問答日記③

残る可能性は、私がその話題を聞いたから動揺したというパターンである。彼は誰であろう私にその話を聞かれたくなくて、そして私がその話題を出すとは予想していなかっため、咄嗟に誤魔化そうとして誤魔化しきれなかったという可能性である。

何故、ほとんど会ったこともない私にそこまで動揺するのか。

それは実は、彼の心の中にいるのが私だから。


それなら、その人に関して色々不思議に思っていたことにも答えが出る。偶然にしては不思議だけれど、と思っていたことが色々あったのだ。私とその人には接点がほとんどないのだから、その人はそんな形でしか接点?を持つことができなかったと考えれば、納得はできる。その件を含めても、これがいちばん答えとしては簡単で、不自然ではないのである。


しかし、このパターンである可能性はかなり低いと思う。

そもそも、ほとんど会ったことがないのだ。こういう時代なので、電子の海の中に相手の情報を見つけることは難しくないとはいえ、やはり実際に会ったことがあるかないかがこういった感情においては大きいのではないかと思う。

ただ、一度会っただけでその人が心に焼き付くという話は珍しくない。だから、実際には会った回数などそれほど重要ではないのかもしれない。平安時代には手紙のやり取りだけで相手に好意を抱いていたのだし。ろくに顔など見なくても、知性とか教養とか権力とか目に見えないものだけでも人は好意を抱けるものらしい。それは電子の海が世界中で波打つようになった時代を見回しても、そんなに変わっていないような印象がある。


だからと言って、この人もそれに該当するかどうかは何とも言えない。この人は私という存在を物理的に知るまで、私のことなど眼中にもなかったはずだ。広い広い世界の海で一瞬だけすれ違った人間にそうそう興味など持たないだろうから当たり前である。

けど、物理的に知る、つまり実際に私の顔貌を目にした彼に、そんな感情が芽生えるとは私には思えない。


私は美人と呼ばれる存在からは程遠いし、スタイルがいいわけでも女性らしい魅力に溢れているわけでもまったくない。基本いつでも挙動がおかしいので他人の印象には残りやすいほうかもしれないが、それは別の意味での印象であって、恋愛感情を引き起こすような類ではないだろう。それでも時々そういう人はいるようなので何とも言えないところではあるけど、この人に限ってそれはない気がする。何が悲しくて、この人が私にそんな感情を抱かなければならない。理由がまったくない。この人に親切にしたり落としたハンカチを拾ってあげたり魔物から救って代わりに死んであげた記憶もない。

仮にそれでも興味を持ったとしても、知れば知るほど私という人間のヤバさ加減に気づいて、彼は裸足で逃げ出してしまうんじゃないだろうか。

続く

--------------------------------------------------------------------------------
主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週3、4回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。



























気に入っていただけたなら、それだけで嬉しいです!