なめらかなユーザーインターフェイスの実現
「なめらか」というと、表面に引っ掛かりがない様子や、大きな摩擦がはたらかずに物がよく滑る様子などを表します。UIにおいてはアニメーションの動きがなめらかだとか、コンテンツの読み込みが速いとか、絵が美しいとか、そういう直接的な印象に対してよく用いられる言葉ですが、私は「なめらかなUI」というものは、単にツルツルした表面の印象やアニメーションなどの振る舞いのみならず、それが人間(ユーザー)にとって扱いやすいと感じられる印象があり、実際に心地よく感じられ、滞りなく求めた以上の良き効果をもたらすインターフェイスの作りや、それによってもたらされるユーザー体験の印象、製品機能や業務の様子までも含む包括的な言葉としても解釈できると考えています。
「なめらか」の本来の意味から、UIに関わるユーザーが抱く印象や得られる効果に当てはめて考えてみると、なめらかなUIとは次のような事を指すのだと思います。
不安を抱きにくい
認知負荷が少ない
ストレスを抱きにくい
必要な業務を達成できる
効果的にはたらく
調和が保たれている
ルック&フィールが整っている
印象が良い
心地よい
UIは人工物の表面に露出した、人間が何かのシステムを操作するための仕組みを言いますが、「表面がなめらかである」の意味することを「ユーザーにとって、UIが滞りなく、うまく機能する」とも言い表せると気づいたときに、私はこのことをデザイン活動のテーマにしようと思い立ちました。世の中にはさまざまな製品がありますが、やっぱり良い製品・良いUIと感じられるもの全般に一致していると思うのは、その製品に触れる前の印象から実際の使い心地、使って得られる効果に至るまで、何か滞りというものを感じさせない工夫がそのデザインに多く込められている点です。何かに手間取って作業が滞るということは、そのUIは「なめらかではない」ということです。UIをなめらかにしていくための活動は、単に製品やサービスの一部の印象を良くするとかに留まらず、製品やサービスに触れた人々の活動を強く後押しし、ユーザーに効果的な価値をもたらし、結果的には社会や人類をより良き方向に発展させる未来にもつながる可能性を持つのだろうと考えています。
少しスケールの大きな話になってしまいましたが、普段からそのような大志を抱く必要はなくて、今自分が関わっている製品の設計であったり、身の回りの仕組みや業務を見つめ直して、何か引っ掛かりや滞りが目立つようであれば、そこの改善に取り組んでいくことから始められると良いのだと思います。あるいは一から何かを作り始めるときには、その製品やサービスがどの環境で動き、どのような人々に使われるのかを想定しながら、ユーザーに不快感を感じさせないデザインを志すことが大切だと思います。この取り組みの目当てを私は「なめらか」と表してみることにしました。
実際にUIをなめらかにしていくためには、次のような観点でデザインに取り組んでいくことが大切であろうと考えています。
認知負荷のないインターフェイス
ユーザーを縛らないモードレス性
情報への到達容易性(アクセシビリティ)
魔法を手にしたように感じられるユーザー体験(イリュージョン)
ルック&フィール
矛盾なき構造
処理しやすい仕組み
環境適合
文化
誠実さ
なめらかさとは具体的に何か、を問うてもイメージを掴みにくいかもしれませんが、決してなめらかとは感じられない、いけてないと思える仕組みを想像しながらその逆を行くように手を動かしてみると、その先では自然と「なめらかさ」のある世界が実現できているのかもしれません。
終わり
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