問答日記⑧
結局何もわからない。何ひとつはっきりわかるものがない。証拠はたくさんあるようで、どれもふんわりしていて決め手に欠ける。はっきりしたものが何もないから、ありとあらゆる可能性を想定してみるしかないわけで、そうしてしまうと余計に答えは出せなくなる。
唯一わかるのは、私の目の前で突然動揺してしまった姿は、確かに現実に存在していたということと、その姿はこれまでにほかに見たことのないくらい、愛らしいものだったということくらいである。
そうだ、こんなに愛らしいものがあったなんて私は知らなかった。動揺してしまって、その瞬間は気付かなかったけれど。
その姿が、何を原因に生まれたものなのか、どうしてもどうしても気になってしまうのは許してほしい。
そうだ、この人は知らないのだ。私がその日その場にいた理由を。
因果関係の立証は当然できないことではあるけど、その人と同じことをすればもう一度会えるかもしれないと考えて行動した結果、この場にいるのだということを。
純粋に話題そのものに興味があったから、彼にはあの質問をしてみた。ちょうど、何故かそんな話の流れになっていたから。
けど、頭の片隅で、もしこの質問に彼が何の反応も見せなければ、私は私の感情や期待を打ち消すことができると思った。
どんなに期待したって願ったって、私がこの人の心の隙間に入り込むことなんてあるまい。そんなことはわかっているのだけど、心というものはそんなに聞き分けがいい方ではないらしい。自分を納得させるために、私は質問をしたのだと思う。彼と私の間にある壁を可視化するためとでも言おうか。
本当に自信がなくて何もできないのは私の方なのだ。私はこの人に私の感情を知られる前に、全部終わらせてしまいたかった。はじめから視界にも入らないという事実を突きつけられる前に、自分から視界の外に出ようと思っていた。それがいちばん、この人の迷惑にもならないし私も傷付かない。好きだと言われて嫌な気になる人はいないと言われたことがあるけれど、そうじゃないことは自分の経験から知っている。もうあんな辛い思いはしたくない。
それなのに、彼はなんだってあんなに動揺しているんだろう。
決意が鈍るどころか、どうしたらいいのかわからなくなってしまった。
続く
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