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永遠なる寄り道

久しぶりにイベントの打ち合わせ。現在お誘いいただいているネコ似顔絵会の日にちがいよいよ迫ってきており、感染症対策を中心に担当者さんと話し合う。世の中が「このバージョン」になってから初めてのイベント参加なので、色々気になることも多いし、似顔絵を描くのだって実に半年ぶり。果たしてちゃんと描けるだろうか…少し練習して臨まなければ。予約の準備を整えていただき次第、告知も始める予定である。
打ち合わせのあと、併設されているショップの方にもお邪魔して、オオバコ柄の可愛らしいミニ巾着(作家:きいろの戸口さん)を購入した。

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近くでお昼ごはんをたべたあと、バスで移動。ずっと観たかった展覧会、『明治の金メダリスト 大橋翠石 ~虎を極めた孤高の画家~』のために岐阜県美術館に向かう。
監視員をしていると、仕事をしながら作品がいつでも見放題でしょう?と思われることがあるが、それは誤解である。開館時間の大方は鑑賞者の方に意識が向いているので、とても展示物をゆっくりと眺めている余裕はない。仮に、少し展示室が空いてきたな~というタイミングがあったとしても、無防備にポジションを空にして隅々まで眺めるなんて無理。いつお客様が入ってきてもいいように、じっくりと見つめられるのはせいぜい監視席の数メートル範囲くらいだろう。なので、例え勤務先で開催している展覧会であっても、観たい企画展の時私は、非番の日に出掛けてイチ鑑賞者として味わうことにしている。
重たいリュックをロッカーに押し込み、猛暑による汗をクールダウンさせたあと持ってきたカーディガンを羽織って展示室の防寒対策をし、先ほど購入したばかりのオオバコ巾着にロッカーの鍵と、メモ帳と、鉛筆をしまって、受付に立つ同僚にチケットを差し出した。

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たくさん歩いたせいか靴擦れした。地元の駅に戻るころには痛くてどうしようもなくなっていたので、助けを求めるように目に映ったドラッグストアに入り、靴擦れ専用の絆創膏をちょうど見つけ、ヨロヨロと怪しい足取りでレジへ向かう。
あからさますぎる買い物は、いつもなぜ、少しだけ恥ずかしいのだろう。
とはいえ、絆創膏のお陰で足は復活。少し元気が出てきたのでデパートをお散歩することにした。

セールはまだ一部で続いているが、8月になり、秋物のお洋服が増えてきた。目まぐるしく流行は変わっていくけれど、やっぱり秋といえば茶色が増えるんだな~というわかりやすさにほっとする。
ショップからショップへの移動中、「マスクあります」の看板を目にするとおもわず一度立ち止まる。仕事と通勤とで約12時間をマスクで過ごすうち、尋常ではない肌荒れを経て現在、普通の不織布マスクが使用できなくなってしまった私は、程よい布マスクとの出会いを常に求めている。今日見かけたのはまったく抗菌仕様にはなっていないマスクや、男女兼用フリーサイズで、大きそうなものばかり。つい3カ月前までは、マスクと名のつくものならとりあえず見つけ次第買っとけ、みたいな状況だったのに、品定めが出来ている今はずいぶん贅沢にも思うが、本人にとっては切実な悩みである。

マスクといえば、すっかり目と眉毛くらいしか化粧をしなくなったので、ワンパターンだったアイカラーに新色を投入するべく化粧品売り場にも立ち寄る。ここでも感染症対策のために、お試しはNGなので、店員のお姉さんの腕に商品を出してもらって色を確かめる。「この色が自分の瞼にのると多分あんな感じになるから、おそらくこういう顔の印象になり…」と、想像力を駆使して「これにします!」と決める。ふと、春以降ほとんど使っていない口紅たちは、コロナが収まってからも引き続き使用しても大丈夫だろうか、それまで冬眠させておく上手な保管方法はありますかと尋ねてみたくなるが、なんだかみみっちくて聞きづらいのでやめた。

さあ、見たいものも見たし帰ろう。とバスターミナルに向かう道中、あっ、本屋にも寄りたい…と思いつき、ふらふらと脇道に逸れる。新刊コーナーと自分の好きな作家をあいうえお順の棚から探しているうちにピンポンパンポン。「あと5分で、閉店でございます。お会計のお済でないお客様は…」とアナウンスが流れ、慌ててレジへ。『今日のガッちゃん』(作:益田ミリ、絵:平澤一平/ミシマ社)と、寅さん好きの父へのプレゼントとして『新装版 渥美清 わがフーテン人生』(著:渥美清/毎日新聞出版)を買う。本を鞄にしまって今度こそバスターミナルへ。途中、ビヤードパパの強烈なバターの香りにああ~とまた体が吸い寄せられそうになるが、近ごろ偏食気味なのでぐっと我慢し、階段を駆け上がる。12時間前に打ち合わせ先へ向かうために並んだバスターミナルに再び戻って、バスに乗り、最寄り駅へ…

の、1つ前でブザーを押す。牛乳がない。ドラッグストアへ寄らなくちゃ。

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