新・サンショウウオ戦争

第三章 世界戦争

6 日本海海戦混戦
 対馬海峡でも、ほぼ同時刻に砲撃が始まった。しかも、日韓の両司令部は連携がなかったために、レーダーに映るその船体が正体不明の敵艦なのか日本または韓国の軍艦なのかを見極められず、手も足も出せない状態に陥った。その間にも、日本艦十一隻、韓国艦九隻が複数の大型艦からのミサイル攻撃を受けて撃沈もしくは航行不能に陥る。ようやく一時間後、各国司令部は応戦命令を発し、ミサイル・機雷での攻撃を開始。だが案の定、日韓見分けのつかない混戦となり、ついには日本の護衛艦しんみょう(DDH)のミサイルが韓国のイージス艦李忠成(イチュンソン)の主砲をふっとばすという事態に立ちいたった。その直後、韓国軍艦斐勇准(ペヨンスン)が不審船に照準を合わせていたはずの魚雷で日本のミサイル搭載護衛艦たんば(DDL)の船腹に穴を開けると、海峡をはさんだこの両国の間に緊張が走った。

 二十世紀の日本による朝鮮の植民地化以来、両国の関係はこれまであまり和やかではない。サンショウウオに脅されてヤケ気味になった両国民が、「いっそのこと日本と(韓国と)戦争してしまえ!」と言い出すのも歴史の経緯からすると、あながちとっぴなこととはいえなかった。だが、そこにアメリカ合衆国が割って入り、両国政府に日韓で戦っている場合ではないと取り成して、両国軍の司令部に攻撃を停止させた。
「日本・韓国の両司令部に告ぐ。我々のレーダーでは不審船の船影はすでに対馬海峡にはない。同海域にいるのは日韓の軍艦のみである。自力で航行できる艦はそれぞれの基地に戻られるがよい。航行不能となった艦は、わが合衆国海軍が曳航してさしあげる。」
 韓国・昌原市鎮海と日本・長崎県佐世保から出航したアメリカ海軍の巡洋艦隊はすでに、対馬海峡に入っていた。彼らもまた援護を口実に情報収集を行なっていたのである。

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