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涙が出てくる不思議…

別にねえ、そんなの見なくてもこまらないし、どうせネットやテレビで中継するでしょ。だいたい、暑い中立ってるより、そういう映像の方がずっと綺麗だしわかりやすいはず…と、思っていた。母を車椅子に乗せて公園まで見に行こうと思う、という友人をええ?とも思った。でも、何だか急に「これは見とかなきゃ!」という気になった。

飛行予定図を見た。うちから一番近くて、かつ、かっこいい姿が見られるのは、皇居前だと判断した。開始予定10分前の大手町には携帯やカメラを片手に空を見上げる人たちが大勢いた。20メートルおきに警察官が配置されている。そういえば近隣の県から2万人弱の警官がヘルプに来ているというテレビ情報があったな。

航空自衛隊とそのフォロワーのTwitter情報も当然見ている。いま、基地を発射しました。練馬上空で編隊を組みました…ああ、なんだか、得体の知れないワクワク感。いつくる?どんなふうにあらわれる?どこに?

きた! 声がしたけれど、私には全く認識できなかった。どこ?あそこ!え??どれ??あそこだってば…思っていたところよりずいぶん低い位置に機体が現れていた。上ばかり見ていてわからなかったのだ。予想していたよりずっと早い。ああ、すごい、あああ…カメラを向けているとすぐに画角から外れてしまう。もう撮影は諦めて少しでも見やすい位置にと軽く走った。

遠くの方でバラバラになった飛行機がカーブを描いている様子はわかった。代々木あたりで五輪を描いているのだろうと思ったが、大手町からは色も形もよくわからなかった。でも、明日の新聞には大きく載るのだろう、未来のどこかで東京オリンピックのブルーインパルスの飛行が語られるときもこの五輪が映し出されるだろう、そしてその瞬間を横から見ているのだなあと…そう思って何故だか泣きたくなってきた。ただ白い煙の渦が遠くに見えているだけなのに、私はこんなところでベソを描いている。変なの…;;

しばらくして5機は戻ってきた。より近くを五色の煙を見せながら飛んでくれているのがわかった。皇居周辺から大手町の広場に自然と拍手が起こった。手を振る人もいた。パイロット達には聞こえないし、見えるはずもないのに。そして、機体は雲に消えて行った。

感動していた。見にきてよかったと心から思った。東京オリンピック…それにかかわるイベントを私が直接見るのはおそらくこのブルーインパルスの飛行が唯一であろうと思う。そして、きっと将来誰か小さな人に「2020東京オリンピックでおばあちゃんはブルーインパルスを見たんだよ」と誇らしげに語ることだろう。

東京でまたオリンピックを!あの時の思いを!という気持ちで招致し、ボロボロの状況をつくりだした団塊おじ(い)さんたちを軽蔑に近い感情で眺めていたけれど…。ああ、これがオリンピックの魔法の一つかと実感する。

チケットを買ったわけでもなく、東京駅の外側の公園で20分くらい立って飛行機が飛ぶのを見たくらいで、こんなに高揚するのだ。じいさん、ばあさん達が、子どもや学生だった時代に、復興から立ち上がったことを象徴する「東京五輪」を見た興奮と歓喜はさぞ格別であったことだろう。無謀とも思えるほどの強引さで招致、実施にむかったエネルギーの元が少し理解できた気がする。


実行に向けて頑張ってきた人たち、成功させようと今頑張っている人たち、この日を夢見てきた人たち、…どうか平安な3週間となりますように。しーらない!というのを決め込んでいたけれど、私ももうすこし、自分ごととして楽しんだり、親しんだり、考えたりしてみようと思う。




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