わたしは旅立つ

いつのまにか眠っていて、朝がやってきている。朝のきぶんはすごい。レモンスカッシュ。兄弟たちはまだ今日と、きのうの夜との間にいて、くっついたり寝言をいったりしている。
聖なる川「San Rio」の聖母たちがあしらわれたうす紫いろのカーテンが開かれ、夏の空がみえる。まぶしい青とたっぷりのわたがし。空のことは、まだことばにはできない感じ。せいちょうの過程で、このすてきさを伝える事もできるのかな。できなくても、空は空でべつにと思っていそう。空はおおきい。わたし。自由な気持ち。

きのうの夜のことはわすれたくない、と思う。
「みんな、しあわせにね。」神さまみたいなものの、声がきこえて、発光するやわらかい手がわたしたち兄弟のあたまをなでた。祝福されてうまれてきたのが、みんなわかって、ふるふるしたこと。母からナース帽がひとりひとりにわたされて、ローソクをともして、出発のぎしき。
「みんな、お誕生日おめでとう。明日はいよいよ出発です。たのしいとき、かなしいとき、どんな時でもおにんぎょう村がここにある事をわすれないでいてね。村のインターネットで、あなたたちをいつでも見守っているからね。水を1日2リットルのんで、ヤクルト1000ものんで、健康で幸せにね。ンーマッ。」
わたしのうまれたところ、おにんぎょう村。わたしはよい知らせを連れてくる、うさぎのおにんぎょう、うさナースクローン。
少しさみしいけれど、ナース帽をキュッと、あたらしい明日に期待してふるえる、ひとつのいのち。

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