うさ子とメイ

うさ子とメイ

マガジン

  • お絵かきシリーズ

    昔スケッチブックに描いた絵を少しずつアップしています。

  • タケルのお兄ちゃん記念日

    小学校6年生のタケルは、4歳になる妹ちえみの誕生日プレゼントを買うために一人でバスに乗る。目的の府中駅へたどり着こうとしたところ、バス停に停まらず走り続ける「ノンストップバス」に乗ってしまったことに気が付き、慌てるタケル。走り続けるバスの中で、不思議な体験をする。

  • ゲン太くんのくれた花

    多摩川の近くの小学校へ通うゲン太は、登校中、一学年下の天真爛漫で空想が大好きなナナミがいじめられているところをたまたま目撃する。意図せずナナミを救ったゲン太は、ナナミの担任から彼女のお守りを任される。ナナミの空想力に圧倒されながらも、犬や花を通して交流を深めていき、ナナミの成長を見守る物語。

  • エンジェルドクター

    天使の子・ナツホと、地球の子・ハルヒの物語。 地球に派遣された天使の子・ナツホは、病気をわずらうちいさな女の子・ハルヒに出会います。たくさんのコンプレックスをかかえながらも、ハルヒを癒やそうとするナツホと、ナツホがくり出す魔法に興味しんしんのハルヒとの、心あたたまる物語。

最近の記事

やつ次郎の種のゆくえ

ヤツデのやつ次郎は、東京のとある家の南向きの庭に生まれた。 手のひらのように裂けた大きな葉を太陽に向けて思い切り広げ、やがて花をつけ実をつけるほどまですくすく成長した。 ある年の春、庭へ一羽のヒヨドリが毎日やって来るようになった。 そのヒヨドリはやつ次郎の重なり合った葉の間をまさぐり進み、よく熟した黒い実が成っているのを見つけると、その実をくちばしの中にまるごと飲み込み、食欲が満ち足りるまでその場で食事を楽しんでいくようになった。 やつ次郎は、このヒヨドリをひそかに「ヒ

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      お絵かき7

      • 山椒のばあちゃん

        もみもみ、もみもみ。 何だい、あんた。失礼な子だね。 あたしのこと、いきなりさわってきてさ。 何だいあんた、あたしのかぐわしい香りに、気がついたのかい? あたしの葉を勝手に引きちぎって香りを楽しもうとする無礼なやつもいるけど、あんた、意外と礼儀正しいじゃないか、気に入ったよ。 あたしの香り、気に入ったのかい?そりゃあけっこう、けっこう。 あたしもまだ捨てたもんじゃないね。 そりゃああたしはさ、バラのように他の虫や蝶やあんたら人間らを引きつけるような派手な花は咲かせないよ

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          お絵かき6

        やつ次郎の種のゆくえ

        マガジン

        • お絵かきシリーズ
          7本
        • タケルのお兄ちゃん記念日
          3本
        • ゲン太くんのくれた花
          5本
        • エンジェルドクター
          6本

        記事

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          お絵かき5

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          タケルのお兄ちゃん記念日 最終章 -家族みんなで-

          光から抜けると、タケルはとても見慣れた場所にいた。自分の家の中だ。家の中はしんと静まり返っていて、電気もついていない。どうやら誰もいないようだ。外を見ると、日が傾いて夕方になろうとしていた。ベランダから見える公園のグラウンドでは、野球の練習試合をしているようで、子どもたちや親の声援が窓越しにかすかに聞こえてくる。 今度は一体何だろう。やっぱりあのバスに乗ったのは、ただの夢だったんだろうか。 タケルは見慣れた室内を見渡した。すると、タケルはある異変に気が付いた。この部屋には

          タケルのお兄ちゃん記念日 最終章 -家族みんなで-

          タケルのお兄ちゃん記念日 第2章 -ファミリーヒストリー-

          バスの中はとても静かだった。タケルも黙っていたし、運転手もトンネルに入ってからはぴたりと静かになった。トンネルの中は真っ暗で、明かりといえば、白い蛍光灯と、時折見える非常口の緑色のランプのぼんやりとした怪しい光だけだった。緊張しているせいか、タケルは金縛りにあったような感覚になり、自分が動いているのかいないのか、体の感覚がよく分からなくなっていた。 沈黙と緊張の中、バスはぐんぐん暗闇の中を進んでいる。 どれくらいの時間が経っただろう、タケルの体感覚としては、トンネルに入る前

          タケルのお兄ちゃん記念日 第2章 -ファミリーヒストリー-

          タケルのお兄ちゃん記念日 第1章 -ノンストップバス-

          「行ってきまーす」 タケルは家を飛び出した。近くのスーパーまで、少しだけ、早歩きしていた。 今日は妹ちえみの誕生日。 府中駅まで行って、ちえみの大好きな、小さなこんぺいとうを買ってあげようと思っているのだ。 小学校6年生のタケルには、ちえみとやまと、二人の兄弟がいた。 ちえみは今日で4歳になる。やまとはこの前2歳になったばかりだ。 ちえみはおてんばだけど、活発でかわいい子だ。お人形遊びと同じくらい、幼稚園の男の子たちと外で鬼ごっこしたり、縄跳びをして遊んだりするのが好きだ

          タケルのお兄ちゃん記念日 第1章 -ノンストップバス-

          ゲン太くんのくれた花 最終章 -手紙と花-

          オレは結局ナナミに本当のことを言えないまま、卒業式の日を迎えてしまった。 両親と一緒に学校へ来たオレは、他の奴らと同じく、校門の前の「卒業式」の看板の前で写真を撮った。下駄箱まで行くと5年生が担当する受付があり、受付を済ませると、「卒業生」と書かれた造花つきのバッジをつけてもらった。卒業式が行われる体育館へ行く両親と別れ、着慣れない薄いグレーのブレザーの左胸に「卒業生」バッジをつけたオレは一度教室へ向かった。 教室で担任からのありがたい話を聞いた後、クラスの奴らと並んで体

          ゲン太くんのくれた花 最終章 -手紙と花-

          ゲン太くんのくれた花 第4章 -新しいお友だち-

          バザーの翌日、学校へ行き、自分の机にリュックを置いて教室を見渡すと、オレの方をちらちら見ている奴らが何人かいた。どこかいつもの朝の教室の雰囲気と違うような気がしていた。 「おいゲン太、お前あのガキみたいな5年生と一緒に出店やったんだって?休みの日によくやるよなー、顔に似合わずお守りのボランティアかよ」 よくオレに突っかかってくる男子グループの一人が嫌味っぽく言ってきた。オレは軽くにらんだが、いつものように無視した。チャイムが鳴ると同時に担任が教室に入ってきたので皆静かに席

          ゲン太くんのくれた花 第4章 -新しいお友だち-

          ゲン太くんのくれた花 第3章 -バザーに出よう!- 

          「ゲン太くーん、おっはよーう!!」 登校中の橋の上で、ナナミは今朝も後ろから走ってきて、オレの目の前に現れた。ナナミは5年生、オレは6年生になっていた。 「今日もはりきっていっきましょー!」 ナナミはメダカの世話係になったらしく、毎日朝早く教室めがけて登校するようになった。相変わらず友だちは少なそうだが、ナナミと話している子をたびたび見かけるようになった。クラスが変わって、いじめが少し落ち着いたようだ。担任も変わらず岩田先生で、オレはひそかに安心していた。 それでもナ

          ゲン太くんのくれた花 第3章 -バザーに出よう!- 

          ゲン太くんのくれた花 第2章 -カメ王国のカメ太郎-

          「おーい、ゲン太くーん!!」 ナナミがぴょんぴょん飛びはねながら、今日もオレとゴン太のところへ来た。相変わらず髪を高い位置で二つに結んでいる。今日は紺色の太いボーダーの長そでTシャツに、くるぶしまである淡い黄色のパンツをはいていた。小柄でしゃべることも幼稚なナナミは、一つ学年が上がって4年生になっても、小学校低学年くらいに見える。 「緑がたくさんだねぇ。ナナミ、今の季節好きだなあ」 多摩川沿いの遊歩道を散歩しながら、ナナミは嬉しそうに言った。 「ほら、あれタンポポ。花

          ゲン太くんのくれた花 第2章 -カメ王国のカメ太郎-

          ゲン太くんのくれた花 第1章 -ナナミとの出会い-

          「おーい、ゲン太くーん!!」 後ろからバタバタと走ってくる音と、ハッハッと息を切らす音。振り向くと、ナナミが赤いランドセルを上下に大きく揺らして走ってくる。お気に入りの赤い水玉模様のTシャツと、ひざ上丈の短パン姿。今日は髪を二つに結わいている。 「ゲン太くん、おはよーう!!ねえ、昨日も先生に怒られてたでしょ。わたし、廊下で見ちゃった。」 ナナミは朝いちばんにそんなことを口にした。相手の気持ちなんておかまいなしに、目をキラキラさせて、人が話したくないことを悪びれもなく言っ

          ゲン太くんのくれた花 第1章 -ナナミとの出会い-

          あったかいアンカー

          やあ、ぼくはアンカーだよ。 いつもとしひろの足をぬくぬくあっためているんだ。 あ、としひろっていうのは、ぼくんちの8さいの男の子だよ。寒がりだから、11月ごろからいつもぼくをふとんの中に入れて、冬のあいだ、足をあたためてねているんだ。 さあ、今夜も寒くなりそうだぞ。 としひろの足をあたためるために、今日もひと仕事! ...あっ、としひろ!そっちじゃないよ! もう、いつも寝ぞうが悪いんだから。 ふとんからはみ出して寝たら、風邪ひくよ! どうしよう、このままじゃ、としひろ

          あったかいアンカー

          エンジェルドクター 最終章 -空を飛んで-

          みんなそれぞれ身じたくをして、テントの外へ出ました。おじいさんは、まだ少し用事があると言って、テントの中で、ひとりあと片付けをしています。空は高く青くすんで、太陽の光が、丘から見える町をキラキラ照らしていました。 「よーし、そしたらオレもひと仕事するか!」 ひとりごとのように大きな声でそう言うと、エルはうーんと伸びをして、肩をまわし始めました。 「あの、私は何を手伝ったらいいの?」 ストレッチを続けるエルに、ナツホが後ろから話しかけました。 「お前さ、三人乗れるくら

          エンジェルドクター 最終章 -空を飛んで-