ボロボロのリボン

「96秒とは、いいすうじだね。」
わたしは、話しかけられた。水いろのリボンでむすんだツインテールのそのひとは、しろくて小さいからだのそこらじゅう縫い目だらけで、ボロボロ。わたしはすこしひるんだ。
たくさんいた兄弟たちも、どうぶつもいなくなって、たったふたり、ここにいるような感覚。これは、未知のかんかく。からだがふるえている。
ボロボロのリボンのひとは、フリルがたっぷりついたデスクライトの、ピンクいろのひかりの下にすっと入って、話しはじめた。
「すうじはふしぎだから好きだよ。6000年前のメソポタミアで、目のおおきなシュメール人がつくったんだよ。シュメール人、ぶんめいにいきなり登場して、いきなり数字つくって、消えた。シュメール人、めちゃくちゃあやしいよね。実はうちゅうじんで、じんるいに知恵を与えにきたとゆうのも、あながちうそじゃないかもしれないよ?」
ボロボロのリボンのひとは、にやっとわらって、スポットライトのした、くるりんと回転した。
ポーズをきめてまっているようだから、何か言わなくちゃ。
「わたしの目の位置、数字の9と6みたいでしょ。」
「言われてみれば、そうかもね。」
「あなたは、だれ?」
「リボンちゃんで、いいけど。」
リボンちゃんは、わたしがまだ子どもなのだとゆう目をして、やわらかく、かたりはじめた。
「私は、おもいでの時間でもあるし、時間とゆうのは、私と持ち主が交わしたあらゆる出来事そのものの事をいうの。というより、私には時間なんてものはなくて、あの日のことや明くる日のこと、たのしかったり少しかなしかったり、うれしかったり、持ち主との思い出が、たくさんいっぱい、あるだけなのよ。私は、記憶のパッチワークみたいなもの。そしてそれは、とてもオリジナルなものなの。」
わたしは、まだきちんとりかい出来なかったけれど、とてもすてきだと思った。すてきな存在なんだと、わかった。
「わたしはクローンだけど、わたしにはわたしの、パターンがあって、であうひととの関係で、ゆいいつのわたしに、なるということ。」
「わかってんじゃん。いいね。」
ボロボロのリボンちゃんは、そう言ってわたしをぎゅうっとだきしめた。へやのなかはふたたび騒めきだして、紫色のサルが、ぴょいっと飛んできて、ふたりのあたまのうえにとまった。

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