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1日で美術館4つ行く。in東京ーArtとTalk⑲ー

皆さんこんにちは、宇佐江です。

今週は、先日東京に行った際に訪れた個人的オススメ美術館&展覧会をレポートします!
通常はスケジュールを立てるとき「美術館は1日に3つまで」にしておくのですが、今回は思い切って1日で美術館4つ行くことにしてみました。

魅力的な美術館が充実している大都会・東京。
自分もハシゴして回りたいという方の参考にしていただけたらと、実際のタイムスケジュールを添えてご紹介します。

最後におまけのもう1館と、美術館ハシゴ計画を立てる際のポイントもお伝えしますね。


それでは参りましょう~!
(今回ご紹介するのは「平日&夜間開館日なし」の日程です)


①10:00着/東京ステーションギャラリー

旅行者の味方!アクセス抜群の東京ステーションギャラリー。なんと東京駅の中にあるんです。
今回は東京に着くなりココへ直行し、その最寄のロッカーでキャリーとリュックを預けて、身軽なトート姿で美術館巡りをスタートさせました。東京音痴な地方者にも目印になり大変助かります。

10時の開館と同時に入場。
東京ステーションギャラリーの魅力はなんといっても「壁」です。駅舎の歴史を感じさせる剥き出しになった煉瓦が展示室の壁を埋めています。1階がエントランスで2・3階が展示室となっているのですが、私がいちばんワクワクするのは移動時間。
通常、鑑賞中にフロアを上下しなければならない瞬間ってちょっと“冷める”感覚がどうしてもあり、
「ココの構造、学芸員さん泣かせだよなあ…」
と感じてしまう施設もあるのですが、ステーションギャラリーは真逆。ドアを抜けて次の展示階へ移動するときに通る螺旋階段がめちゃくちゃカッコいい!!
貴重な文化財なので触ることはNGですが、うっとりとその壁に見惚れながら靴音を響かせて階段を降りるこの贅沢な時をぜひ味わってください。
(階段が難しい方はエレベーターもあります!)

この日観覧した企画展は『牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児』。残念ながら7月10日で終了してしまいましたが、個性的なふたりの画風が煉瓦壁に映えていました。
ステーションギャラリーはいわゆる「常設展示室」がないので、すべて見終えて40分ほどでした。

1館目として疲れない、ほどよい広さなのもオススメポイントです。


②10:50着/三菱一号館美術館&ランチ

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東京ステーションギャラリーから歩いて10分もかからず到着できるのが三菱一号館美術館。丸の内のキラキラ空間に佇む、見るだけで溜息が出てしまう素敵な外観です。もとは1894年ジョサイア・コンドルが設計した洋風建築で三菱の銀行部が入っていたそうですが、2010年に復元され美術館としてオープンしました。
本当はここで早めのランチにしようと企んでいたのですが…さすがは大人気のミュージアムカフェ「Cafe1894」。11時の開店前から20人以上の大行列が出来ており、読みが甘かったと断念。また次回リベンジしよう…(かわりに近くのお店で食べました)。

今回は企画展目的ではなく三菱一号館自体に来たかったのでほとんど下調べせず訪れたのですが、開催していた『ガブリエル・シャネル展』の入館料を見て思わず「ぎょっ」。

2……2300円!?高っっ……。

しかし中に入りたい…!これも出会いだ!!と思いガクガクしながら財布をひらきます。(チケット売り場が銀行の窓口みたいで素敵です~。)

美術館てあらためておもしろいなと思うのが、同じ建物のはずなのに展示によってガラリと雰囲気が変わること。特に今回のシャネルは展示そのものも絵画や彫刻を飾るのとは違うので、
「ここ、ほんとに三菱一号館だよね?」
とわからなくなるほど暗すぎる展示室と空間演出に戸惑いながら、時折「あっ、ここ、『ルドン展』の時食堂の再現で使われていた部屋では?」など過去の展示と重ねて答え合わせするのも、個人的に面白かったです。

仮に、20万円のバッグを買うくらいなら4万円の靴や鞄や服などを合わせて5点選びたい…と発想してしまう小市民の私ですが、今展を観覧中にふと悟る瞬間がありました。
映画『プラダを着た悪魔』で、ナイジェルがアンディを全身コーディネートしている場面の仕上げに
「絶対、シャネルが必要だな」
とつぶやくところ。
以前は意味がわからなかったけれど、今回の展示を観てあの台詞の意味が少しだけわかったような。色とか形とかそういう表面的なものではなくて、ファッションって理念の体現なんだ。芸術が、作品単体ではなく画家を含めて味わうものなのとある意味同じなんだなと。
そんなことを気づかせてくれた展示でした。

(ちなみに三菱一号館美術館も常設展はありません。)


③13:30着/東京国立近代美術館『リヒター展』

note 国立近美

三菱一号館の最寄の二重橋前からメトロに乗り竹橋駅で下車。人気の企画展だったので事前予約していたのですが、少々早く到着してしまい…。スタッフさんに伺うと「今日は空いているから大丈夫ですよ」と予約より早めに入場させてもらえて、ホッとしました。

初めて訪れる東京国立近代美術館。想像していたよりシンプルな建物。そして、今回4館の中でいちばん楽しみにしていた企画展がこちら、『ゲルハルト・リヒター展』です。
「現代の最重要画家」ともいわれている大巨匠。しかし告白すると、実は私、これまでリヒターをまともに観たことがなかったのです。
ようやくリヒターの本物が堪能できる!!
本当は3ヶ月待てば地元(愛知県の豊田市美術館)にも巡回があるのですが、待ちきれずやってきました。

まだ未見で楽しみにしている方のネタばれにならないよう多くは語りませんが、今展で最も注目されている日本初公開の《ビルケナウ》はやはりすごかったです。作品自体のテーマはあまりに壮絶なので言及するのが難しいのですが、私が興味を持ったのは、その作品と対面させている原寸大の写真。一見、もちろん写真だから同じにみえる(比べると本物より写真の方が色が鈍くてやや暗いなとは思った)けれど、それぞれの前に立ったときに受けるインパクトがまるで違います。
写真の方は、なんというか表面的な「像」としてしか情報が入ってこない。対して本物(絵)の方は、マチエール(絵具の凹凸)とか、色の発色とか、画面から様々な情報が乱れ飛んできてこちらに襲いかかってくる感じ。

絵画ってすごいエネルギーだ。

そこに何が描かれているか以前に、絵の具を重ねる行為、巨大なキャンバスと向き合うときのあの底知れない無力感と高揚感―油絵を描いていたころのそんな気持ちを思い出します。
他の作品の解説でもいわれていましたが、リヒターは写真そっくりに描くことで絵画と距離を置いているように見えながら、端々に「これは絵画である」痕跡を残すことによって絵画という凄みを逆に鑑賞者に知らしめるという恐ろしい体験をさせてくれます。

美術鑑賞をしているときって、ふだんは思考と心で受け取っている感じなんだけれど、リヒターの作品を観ているとまるで脳みそを直接いじくられているような感覚。
最早好き嫌いや評価をも超えた「圧倒的な存在」って、こういう人のことだよな……と展示を観ながら幾度も思いました。

面白かったけどものすごく疲れた…。
その後ふらふらしながら辿った国立近美の常設展はなんと2階から4階までありとんでもない大ボリューム。国立近美は全体の雰囲気として、楽しむ美術館というより色々考えさせられる「美術研究施設」のような印象を個人的に強く感じ、刺激的でした。


➃15:40着/国立西洋美術館

note 西洋美

はい、お馴染みの上野です。
東京に来ると必ず1回は来ているような…なのに毎回出口に迷ってしまう上野駅。メトロで来たのでJRの「公園口」に出るのにだいぶ遠回りしましたが、都美(東京都美術館)などに比べると、国立西洋美術館は公園に入るとあっというまに着きます。

2020年10月から改修工事のため休館していた同館は、今年4月にリニューアルオープンしました。外観の大きな変化は、前庭です。門から正面玄関までの空間にはロダンの彫刻がいくつか設置されていますが、以前はモサモサした植樹の印象が強くて、
「わっ、よく見たらこんなところにロダンが!!」
みたいな、ある意味贅沢な展示の仕方だなという印象でした。それがリニューアル後は、緑を最小限にしてさっぱりと視界が開けており、彫刻の存在感がバッチリ主役になっています。
雰囲気がだいぶモダンになった感じです。

9月11日まで開催の『国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』は、風景画などを中心に、有名な画家たちが豪華にならぶ展示。

また、今回リニューアルの様子が見たくて訪れたこの国立西洋美術館ですが、充実の「常設展」を楽しめることから、美術館初心者さんにもすごくオススメです!

・どの展覧会を選べばいいかわからない
・王道の油絵とか彫刻が観たい
・シンプルより豪華な雰囲気が好き

このような方はぜひ国立西洋美術館へどうぞ。
企画展チケットを購入すれば常設展も観られますが、いきなり広い展示室は疲れてしまうかも…と心配な方は、まずは常設展だけのチケット(一般500円)を購入してみるのもいいかもしれません。それでも充分見応えがあるボリュームです。
見応えありすぎて、この日の私はすでに常設展の彫刻エリアあたりで集中力がなくなってしまい、後半はささーっと歩いてしまいました。

そんな日もある。

美術鑑賞は自分のコンディションに合わせて、無理に全部観なくても大丈夫。閉館は17時半ですが、17時より少し前に退館しました。

(写真は野外彫刻のエミール=アントワーヌ・ブールデル《弓をひくヘラクレス》、の影です。)


おまけ/東京都庭園美術館

note 庭4


翌日。
東京2日目はお仕事があり、それをぶじ終えてほっと一息。時刻は15時。

「あと1個美術館行けるな…。」

そんな時のためにリストアップしておいた中からJR山手線に乗り、目黒へ向かいました。

美術館好きな人に「東京でおすすめの美術館は?」と訊くと高確率で名があがる、東京都庭園美術館
目黒駅から歩いていくと数分で、都内とは思えないほどこんもりした緑が視界に現れます。広い広い敷地の中に美術館があり、美術館&庭園か、庭園のみのチケットかを選びます。
アール・デコの様式美をふんだんに取り入れた旧朝香宮邸が美術館として開放されており、なんと壁面に油絵が張りめぐらされています。展示作品よりついついそちらに目が行ってしまう…。

そして庭園。

想像よりけっこうワイルドなお庭でした。芝庭、日本庭園、西洋庭園とあり、西洋庭園はピクニックができそうなシンプルな芝生。日本庭園の方が散歩し甲斐があり個人的に好み。
中央に大きな池があって、西日に照らされた樹々が水面に映り込んでいるのをぼんやり眺めていると、ふいに、昨日観たリヒターの絵が浮かびました。

note 庭3

(↑日本庭園)


はあ、お腹へった。
庭園美術館は入口にあるレストランも素敵でしたよ。

note 庭2
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歩き疲れた体に辛口のジンジャーエールが沁みる~……。



まとめ/美術館をハシゴする時のポイント

私はシフト勤務で平日休みが多いためこのようなハシゴがしやすいのですが、土日の場合はもう少し各美術館での入場待ち時間があるかもしれないので、サクサクとは進まないかもしれません。

美術館はどこもだいたい10時~18時くらいの開館が多いので、移動や休憩も含めてだとやはり3館くらいが無難かなあ…。しかも今回は2館分常設展もなかったし…。
ただ、東京の美術館は毎週決まった曜日に「夜間開館」として20時まで開いている美術館も多いので、そういう曜日を選ぶことでもう少し余裕を持ったスケジュールが組めるかも。

あと、「めちゃくちゃ行きたい展示」ばかり詰め込まないのも、美術館ハシゴ計画において地味に重要なポイントだと思います。
今回の場合、『リヒター』はとにかく絶対行きたかったのですが、他の館は展示目的より「その美術館に行きたい」目的で行ったので、さほど力まず観覧に臨めたというか。
特に、『シャネル展』は別会場ならおそらく来てなかっただろうなあ…という企画でしたが、観て良かったなと思いました。
このように新たに興味が持てる作家やジャンルと出会えるのも、建物として常にそこにある美術館の魅力ですね。





今週もお読みいただきありがとうございました。
今年の夏は東京、熱いんですよね、私の中で…!まだまだ観たい展示があるのでもう一度たぶん行く予定。

夏から秋にかけては企画展が充実する季節。皆様もぜひお近くの、または少し遠くの美術館に足を運んでみてください。

◆次回予告◆
『美大時代の日記帳⑦』

それではまた、次の月曜に。


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◆今週のおやつ◆
チェリー



*今回ご紹介した美術館はこちら↓

https://www.momat.go.jp/am/



*「東京で美術館ハシゴ旅」第2弾はこちら↓



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