新・サンショウウオ戦争
第三章 世界戦争
15 世界の終わりの片隅から
チベット高原の粗末なレンガ積みの家に、ひしめくようにして暮らしていた一群のヒトのなかに、ひとりの少女がいた。夜空を見上げていたとき、大きな火の塊が現れ、南の山並みへと流れていった。少女は目にしたもののことを周りの大人に伝えたが、それが意味するものが何なのか、誰も知らない。少女は山を一つ越えた向こうの村に住むという老人に聞いてみようと思い、家を出た。老人はものごとをよく知っているらしい。
「世界の終わりじゃ。」
少女は信じなかった。もっとよく知っていると噂のある、さらにもうひとつ山の向こうに住むひとに聞いてみようと、足を向けた。
そうやって南へ南へと進んでいくうち、異臭がただよい始め、次第に強くなっていく。――もしかして、これが海というものだろうか。なんて臭いの!
それでも彼女は南下を続け、ついに目の前に広い水域が開けた。凪いでいる。言い伝えに聞いてきたヒュマンダやヒュマンダといった生き物はどこにいるのだろう。