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第16話 カメはエメラルド?

やはり黒陽は黒陽だ。


仕事関係者に高級寿司店の方がいるのだが、そのお店を訪ねたら「シャリが余ったが捨てたくないから少し引き取ってくれないか」と結構な量をいただいた。

食べてみるとさすが高級寿司店のシャリだけあって素晴らしく美味しかったので黒陽にもお裾分けすることにした。

後日、黒陽はそのシャリの感想をわざわざ言いに来た。

「酢の角が立つ系のシャリだね」と始まり、うんちくを語り始めたが私は心の中で笑ってしまった。

何故かと言うと、ほとんど口にしたことがないであろう程の高級寿司のシャリの味を舌が覚えている筈もないだろうし、それでも言いがかりをつけたくなる輩体質に肉体が翻弄されている陽さんは鉄板で黒陽だなという気持ちになったからだ。

類は類。黒陽とウサギは実はそっくりなんだろうなと今更ながら悟った。

「今日の焼きそば、しょっぱくなかった?」
「私もそう思いました~!」

似たもの同士の二人がこんな会話で仕事を進めれば、進まなくなるのは当然だ。その二人をめぐり合わせたのは私だけれど、その意味を私は確実に知る必要がある。

ペースは落としたが、ウサギとカメのゲームは確実に続いている。しかも神がかりな事項も視野に入れるべきだという指令を私は確実に受け取っている。

その分、私はしんどい。確実に何かが、そして、どこかがしんどい。そのしんどさに対応すべく9月から色々な体制を変更した。

必要な大変更だ。

そもそも、騙されていることに気が付いていて、それでもそれをゲームにして更にそのゲームに勝つことにどれほどの意味があるのだろうと数多くの人が思うことだろう。

でも、私自身が手をつけている工賃向上の世界はそのくらいの迷路状態だ。基本、物を製造してそれを売って工賃を稼ごうとするが営利企業でも難しいその作業を真似した形だけでは工賃が低くて当たり前だ。

しかし、それを国も企業も施設も王道とする。

事実上、工賃が上がる方法は無いのと同じことになる。それは、騙されていることに気が付いていると同じロジックではないだろうか?

騙されているルールのままで勝つことこそが、私のミッションだ。確かにそれは奇跡に近いことでもあるが、昨今の世の中では実は奇跡ではなくなってきている。

勝つためのアイテム、ツール、システムが充実した令和。


お弁当やお惣菜を作り、それを売って利益を得る。それが従来の考え方だ。しかし、近日は「働かずして稼ぐ」という思考もあり、それが可能にもなっている。

それらの一部にPLAY TO   EARN というものがある。ゲームをして暗号資産(仮想通貨)を稼ぐという方法だ。

今年多くの暗号資産は暴落した為、その世界では色々と起きているが着実に暗号資産はその価値を上げてきている。

事実、暗号資産が暴落しなければ半年程で1億円程度稼げたゲーマーも多発していた。

暗号資産=世界の価値観だ。工賃を世界の価値観で見た時、視野はガラッと変わってくる。

そこにNFTという別の価値観が融合されるのがPLAY TO EARNの世界だ。私のゲームはそこまで視野に入っている。

ただし、黒陽というキャラクターカードとウサギという闇カードの使用方法が難しいのでかなりの思案が必要だ。

もう一つ大きな問題があった。それが、ポパイ園が勝利して良い運営体かどうかという点だ。場合によっては悪に手を貸す形にもなってしまう。

そこをどうクリアするかを今、考えている。スピードを落として考えに考えている。

低速にして的確なミッションも拾わなければいけない。

当然、急に暗号資産やNFTの世界にシフトするわけではない。商品を作りたいというポパイ園の意志に沿う形で物事を進める。

「どう売るか」が重要なキーワード。

製造は私の指示に完全に従って製造させるしか手段はないので逆に簡単だが売り手に黒陽が含まれる為、難易度が高い。

注文システムは完成していても陽陽の店を受取り場所にすれば「二度と来たくない」と思うお客様が多発すると想定。

少ない売上なら問題ないが、工賃に影響する程のバカ売れを黒陽を入れたままどう作り出すかが課題となってくる。

この難題をクリアすれば、工賃の世界の「どう売るか」の一つのモデルケースが出来る。

弁当を少しだけしか売らない「陽陽の店」


私はスピードを落とし視野を変え虎視眈々と目論んでいるが、黒陽は焦っている。私が陽陽の店に口出しも手出しもしなくなったからだ。

昭和の売り方から抜けられない黒陽に令和の話をしても今は無駄だ。だから黒陽が「カメが助けてくれない」といじけていても、そこにエネルギーをとられることなく業務を進めるべきだと思っている。

しかも、売場構成が大きく変わる話もあるから、違うことを先にすべきが賢明。

「ったく、どういう売場構成になるか早く出して欲しいわよ。場合によってはこっちはやめるって事もあるんだから」と黒陽は色々な意味の伏線を入れた発言を私にしてくる。

自分の事情じゃない理由で陽陽の店は閉店したという体裁にしたいという意や「カメが前みたいに助けてくれないから」という当てつけの言葉が入っていることは明白だった。

黒陽が絶対に店をやめたくないことは知っている。商店街が黒陽の店を閉める命令を出すことが絶対ないことも事実。それでも黒陽は不思議な伏線を張ってしまう。

それが売上低下を招くんだけど。

「弁当は売れないから今日は仕入れたけど」と、黒陽はポパイ園の弁当を1週間に数個だけしか販売しなくなった。それも売上低下を招く。

本当は20種類程度作って欲しいお惣菜は「作れない」という理由で6種類程度が各1個か2個納品される程度。完全にままごとのレベルだ。

それでもガソリン代をかけて草原さんが納品に来る。仕事をしていてみんなどういう気分なのだろうか?

黒陽やウサギにとって、私、カメはエメラルドの原石なんだろうな。

「カメを離さない為には現状維持」きっとそうなんだろうと思う。

だから売上が遠のくことに何故気が付かないのだろう。










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