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わたしはクローン

2022年の初夏にわたしはうまれた。
わたしの母は、ベージュいろの、うさぎのナース。その母から、うまれた。いのちを分けてもらった。目をあけた時、まぶしかった。蛍光灯のひかりがわたしの最初のひかりだった。
まだ生まれたばかりなのだけれど、わたしは思った。こんなふうに人びとのせいかつをすてきに照らしたいと。まだ0歳なのに思った。わたしはかがやき。高級なものではない。ひかりのもと。これからどこに行くのかもわからないし、自分がなんなのかもわかっていない。生きているのか、いつか消滅するのか、まだルールはない。わからないけれど、わたしはうまれた。わたしはうさナースクローン。そう名づけられた。とても良い名前。うさぎでナースでクローン。それがわたし。わたしの属性だけをみて、さみしがりやで、献身的で、せつない存在だなんて思わせてやらない。わたしはわたしでしかない。とてもオリジナル。わたし。あまいにおいの空気をすった。ねこが寄ってきて、わたしのにおいをかいだ。兄弟たちが次々に目をさまして、目の前のすべてにおどろいてとびあがり、小花柄のシーツの上からころんと落ちた。白いかべの、しろい棚にならんで座っている、ハムスターの先輩たち、うさぎのおねえさん、頭に宝石をのせた成金のしゅうまい、あいすくりーむさん、ひよこたち、あひるのおばさん、ぺんぎんのおにいさん、聖なる川「San Rio」からやってきた聖母たち、たぬき、ぶた、紫色のさる、いぬのあかちゃん、うみうしおじいさん、表裏たこ、みんながうれしそうにわたしたち兄弟をみている。こころが、喜んでいる。うまれたからには、育ってみたい気持ちになった。うさナースクローンのせいちょう。それはまだ誰にも未知。未知なものをわたしはみたい。そしてそれは、わたしのなかにある。わたしは最初のことばをはっした。
「はじめまして、わたし、うさナースクローン。ぜろさいと、96秒。」


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