新・サンショウウオ戦争

第三章 世界戦争

12 中米地域での戦闘
 次にHDが目をつけたのは中央アメリカの水域だった。南はトリニダード・トバゴから北はプエルトリコにかけて、大西洋との境界に位置する小アンティル諸島は一晩のうちにHD軍に制圧され、カリブ海沿岸地域はHDの支配下に入った。だが、多くの軍事評論家の予測では、膨張するヒュマンダ人口はこの海域から溢れ出し、数年後には北上してメキシコ湾にいたる水域を領海に組み入れるだろうと思われた。
 喉もとにナイフの切っ先を突きつけられたかたちのアメリカ合衆国はカリブ海沿岸のジャマイカ、ホンジュラスをはじめとする各国政府に当該海域の封鎖を依頼し、かつ自国の第四艦隊を駐留させて、ユカタン海峡の守りを固めた。ところが、HD軍は直線的な進攻作戦をとらず、迂回して東はフロリダ海峡から海を通り、西はテワンテベク地峡から陸地を越えてメキシコ湾へと流れ込んだのである。アメリカ合衆国を長とする連合軍はHD軍を背後から追いかけるかたちとなり、南部のニューオリンズ周辺に広がる湿地帯を自ら攻撃しつつミシシッピ川に沿って北上した。HD軍がメンフィスに達したとの報告が届いたとき、第四艦隊司令部はマイアミから北に向けて移動中だったが、その頭上を同盟国キューバ艦隊から発せられたミサイルが東海岸に向けて飛んでいった。


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