タケルのお兄ちゃん記念日 第2章 -ファミリーヒストリー-
バスの中はとても静かだった。タケルも黙っていたし、運転手もトンネルに入ってからはぴたりと静かになった。トンネルの中は真っ暗で、明かりといえば、白い蛍光灯と、時折見える非常口の緑色のランプのぼんやりとした怪しい光だけだった。緊張しているせいか、タケルは金縛りにあったような感覚になり、自分が動いているのかいないのか、体の感覚がよく分からなくなっていた。
沈黙と緊張の中、バスはぐんぐん暗闇の中を進んでいる。
どれくらいの時間が経っただろう、タケルの体感覚としては、トンネルに入る前