と気をつけるようにしてみた。
まあ、10歳以下で体験したことを知らないフリを
すればよいだろうか。
先日、母が財布を欲しいというので、ファッション&雑貨のようなお店で財布を見ていた。そこにカセットテープを模した小さな小銭入れが売られていた。
おお、懐かしい。最近カセットテープモチーフのもの多いな~って思ったところで、はっとする。
あぶない。むやみに懐かしさに驚嘆してはいけない。
そして、母にこう言ってみた。
これって、カセットテープっていうんでしょう?
リアルには知らないけれど、知識と知っている私は偉いでしょう?エッヘン、というスタンスだ。
カセットテープはもちろん知っている。
そのことを母も、もちろん知っている。
CDを最初に手にしたのは小学生の頃だ。
電気屋さんが来て、
大層なCDプレーヤーを
レコードデッキとカセットテープデッキの間に
設置し、スピーカーとつなげた。
それでもカセットテープはまだ主流だった。
中学生の頃は、友人たちとはカセットテープでやり取りをしていた。ダビング。TUSTAYAで借りたCDもカセットテープに録音していた。
高校生の時はどうだったか?音楽の先生が卒業祝いに下さったのは、カセットテープだった。ポストイットに赤マジックで祝と書かれていた。
まだカセットテープあったのね。
.....
学生時代は....
思い出してみよう。もうなかったはず。
あった。NHKのドイツ語のラジオ講座。放送時間に聞けなくなり、録音のカセットテープを買っていた。??音楽は100%CDだったはずだ。
驚いた。今となってはもっと前になくなっていたと思っていたのに。カセットテープを知らないフリは厳しいな、と思う。
さて、
先程の話に戻るが、
カセットテープを知らないフリをした私に
店員さんが話しかけてきた。
ふつうのカセットテープは
もう少し大きかったんですよ、と
手指でカセットテープの大きさを示して
下さった。
はい、知っていますとも、知っていますとも。
あっ、だけどうまくいったわ。
カセットテープを知らない世代にみえたかしら?
あんぐりな母と、気分をよくした私。
ヘラヘラしながら、財布を見て回り、
手ごろな良いものを見つけ、母ではなく私が久しぶりにお財布を新調することになった。
なんだか嬉しくて、若く思われた話を何度も
家族に、いっしょにいた母にもしつこく語った。
でも、今、思ったのだ。
意図せずとも結果的にサバをよみすぎた。
すべてお見通しの店員さんのほうが上手だったかも。
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