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ミスド愛が止まらない。いつか、憧れのあの箱に。

このシーズン、ミスドを買う機会が増える。

数年前の鎧塚さんとのコラボあたりからミスタードーナツのショコラシリーズ人気は加熱し、「あれ食べました?」が挨拶になるほど、毎年職場のロッカールームを沸かせている。出掛けるたびに自分の現在地がミスド店舗のあるエリアと気づけば、マメに足を向け、運がよくないと巡り合えない限定商品が残っていないかをチェックする。しかしもし目当てが売り切れていても、一旦「あの匂い」を嗅いでしまうともう、トレイを持たずに立ち去れない。ミスドにはそのようなおそろしい魔力がある。

私の描く「おやつ画」の原点ともいえるミスタードーナツ。定番で選ぶ個人的ベスト5はチョコファッション、ココナツチョコレート、ハニーチュロ、ポンデリング、エンゼルクリーム。大好きだったのに今なくなってしまって悲しいカリーパンやフレンチクルーラーの黒いやつ(ショコラフレンチ)。人によってアリかナシが分かれる激甘ハニーオールドファッション。自分ではあまり選ばないけれど、誰かの差し入れで箱買いしてもらう時は必ず入っていて欲しい可愛さ最強のストロベリーリングなどなど、語り出したらほんとに1時間でも2時間でも止まらないほど私はミスドを愛している。

幼少の頃、家族でお茶をするとなったらたいていミスタードーナツだった。分厚い磁器の皿の横で、親に借りた10円硬貨でスクラッチカードを削っていた時代。「ああーあと1点で景品貰えるのに~。どうしよう。もう1個なんか買ってくる?」などと会話していると、隣のテーブルから「あの、良かったらどうぞ」と見知らぬ人がよくカードをくれていたっけと思い出す。

好きすぎて、実は大学の頃にミスドでバイトしていたこともある。

当時私が住んでいた金沢には繁華街に繋がる1本道になぜかミスドが3店舗もあって、私がバイトしたのは109(が、あったんです金沢に。※現在は閉店)の前にあるミスド。レジではなくキッチンを希望し、地下にある作業場でフライヤーから揚がったドーナツにチョコレートをかけたり、トッピングをまぶしたりする最後の工程、「フィニッシャー」と呼ばれる仕事をしていた。

企業秘密だと思うのであまり細かい内容はお伝えできないが、私は手先が不器用なので、ホイップとかクリームを詰めるタイプのドーナツが苦手だった。絞り袋を使って中身を注入する際、加減がわからずぶちゅッと入れすぎ外の皮をよく爆発させたものである。
特に難しかったのが、ひとくちサイズのエンゼルクリーム。現在は自分で1個から選べるスタイルの「ドーナツポップ」があるけれど、当時は6種類のミニドーナツが長方形の小箱に入った「 Dーポップ」という商品があり、100円セールのたびにいちばんお得感のあるそのDーポップが飛ぶように売れた。キッチンではセールの時期はひたすらそのチビドーナツを量産していたのだが、通常サイズでさえうまくできないのにあんなに小さなドーナツにホイップを詰めるなんて繊細な作業は、私にとって永遠に終わらない地獄かのようだった。そのせいで、お客の立場としては嬉しいが、バイトのためにミスドへ向かうときに店頭で「100円セール」の旗が揺れているのを見るといつも溜息が出た。

思いのほか自分には単調作業が向いていないことに気づいたのと、友人たちとグループ展を企画したあたりから急に忙しくなりミスドのバイトはわずか半年で辞めてしまった。まもなくクリスマス。フィニッシャーがおそろしく苦労しそうな凝った飾りつけのブッシュドノエル風ドーナツが販売される直前という不届きな時期に辞めていくバイトであったのに、スタッフの方々はあたたかく送り出してくれた。

バイトで使った作業着や帽子を洗濯のためアパートに持ち帰ると、自分の部屋にあの「ミスドの匂い」が満ちた。チェーンの飲食業でキッチンスタッフをするとその店の商品が食べられなくなるというこわい話をたまに聞くが、ミスドは自分で「やってみたい!」という夢を抱いて始めた気持ちのまま、実際に体験してみると想像以上に店舗で1からちゃんとドーナツを作っているんだなあ~ということが知れて、その後もお客として足しげく通っている。20歳を超え、呑んだあとのシメにミスドへ行くという禁断の至福も知ってしまった。

いつか、一度でいいからカロリーを完全シャットダウンして、箱いっぱいのドーナツを買って自分ひとりで食べ尽くしたい。

いや、それよりも、あの世界一幸せな箱に自分の絵を使われてみたい。

アメリカの子どもたちを愛らしく写実的に描いたペーター佐藤さんや、ポップでおしゃれな原田治さんというミスドの「顔」だった偉大なる方々の後継者として…。


そんな大きすぎる野望をひそかに抱きつつ、今日も私は大好きなドーナツの絵を描いている。





今週もお読みいただきありがとうございました。ミスドの思い出は本当に数限りなくて、久しぶりに働いていた当時の日記を読み返して懐かしくなると同時に、バイト行きつつプライベートの時間にも友人とめっちゃミスド行ってるなと、過去の自分に苦笑しました。勉強のためという言い訳もして特にあの時期色々食べたなあ…。夏野菜カリーパン、ものすごくおいしかったからまた復活してくれないだろうか…。

あなたの好きなドーナツはなんですか?

◆次回予告◆
『美大時代の日記帳②』

それではまた、次の月曜に。


note用チョコリング・ハニーチュロ 

◆今週のおやつ◆
ミスタードーナツ:チョコリング&ハニーチュロ

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