問答日記①


照れていたから気になったわけではないけれど、あんなに照れているとどう頑張っても気になってしまう。

私は話題を振ろうとしただけで、実際にはほとんど何も聞いていない。私の問いかけの言葉を言い終わらないうちに、何の話題なのか気付いたらしい彼は、突然ずっとこちらに向けていた視線を逸らして、右斜め下に向けてしまった。目線が下がっているので、顔全体も少し斜めに俯いている。
ずっと丁寧に、軽快に応答していた口元は結ばれて、何も答えなくなってしまった。口角は上がったままで、表情としては笑っているのだけれど。
俯いた目はこちらを見ようとはしていないけれど、何故か大きく見開かれていく様子だった。瞳孔が開いているとはああいう状態を指すのだろうか。頬もほんのり上気していたように思うけど、それは私の気のせいかもしれない。

子供が、他愛もないイタズラを咎められそうになってバツが悪そうにしている時がこんな感じだろうか。そんな気もするけど、目の前にいるこの人はどう見ても子供じゃあない。
こんなにあからさまに照れて、いや、照れているというより動揺しているのだろうか、とにかく、そんな態度を見せる大人を初めて見たような気がする。

いや、ずっと昔、とあるテレビ番組で、似たような態度の大人の男性を見たかもしれない。司会者の失礼な質問に、その人は真面目に答えたあと、ブラウン管越しでもわかるくらいに真っ赤になってしまっていた。とても恥ずかしかったのだと思う。いくら番組を面白くするためでも、今となってはもうあんな質問できないと思うし、答えなくてもいいと思うけど、当時は生放送だったこともあって電波に乗ってしまったのかもしれない。
もちろん私はあの司会者のようなことは聞いていないけれど、あのときテレビで見た男性とこの人の態度は似通っているような気がした。ということは、この人は恥ずかしがっていたのだろうか。

人が恥ずかしがったり照れたり動揺したりする時には、それほど多種多様なパターンはない気がする。嘘がバレたとか、ものすごく褒められたとか、相手が好きだからとか、何かやましいことがあるとか、知られたくないことがあるとか。
私は何も褒めなかったし、その人が嘘をついているわけでもないと思う。では、何か知られたくないことがあったのか。

その話題を詳しく語ることはここでは避けるけれど、いわゆる「恋バナ」とは違うけれど、隣接した話題ではあった。隣接してはいるけれど、その人のプライベートに踏み込もうとしたわけじゃない。あくまで隣接している範囲のことで、しかもそれがプライベートの話題ではないことを彼はわかっているはずなのである。
彼にはあんなに動揺する必要も、恥ずかしがる理由もなかったはずなのだ。

続く

--------------------------------------------------------------------------------
主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週3、4回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

























気に入っていただけたなら、それだけで嬉しいです!