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『殺しの左腕にマリッジリング』-4-復讐の機関砲

<<<前回<<<

(前回のあらすじ)
イオリ:必殺の貫手を撃ったら脚が壊れた。アンジェのことをちょっと可愛いと思ってしまった。
アンジェ:イオリの脚を応急処置。サイバネ整備の腕を褒められて嬉しい。

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「ふぅ、これでしばらくはもつでしょう。無理は禁物ですが」
「おう。助かった。ありがとよ。しっかし、何でお嬢様がこんなことできるんだ?」
「……単なる趣味ですよ」
「ふん……まあいいさ」
誤魔化された気はするが、イオリとしても深く探るつもりはなかった。何か事情があるのだろう。話したくないことなら自分にも山ほどある。
もっとも、アンジェが誤魔化したのは単に照れ臭かったからなのだが。「あなたの左腕のために技術を学んだ」などと、どんな顔で言えというのか。

兎にも角にも二人は再び路地を歩き始める。
「あーあー、これで服も脚もボロボロか。一度俺の部屋に寄って……着替えて……それからサイバネ屋だな。んで、脚を直して、それからどうするかは……それからだな」
「私とシチリアに行くんですよ?」
「それからだな」
「私だけ帰しても指輪狙いの賞金稼ぎに狙われますからね?」
「うるさい今いろいろ考えてんだよ」

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太平洋、とある島、小さな飛行場。
薄暗い格納庫の中では、数十人の人間がひしめいていた。年齢も性別も人種もバラバラだが、ひと目で分かる共通点もある。全員がサイバネ化しており、全員が片腕ないし両腕をガトリングガンに置換しているのだ。

カッ!カッ!カッ!
三方向からのスポットライトに照らされ、群衆のざわめきとともに高所に設えられた祭壇が薄闇に浮かぶ。祭壇に佇む聖職者めいた男の姿は、高低差もあって群衆からは上半身しか見えない。だが、少なくとも見える範囲にガトリングガンはなく、やや大柄ではあるものの一般的な成人男性のシルエットをしていた。
「教皇様!」「教皇様だ!」
群衆は畏敬の念を以って祭壇の教皇を見上げる。中には涙を流すものもあった。
「諸君」
教皇がよく通る声で呼びかけると、一瞬で群衆は静まり返る。
「敬虔なる信徒の諸君。悲しい知らせだ」
教皇は信徒を見渡す。声を発するものはない。
「我らが兄弟、偉大なるバルカン大司教が殺された」
ざわめく群衆。だがそこにある感情は悲しみではない。彼らは高揚していた。
教皇は大音声で呼びかける。
「諸君!我らが愛する兄弟が殺された!我々は何をすべきか!?」
「「復讐!!復讐!!復讐!!」」
群衆の唱和する声が格納庫に響く。
「そぉだ!復讐だ!神とは復讐するもの!そして我々はその代行者だ!敬虔なる信徒の諸君!ガトリック信徒の諸君!バルカン大司教を殺した神の敵を探すのだ!祝福されたガンパウダーが諸君を導くだろう!諸君の積み上げた善行の果てに神は降臨される!さあ!行動を開始せよ!」

>>>続く>>>


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