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雨宿り【一人読み・朗読】

知り合いの企画に参加した際に書いたものです。

(シナリオ原案:青汁先生) 

※使用時は利用規約をご一読下さい。

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雨の中

自分より大きな
人間の男を拾った

力なく座りこむその人を
誰もが素通りして
私だっていつもならきっとそうする

水を吸った重い身体を支えて
ゆっくりと歩く

もう
どうでも良かった

この人もそうなのかもしれない

シャワーの音が
雨音みたいに部屋に響く

出てくるのを待たず
ベッドに入り頭まで潜りこんで
身体をギュッと小さく丸めた

明日なんて
来なくていい…

外の明るさに目がさめた
彼と目が合ったけど
言葉は無い

ただ一晩
ソファと毛布を貸しただけ

狭いテーブルに
朝ご飯を二人分並べると

初めて小さく

ありがとう

と零した

玄関の前
何を惜しんだのか

ただの儀式だったのか
私からなのか彼からなのか

ゆるく抱きしめる

離れると彼は扉を開け
振り返らず去っていった

私は終わらなかった

彼も終わらなかった

ただの雨宿り

腕から
いつもの馴染んだシャンプーと
ボディーソープの匂い

かすかに
知らない彼の匂いが残った

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